入院と聞けば、多くの人は病気や怪我の治療を思い浮かべるだろう。ところが、「身体の毒素を出し切るために」海を渡りインドの病院へ1ヶ月の入院を決めた女性がいたーー。

今年の3月に早稲田大学を卒業したはましさん(22歳)が受けたのは、アーユルヴェーダの本格的な浄化療法「パンチャカルマ」。

一見すると怪しげだが、アーユルヴェーダは5000年の歴史を持つ予防医学で、世界保健機関(WHO)も認めるインド・スリランカ発祥の伝統医療である。

「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院し...の画像はこちら >>
病院で受ける施術の様子をInstagram(@hmc_ayurveda)で発信したところ、入院体験記の動画が大きく注目を集め、現在のフォロワー数は3万人を超える。現地では一体どのような治療が行われていたのか……?インドで体験したことを詳しく聞いてみた。

アメリカ留学で知った「アーユルヴェーダ」

はましさんがアーユルヴェーダを知ったのは、大学時代アメリカに留学中のこと。ヨガインストラクターの資格取得を目指し勉強するなかで、ヨガと深い関わりをもつアーユルヴェーダの魅力に惹かれていったという。

「せっかくだからルーツであるインドで、しっかり学びたいなと思ったんです。帰国後すぐにインドへ渡って、北部にあるグルガオンという町の、アーユルヴェーダスパで3ヶ月間のインターンを経験しました。

お店で働いていた時、パウダーを使う施術(ウドワルタナ)で半年かけて13kgの減量に成功したお客さんがいたんです。その姿を見たら、アーユルヴェーダの効果って本当にあるんだなと衝撃を受けて」(はましさん、以下同)

しかし、スパでの仕事はマッサージが中心。本格的なデトックス療法を実践できる環境ではなかったと振り返るーー。大学卒業後、4月から1ヶ月間、アーユルヴェーダの代表的なデトックス療法「パンチャカルマ」を受けようと、インド南部のケララ州にある病院へ入院を決意した。

しかし、いくらインドとはいえ1ヶ月も入院したら相当な費用がかかるのでは?

猛暑の中での入院、停電に虫にヤモリに

「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院して“ガチのデトックス”を体験した日本人女性を直撃
病院までのケララの街並み
「わたしが入院した病院は、1泊8000円ぐらいのところなので、28泊で23万円弱でした。でも、すごく安い方だと思います。
施設によって値段はピンキリで、1週間だけで20万円ぐらいのところもあります。入院の内容はあまり変わらないけど、ラグジュアリーさや快適さが違うんですよね。海が見えるリゾート地の綺麗な施設なので、お金持ちの観光客向けかなと」

入院した病院は、町の中にある小さな病院。現地の人が通う市民病院のような雰囲気だったという。

「病院はすこし薄暗くて、虫が多かったです。部屋の中にヤモリもたまに現れました。配線が壊れていたり、むき出しになっていたりするような箇所もあったので、日本人からしたらちょっと信じられない光景ではあったけど(笑)。毎日清掃が行われているから、ゴミやホコリはほとんどなくて思ってたよりも清潔でした。スタッフの方達はすれ違うと、いつもニコッと笑ってくれたので、明るい気持ちで過ごせましたね」

「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院して“ガチのデトックス”を体験した日本人女性を直撃
院内の様子。入院期間の4月〜5月は「暑季(しょき)」といって1年の中で最も暑い時期。毎日30℃を超える気温だったこともあり、はましさん以外の患者は数人程度しかいなかったそうだ
スタッフや医師が優しかったこともあり、緊張はすこしずつ解けていく。いよいよ、施術が始まるわけだが、その前に医師との丁寧なコンサルテーション(問診・診断)が行われた。

「その日にどんな治療をするか毎日話し合うんです。健康に対する不安や、どんなところを治したいのか聞かれて、大体の治療法や日数も考えます。
前日に『明日の◯◯時にトリートメント室来てね』と言われて、その日に沿った治療をします。体調や結果次第でこの治療を続けようとか相談する感じ。たとえば生理の時は軽いマッサージのみにしようとか」

身体中の穴という穴からオイルを入れられて

さっそく施術が始まる。アーユルヴェーダでは、加齢による乾燥が老化を早めると考えられており、オイルで体内を潤すことがデトックスにおいて重要視されている。

「体のいろんなところからオイルを入れるのは知っていたけど、そんなところからも入れるの?っていう連続でした。肌の上からオイルを塗るのはもちろん、鼻や目から入れたり、油を一気飲みするという施術もあって。あらゆる穴からオイルを入れました。アーユルヴェーダ流のアンチエイジングの考え方なんですけど、まさかお尻からも入れるとは思わなくて」

「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院して“ガチのデトックス”を体験した日本人女性を直撃
浣腸治療の道具。オイルと一緒にハーブも入れるそうだ
とにかくオイルを摂取していく毎日だったが、特にキツかったのは「バスティ」という油で腸内を洗浄する施術、いわゆる浣腸治療だ。

