2024年7月、ロケバスの車内で共演者・Aさん(女性・20代)に性的暴行を加えたとして不同意性交などの罪に問われている、お笑いトリオ「ジャングルポケット」の元メンバーの斉藤慎二被告(43)の論告・求刑公判が、8月5日に東京地裁(伊藤ゆう子裁判長)で開かれた。
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 この日の公判で、検察側は斉藤被告に対して「懲役7年」を求刑。
弁護側は「無罪判決が言い渡されるべきだ」と主張して結審した。その双方の陳述をまとめる——。

斉藤被告は初公判から「同意があった」と無罪を主張

 今年3月の初公判で、斉藤被告は「私の行為にAさんが同意してくれていると思っていました」と起訴内容を否認。これに対して検察側は、Aさんが恐怖・驚愕や時間の切迫、斉藤被告の芸能界での影響力から、断ると不利になると考え、同意しない意思を表明することが困難な状態だったと主張。

 これを斉藤被告も「認識していた」として、起訴内容の犯罪は成立するとみている。

 有罪立証をした検察側論告の要旨は次のとおりである。

【Aの証言の信用性】

 Aは当公判廷で「この人異常じゃないかと思って怖くなった」「(ディープキスの際)唇や歯で抵抗したが舌をねじ込まれた」、被告が犯行後に「『ごめん。つい可愛くてさ。俺ってだめだよね』と謝罪した」「抵抗すると芸能関係者に悪口を言われると思った」などと証言した。

 Aの証言は、実母や知人とのメッセージといった客観的な証拠とも整合する。かつ、供述の内容も当事者として自然であり、実母へ過少に被害を告げていることも性被害に遭った者の心理として自然である。また、犯行に至るまでの経緯も極めて自然である。

 Aと被告は初対面であり、被告を陥れる動機もない。
売名行為の可能性もなく、Aが示談を拒否しており、示談目的の行為の可能性もない。

「被告の弁解は不自然」検察側が“同意の誤信”を否定

【被告はAが同意していたと誤信していないこと】

 両者の間には年齢、経歴、知名度に差があった。また、本件は発覚すれば不倫とされる行為で、社会的非難を受ける。最初の犯行は、両者が対面してからおよそ1時間40分という短時間でなされた。

 信用できるA証言によれば、拒絶の意思を明確に表明しており、被告がAの同意があると誤信するような事実関係は特段見当たらない。また、被告は犯行後、Aに謝罪をしており、これは同意がないことを認識していた現れである。

【被告の弁解が信用できないこと】

 一方で被告は「Aの発言によって好意をもっていると考えた」、「互いに近づきキスをした」、「自身は顎や頬を掴んでいない」、「Aから『嬉しいです。幸せです。今日一日頑張れます』と言われてディープキスに至った」、「Aは用もないのにロケバスに乗ってきており、口腔性交をする際も同じ気持ちだと思った」、口腔性交で「Aは自ら顔を近づけた」、「行為は10秒ほどだった」などと弁解した。

 しかし、本件犯行がロケバス内だったことを踏まえると、性的行為の同意があると誤信していたというのは、およそ不自然である。また、Aの好意が性的行為を許容するほど強いものでないことは明らかである。被告の弁解はあまりに飛躍しており、不自然・不合理である。

 犯行後の被告からの謝罪も、「良い答えが返ってくることを確信して尋ねるもので、口癖だ」と供述するが、およそ意味不明であり、不自然・不合理な弁解であると言わざるをえない。
かつ、被告の当公判廷における供述は、一部が供述調書と異なり、変遷している。

検察側が斉藤被告に懲役7年を求刑

「この人異常じゃないかと…」元ジャンポケ斉藤被告に懲役7年求刑。検察が「およそ意味不明」と断じた弁解
事件発覚後、斉藤被告が所属していた「吉本興業」は契約解除の声明を出していた(同社HPより)
【情状関係】

 本件犯行は、被告の芸能界における立場を利用し、撮影の合間のロケバス内において3回にわたってキスしたうえ、口腔性交に至っており、大胆でAの性的自由への侵害は大きい。その犯行態様は悪質である。

 また、Aは本件犯行の影響で、精神科への通院を余儀なくされ、日常生活もままならず、本件犯行で生じた取り返しのつかない結果は、重大なものである。

 Aは意見陳述で実刑を求めており、量刑において十分に考慮されるべきである。前科がないことなど被告に酌むべき事情を考慮しても相当な期間、矯正施設に収容して猛省を促すことが不可欠である。

 懲役7年に処するのが相当だと思料する。

「Aさんの証言には信用性がない」弁護側が供述の矛盾点を指摘

 これに対して、無罪主張をする弁護側最終弁論の要旨は次のとおりである。

【Aさんの証言の信用性等】

 第1の時間帯の最初のキスに至るまでの経過は自然なものだった。斉藤さんは行為があったことを認めており、虚偽を述べることもない。

 第2の時間帯にAさんは「キスをされた」と供述した。しかし、当時のロケバスを映した防犯カメラの映像には、車内からドライバーが出てくる様子はなかった。車内でドライバーに音を聞かれ、カーテンの隙間から見られる可能性などがある。その状態で行為をすることは考えられない。
斉藤さんは犯行をしていない。

