「古代の儀式」のようなライブ
今年の春のある日曜日、クラリ・フリーマン=テイラー(Clari Freeman-Taylor)はブルックリンのグリーンウッド墓地で友人と待ち合わせた。歴史ある彫像や青々と茂る木々に囲まれて楽しい時間を過ごした後、友人と別れたフリーマン=テイラーは、478エーカーという広大な墓地の敷地をひとりで歩き回った。
「自分がどうやって埋葬されるかについて色々考えていたけれど、陰気な意味ではないの」と、現在22歳のフリーマン=テイラーは振り返る。「あまりお墓は欲しくないな。それよりも、完全に裸のまま木の下の土の中に埋められたい。そうすれば、その木が私を吸収してくれるから」
しばらくして、彼女はスマートフォンの充電が切れていることに気づき、道に迷ってしまった。その日の夜にはマンハッタンでライブを控えていたため、これはちょっとした問題だったが、彼女はどうにかなると信じていた。「ただひたすら一本道を長いこと歩いていたら、無事に外へ出られたの」と彼女は語る。「ニューヨークのすごく詳細な地図を描いてみて、最終的になんとかたどり着くことができたわ」
左からサヤ・バルバリア、クラリ・フリーマン=テイラー、デヴィッド・アディソン(Photographs By GRIFFIN LOTZ)
フリーマン=テイラーの夢見がちで現実離れした傾向は、メアリー・イン・ザ・ジャンクヤード──彼女がボーカルとギターを担当し、ベースとヴィオラを担当する22歳のサヤ・バルバリア(Saya Barbaglia)、23歳のドラマーのデヴィッド・アディソン(David Addison)と共に組んでいるバンド──を、いくつかの素晴らしい場所へと連れて行った。サウス・ロンドンの隣り合うアパートに暮らす長年の友人である3人は、ムード漂う雰囲気、引き締まったリズム、そして奇妙な物語が織りなす驚異の作品『Role Model Hermit』という、今年最も見事なデビュー作の1つをリリースした。そして、ある日曜の夜にBowery Ballroomで行われたソールドアウトのライブも含めて、彼女たちのステージは観る者を釘付けにする。メアリー・イン・ザ・ジャンクヤードが演奏しているクラブに足を踏み入れるのは、二度と目撃できないかもしれない、森の中のどこか古代の儀式に偶然出くわしたかのような感覚を抱かせる。
Bowery でのショー──アイルランド出身のシンガーソングライターであるダヴ・エリス(Dove Ellis)と共同ヘッドライナーを務めた、〈War Child UK〉のためのチャリティギグ──の翌朝、メアリー・イン・ザ・ジャンクヤードはダウンタウンのコーヒーショップで私と会ってくれた。彼女たちはニューヨークを訪れる際、ホテルを予約することはほとんどないと語る。何とかなると分かっているからだ。例えば2024年に、泊まる場所が必要だと彼女たちがステージ上で話した際、客席にいたパフォーマンスアーティストのマリーナ・アブラモヴィッチの長年のパートナーが、バンドを自宅に泊まらせてくれた時のように。
「ここにいると、何か奇妙な魔法が自分たちに起こると分かっているし、そのための余白を残しておかなければならないの」とフリーマン=テイラーは言う。「どこかを予約しちゃいけない。だって、予約してしまったら、どうやって魔法が起きるというの?」
Bowery Ballroomでのライブ映像
バンドの原点、小さな村での幼少期
メアリー・イン・ザ・ジャンクヤードの時代を超越した美学は、ロンドンから北へ1時間ほどの場所にある、何世紀もの歴史を持つ小さな村キンプトンでのクラリ・フリーマン=テイラーの幼少期に根ざしている。環境活動家と演劇の教師である両親(二人とも独自のクリエイティブな活動を行っており、父親は双子の兄弟とコメディのツアー公演を行い、母親は歌を歌いドキュメンタリーを制作している)のもとで育った彼女は、近くの森にあるすべての道を暗記していた。
「昔は何時間も出かけては、ひとりで過ごし、自分に話しかけていた。しばらくの間、自分はおかしいんじゃないかと思っていたわ」と彼女は語る。「今でもいつも木に話しかけている。本当に美しい木を見ると、ものすごく美しい人を見ているような気分になるの。
プラタナスやオークの木に恋をしていないときはチェロを弾いており、弦楽四重奏のキャンプへの参加資格を得たことで、13歳の時にサヤ・バルバリアと出会った。「周りはみんな真面目でオタクっぽかったけれど、クラリはその中で一番クールな存在だった」と、ロンドンで育ったバルバリアは振り返る。「クラリは私にとって村にいる友達で、私はクラリにとって大都市にいる友達だった。私たちは基本的に、すぐに意気投合したわ」
故郷に戻ったフリーマン=テイラーは、ローラ・マーリングからレナード・コーエンにいたるまで、多くのフォークミュージックを聴き、自身の曲を書き始めていた。メアリー・イン・ザ・ジャンクヤードの最新作に収録されている「Candelabra」は、もともと彼女が10代後半の時に、ポータブルマイクを森に持ち込んで録音したEPに収録されていたものだ。「鳥たちが一斉に目覚める時間帯に録音したの」と彼女は言う。「美しいバックボーカルだった」