「肛門から腸へオイルを注入するんです。一定時間、お尻の穴をキュッと締めてホールドしてオイルが漏れないように耐えてから、便を出します。注入する量によって『スモール』と『ビッグ』があって、ビッグの場合はオイルが逆流してくる感じで、お腹がガスで溜まってる時のような腹痛が起こります。これがすごくキツい。1回で終わりかと思ったら、『全部で8日間やるからね』と言われて、ええっ……って(笑)」

苦しい施術に耐えた後の排便は非常にスッキリするのだとか。
これまで便秘気味だった体質も、バスティを続けていくにつれて改善されていったという。しかし、過酷な施術はそれだけではなかった。

「もうひとつ大変だったのが『ネトラ・タルパナ』といって、目にバターを入れる施術です。厳密にはバターからタンパク質や水分を取った、純粋な脂肪分だけを集めた『ギー』というものを使いました。目の周りに土手を作って、目に良いとされるハーブが一緒に入ったギーを流し込んで、目をゆっくり閉じたり開けたりするんです」

「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院して“ガチのデトックス”を体験した日本人女性を直撃
目にバターを入れる施術。パンを作るための「アタ」という粉で、ゴーグルのような土手を作り、そこにオイルをためる
オイルの温度は人肌30℃くらいでほんのり温かいとのこと……気持ちよさそうにも思えるが、油の中で目を開いて痛みはないのか?

「やってる最中はめちゃくちゃ目に染みて痛いです。だからついつい目を閉じちゃう。終わった後はアイマスクをして1時間休むんですが、そこでオイルが眼球に浸透していく感覚があります。終わった後は目が濡れてるような状態でした。プールやお風呂で目を開けちゃったりしたら、その後ちょっと視界が見えにくくなって変な感じになるじゃないですか。そんな感覚がしばらく続きます。でも、夜寝て翌朝目を覚ますと、驚くほど目が開きやすくなって、視界がクリアでピントが合いやすくなるんですよね。あれは本当今すぐにでもまたやりたい施術です」

「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院して“ガチのデトックス”を体験した日本人女性を直撃
医師とのコンサルテーションでリラックスをしているはましさん
はましさんは、施術以外にも医師とのコミュニケーションをするなかで衝撃を受けたと語る。


「日本の病院だと、専門の部分を見てくれるじゃないですか。お腹が痛かったら内科、耳が痛かったら耳鼻科とか。でもインドでは、もっと全体的に見てくれるイメージです。たとえば脈診でその日の感情を言い当てられることもありました。

モヤモヤすることがある日だと、『今日いつもと違うけどなんか考え事ある?』と聞かれたり。逆に、気分が良い日は『今エキサイティングな感じだよね』みたいな。あとは、顔色を見ただけで『君はチョコレートが好きでしょ』と言い当てられたり、脈や顔色で全部わかっちゃうんです。自分が気づかないストレスとかにも気づいてくれるというか。心も体も包括的に見てくれるので最初から最後まで安心感がありましたね」

退院後の心身の変化とこれからの展望

「目にバター、お尻の穴からオイル」インドの病院に1ヶ月入院して“ガチのデトックス”を体験した日本人女性を直撃
食事は1日3回で野菜やスープが中心。アーユルヴェーダでは、消化力は太陽の動きと連動しているという考え方なので、お昼はたくさん食べて夜は軽食とのこと
実際にインドで1ヶ月入院してみて、体や心はどのように変わったのか?

「睡眠の質が上がった感じがします。自然に早起きができるようになったし、便秘やひどかった生理痛や生理前の不快感が軽減したことも大きな変化です。友達からは『肌が綺麗になった』『目が輝いている』と言われました(笑)。精神的にも穏やかになったように感じていますね。
とはいえ、帰国してもう1ヶ月経つので日本の生活に慣れてきていて、だんだん前の状態には戻りつつあるんですけど。自分の身体の状態を察するのが上手になったとは思います」

現在、はましさんはInstagramなどを通じて、発信を続けている。発信をする想いは「必要な人に届いてほしい」から。

「日本の人にアーユルヴェーダをもっと知ってもらいたいです。アーユルヴェーダって聞くと、わたしくらいの若い世代の人からはスピリチュアルなイメージを持たれることも多いと思うんです。でも、実際に学んでいったら体質や生活習慣、食事などを体系的に捉える、とても理論的な予防医学だとわかる。その誤解をもうすこし解いていきたい」

西洋医学と東洋医学を上手く使い分けてほしいと話した。

「緊急性の高い手術が必要になるような場面は西洋医学が圧倒的に強いです。東洋医学は体質改善や予防の面で役立つので、それぞれ必要なシーンで利用して、みんなが健康になっていってほしいです。だから、東洋医学が絶対いいよと言いたいわけではないんですよね」

インドの地で彼女が得た気づきは、現代を生きる私たちの心と身体にも、大切なヒントを与えてくれているような気がした。

<取材・文/桃沢もちこ>

【桃沢もちこ】
'93年生まれのフリーライター。社会問題からトレンド、体験取材まで幅広く書きます。
アイドルオタクに詳しい。
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