近年、コンビニや飲食店などで行われるカスタマーハラスメントが、大きな社会問題である。政府も2025年6月に法改正を行い、2026年10月1日からは企業等にカスハラ防止のため、雇用管理上、必要な措置を講じることが義務付けられることになった。
各企業でアルバイトをふくめた従業員へのカスハラに厳しく対応する姿勢を見せており、今後は横柄な顧客が処罰される場面が増える状況だ。
そんな風潮の中でも、従業員に対してカスハラを行う客が後を絶たない。今回、困ったカスハラ客の実態を教えてくれたのが、北関東にある某居酒屋チェーン店で店長を務める神田りょうさん(仮名・30代)だ。神田さんの店舗でも最近、悪質なカスハラ被害が発生した。

「グラスを壁に叩きつけ粉々に…」居酒屋で大暴走する高齢男性。...の画像はこちら >>

厄介な常連客に手を焼いていた

「私の店舗は、若者だけでなく、幅広いお客様にご利用していただいています。基本的に楽しく利用していただいていますが、中にはトラブルを起こす人もいる。この前、騒動を起こしたのは、頻繁に来店していた70代くらいのシニア客でした。あまりにひどいカスハラだったので、警察を呼んだほどです」

神田さんの店舗でトラブルを起こした70代の男性客だが、週に一度は来店するほどの常連である。

「そのシニア客は、必ず週に一回のペースで、ふらりと夜の時間に来店していた。飲み放題で、毎回かなりの量のお酒を飲み泥酔状態で帰っていたので有名でした。また、若いアルバイトスタッフに話しかけるのが好きで、飲み物のおかわりを持っていくときなど、世間話を仕掛けてきていた。一度話しかけられると長く拘束されるので、嫌がっているスタッフもいたほど。ただ、スタッフに話しかけてはいけないというルールはなく、常連なので注意ができなかった。
あまりにスタッフが嫌がっていたので、自分が店舗にいる時は接客するようにしていたのですが、ちょっと迷惑していました」

横柄すぎる態度に堪忍袋の緒が切れそう

個人経営の居酒屋なら、店主と楽しく話しながら飲むことはあるが、神田さんの店舗はチェーン店。飲み放題システムがありスタッフは忙しく、常連客のトークに付き合う暇がないのが本音だ。この雰囲気が伝わったのか、そのシニア客は徐々に横柄な態度になった。

「割と気さくなタイプの客だったが、トラブルが起きる数ヶ月前から、スタッフにクレームを入れるようになっていた。提供する料理やお酒を届けるのが遅いという注意や、会計の対応が悪いなど些細なことへのクレームでした。クレームが出るたびに、店長である自分が謝っていたのですが、その対応も図に乗らせてしまったようで、毎回のように文句をつけるようになった。スタッフもかなりのストレスを感じていました」

ついに壁にグラスを叩きつけるまでに

いつの間にか、クレーマーへと変貌したシニア客は、とあるスタッフの対応に激昂し、大きなトラブルを起こした。

「そのシニア客は平日に通っていたが、トラブルがあった日は週末の土曜日に来店した。予約なしでふらりと来たので、席が空くまで15分ほど待ってもらったのですが、その時から不機嫌モードでした。また、その日は満席で料理やお酒の提供が遅れ、そういった対応も気に入らなかったようです。何度もスタッフを呼び出し、料理が遅いなどクレームを付けてきた。あまりにしつこいので、対応した女性スタッフが話を途中で打ち切って仕事に戻ろうとしたのですが、その態度に激昂して自分が飲んでいたグラスを壁に叩きつけて粉々に割ったんです。しかも、他のお客様の前で女性スタッフに説教をはじめた。女性スタッフは泣きだし、周りにいたお客様から悲鳴が上がりカオスな状態になりました」

異変を察知して神田さんが駆けつけたが、シニア客は手が付けられないほど大暴れした。


「自分の頼んだ料理も壁に投げつけ、収集がつかない状況でした。仕方ないので警察を呼び、他のお客様に危害が出るといけないので、自分がそのシニア客をスタッフルームに連行したんです。その間も、私に罵詈雑言を浴びせ、店を潰してやるなど脅迫めいたことも言っていた。結局、警察官が来るまで押さえつけておくことになりました」

家族連れで土下座謝罪

大暴れしたシニア客は警察に連行されたが、被害にあった女性アルバイトはトラウマになり、お店を辞めてしまった。

「なにより許せないのは、大切なスタッフに危害をくわえたことです。そこで、本部に掛け合ってカスハラの被害を受けたとして、そのシニア客を訴えることにしました。警察に事情を説明して住所を聞き出して被害届を出し、内容証明を送ることにしたんです」

悪質なカスハラ客に制裁を下すべく、強硬手段に打って出た神田さん。その後、なんとそのシニア客は、家族に連れられ店舗に謝罪に来た。

「数日後、遠方に暮らす娘さんに付き添われ、問題を起こしたシニア客が来店した。泣きながら土下座して謝罪し、訴えを取り下げて欲しいと言ってきたんです。自分の親の世代の人が土下座する姿を見て、ドン引きしてしまいました。娘さんも泣いて謝罪し、許して欲しいと何度も頭を下げているのを見て、結局は訴えを取り下げたんです。ただ、カスハラ被害にあった女性スタッフは心に傷を負ってしまい、バイトも辞めたので誠意を見せて欲しいと伝えました。
後日、被害にあったスタッフには、キチンと謝罪してお見舞金などを渡したようです。当然ですが、そのシニア客は店舗を出禁にしました」

クレーマーとどう向き合うべきか

とんでもないクレーマーからのカスハラに巻き込まれた神田さんだが、今後はシニア客が加害者の騒動が起きやすくなりそうだと語った。

「私の店舗では、問題を起こすのは若いお客様よりシニア客のほうが多い。カスハラという概念が薄く、平気でスタッフに説教したり無理難題を言ってくるのは、多くがシニア客です。いま以上に少子高齢化が進む中で、各社がわがままなシニア客の対応を、しっかり考えないとカスハラ騒動は各地で起きる可能性があります」

金も暇も持て余したクレーマーたちが起こすカスハラ騒動が、毎日のようにニュースで報じられる日も遠くない未来に訪れるはずだ。

<TEXT/高橋マナブ>

【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている
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