 Aさんの証人尋問で曖昧な供述があり、斉藤さんとの会話の内容を「覚えていません」と述べたり、示談の合意内容に「今後も芸能活動を認めることも含まれていた」と証言するが、斉藤さんはこれを求めていなかった。

 また、事実関係が正しく反映されていない証言もあった。行為のあった時間帯は、斉藤さんの供述によって特定されている。「相手を怒らせたら何をされるかわからない」「今後の活動に影響が出る」などとAさんは供述する一方で「抵抗した」と言い、Aさん自身の証言とも整合しない。

 Aさんは供述調書に記載のないことも裁判で証言しており、証人尋問に立って新たな供述を始めたと考えられる。ディープキスの場面で「唇や歯で抵抗したが舌をねじ込まれた」と明らかに不可能な供述もしており、供述の内容は大きくゆがめられた可能性がある。

「芸能界での立場を利用したとはいえない」弁護側が検察の主張に反論

「この人異常じゃないかと…」元ジャンポケ斉藤被告に懲役7年求刑。検察が「およそ意味不明」と断じた弁解
初公判時の東京地裁前。289人の傍聴希望者がわずか20席の傍聴席を求めて列ができていた
【起訴罪名の該当性】

 検察官は、被告が経済的・社会的関係における地位を利用したと指摘する。しかし、本件番組の現場指揮はディレクターにあり、斉藤さんは複数いた出演者の一人にすぎず、Aさんを出演させるか否かを「決定する権限」を有しない。また、斉藤さんはAさんに口止めをしておらず、自身の影響力による行為の発想もうかがわれない。

 検察官はAさんが「時間が短いこと」によって同意しない意思の表明が困難だったとも指摘するが、斉藤さんはキスをした場面で「ゆっくりとしたスピードで顔を近づけた」と供述しており、時間のいとまのなさの認識が生じようがなかった。

 さらに、検察官はAさんが「恐怖・驚愕を覚えた」ことから同意しない意思の表明が困難だったとも指摘するが、Aさんは斉藤さんが行為後も「ヘラヘラと冗談を言う口調だった」と証言しており、斉藤さんに同意のない性加害行為をした意思は明らかに認められない。

「同意があると考えるのは不自然ではない」不同意わいせつの故意を否定

【不同意わいせつ罪の故意】

 Aさんは笑顔で親密な態度をとっており、不快感を示すことも距離をとることもなかった。斉藤さんがキスをしようと顔を近づけても、Aさんはよける動作をしなかった。
よける動作は、Aさんの座席位置からしても可能だった。斉藤さんがAさんが同意をしてくれていると考えるのは不自然ではない。

 また、斉藤さんはいわゆる有名人であり、Aさんは「『俺のことめちゃくちゃ詳しいね』と言われた」とも証言している。斉藤さんからすれば、以前から自分のことを知っている相手であり、初対面でもキスをすることは決して不自然ではない。

 斉藤さんはAさんと初対面であり、反応を予測することは不可能である。かつ、数時間にわたる撮影の間に、スタッフへ相談されることもあり得る。同意しない性加害行為を強行するには、あまりにリスクが大きく、不同意わいせつ罪の故意が全くないことは明らかである。

「不同意性交等罪の故意もない」弁護側が改めて無罪判決を求める

「この人異常じゃないかと…」元ジャンポケ斉藤被告に懲役7年求刑。検察が「およそ意味不明」と断じた弁解
斉藤被告を乗せたと思われる車が東京地裁のある合同庁舎に入っていく様子/筆者撮影
【不同意性交等罪の故意】

 撮影は順調に進んでおり、裁判で番組関係者は本件を知って「信じられない」、「驚きました」と証言した。撮影終了後も、斉藤さんからすればAさんは変わらずに親密であり、これ以上の行為を求めていると考えるのも無理はない。

 口腔性交の場面でも、Aさんの意に反する故意はなかった。Aさんから口に含む動作があったが、「諦めた気持ちで口腔性交をした」と証言する。Aさんには、このことを考えるいとまがあった。斉藤さんから見て、Aさんに恐怖・驚愕が見られないのは全く自然なことである。


 同意のない性加害行為をしたとの認識がなかったことは明らかであり、不同意性交等罪の故意がないのも明らかである。

 この裁判で斉藤さんに言い渡されなければならない判決は無罪判決である。

懲役7年求刑と無罪主張…真っ向対立の行方

 「Aさんの証言は信用できる」として懲役7年を求刑した検察側に対し、弁護側は証言の信用性や「同意」の認識をめぐって全面的に反論し、最後まで無罪を主張した。

 双方の言い分は、まさに真っ向から対立している。果たして裁判所は、Aさんと斉藤被告、それぞれの証言や当時の状況をどのように評価するのか。注目されるのは、その判断の行方——。

 司法判断は11月16日に下される予定だ。

文/学生傍聴人

【学生傍聴人】
傍聴歴7年、傍聴総数1000件超。 都内某私立大の大学院に在籍中の現役大学院生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴をはじめ、有名事件から万引き事件など幅広く傍聴している。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行なっている。

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