当時彼女が好んで使っていた楽器はバリトンウクレレだったが(「Clari and Her Bariというソロプロジェクトをやるべきだって彼女を説得しようとしたの」とバルバリアは言う)、数年のうちに彼女はロックに興味を持つようになり、自分の曲をギターで弾くことを覚えた。2022年にサウス・ロンドンのCavendish Armsというパブでのギグが決まった際、彼女はバルバリアと、故郷のハートフォードシャーの友人であるデヴィッド・アディソンをバンド仲間として誘った。
その後もさらにライブが続き、ブリクストンにある、何の変哲もない小さなパブ・the Windmillでも多くの夜を過ごした。ソーリー、スクイッド、ブラック・ミディ、ブラック・カントリー・ニュー・ロードなど、イギリスで話題のバンドたちの「育成の場」として評判を得ている場所だ。「最終的には、まるで非公式のレジデンス(お抱え)のようになって、あらゆるバンドの前座を務めたわ」とバルバリアは言う。「出演枠に空きがあるときはいつでも、あそこで演奏した。
彼女たちはバンド名をメアリー・イン・ザ・ジャンクヤードに決めた。フリーマン=テイラーがその詩的な響きから提案したフレーズだったが、やがてそれが、自分たちの音楽における質感のコントラストをうまく表していることに気づいた。「僕たちのサウンドには、その両方があるんだ」とアディソンは言う。「maryの側面と、junkyard(ゴミ置き場)の側面がね。清潔さと美しさ、そして汚れとノイズ」(ただし、このバンド名のせいで、フリーマン=テイラーの本名について時折混乱が生じることもある。「あるフェスの人混みの中にいたとき、誰かに『あなたがメアリー?』と聞かれたことがあったの」と彼女は言う。「だから私は『違うわ』と言って、その場を立ち去った」)
引き算の美学で完成したデビューアルバム
2024年に〈XL Recordings〉の代表であるリチャード・ラッセルのプロデュースによるEPをリリースし、2025年の春にSXSWに出演して大絶賛を浴びた後、彼女たちは昨年の夏、アルバム『Role Model Hermit』を録音するために帰国した。イースト・ロンドンにあるプロデューサーのオリ・ベイストン(Oli Bayston)のスタジオで作業を行い、彼女たちは自分たちのサウンドを本質的なものへと削ぎ落とした。フリーマン=テイラーの囁くように柔らかなボーカルと複雑なギターのパートが、バルバリアの変幻自在なストリングス、アディソンの安定したバックビートと絡み合い、抗いがたい魔法をかけていく。そして結果的に、UKアンダーグラウンドの最先端サウンドを追っている人々だけでなく、PJハーヴェイやレディオヘッドのファンをも魅了しそうな、注目すべきデビュー作となった。
「(ベイストンは)私たちのすべてのアイデアをうまく整理して削ぎ落としてくれたけど、同時に、私たちが自由で表現豊かになれるようにもしてくれた」とバルバリアは言う。「できる限り多くのものを表現するために、どれだけ付け足す要素を減らせるか、ということね」
彼女たちは昨年の秋、ウェット・レッグのオープニングアクトとしてアメリカをツアーした。
Photographs By GRIFFIN LOTZ
最近、彼女たちは自分たちのスタジオスペースをゼロから作ろうとしていて──と言っても、実際には2ndアルバムのほとんどを書き上げた、ある程度防音されただけの部屋だが──、自分たちの独特な絆を育むために、彼女たちが「保護のオーブ」と呼ぶものをどうやって作り出すかについて考えている。
それは、実際の物理的な物体から始まった。「大きなガラスのオーブを買って、『これはバンドを象徴しているから、守らなきゃいけない』って話していたの」とバルバリアは言う。「そうしたら2週間後、そのオーブが割れてしまった。デヴィッドがそれを捨ててしまったことすら、私たちは知らなかったの」
「そう」フリーマン=テイラーは、おどけた恐怖の表情で言う。「彼、オーブをただ捨てちゃったのよ」
「僕じゃないよ!」とアディソンは抗議する。「ルームメイトだよ」
さらに最近では、そのオーブのような感覚を作り出すために、観客に囲まれたセンターステージ形式でライブを行う試みもしている。「私たちが気づいたのは、オーブはお店で買うような物理的なものではないということだった」とバルバリアは言う。
「神様みたいなものね」とフリーマン=テイラーは言う。「絵に描くことはできないの」
バルバリアはうなずく。「そう、ただそこにあるだけ」
From Rolling Stone US.
mary in the junkyard
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