平成元年(1989年)にサントリーから誕生し、日本中を席巻したあの大ヒット飲料が帰ってきた。
令和の「鉄骨飲料」は、オリジナルのグレープフルーツ風味をベースにしつつ、現代のニーズに合わせて鉄分、カルシウムに加え、あらたに亜鉛を配合。
容量も当時の小瓶から、日常の水分補給シーンで手軽にごくごく飲める500ml サイズのペットボトル飲料へと変わった。2026年6月2日から一部チェーンで先行発売され、6月30日からはサントリーのオンラインストアなどでも入手できるようになった。
オリジナルの「鉄骨飲料」が発売されたのは1989年10月3日。この日の深夜、関東地方では「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」(日本テレビ系)の放送が始まっている(日付は10月4日)。
ソニーによる米国の映画会社コロンビア・ピクチャーズ買収(9月27日)や、三菱地所によるロックフェラー・センター買収(10月31日)など、ジャパンマネーをめぐる景気の良いニュースが駆け巡っていた頃だ。
飲料業界では前年に発売された「リゲイン」(三共、現・第一三共ヘルスケア)の大ヒットを端緒に、小型瓶のドリンクが人気を集めていた。
「リゲイン」「グロンサン」(当時中外製薬・現在はレックに移管)「アリナミンV」(当時武田薬品工業、現在はアリナミン製薬株式会社に移管)といった男性ビジネスマン向けの強壮剤が薬局薬店で人気となる中、その固定概念を鮮やかに覆したのが大塚製薬の「ファイブミニ」だった。
女性研究者の手により開発された「ファイブミニ」は微炭酸で飲みやすく、スーパーやコンビニで買える手軽さも受け女性に大ヒット。山田邦子さんによる「やまだかつてないうまさ」のキャッチフレーズとともに“センイ”ブームを巻き起こしていた。
新たに生まれた「健康や美容を気遣う女性のための小型ドリンク」というジャンルに向け、翌1989年、アサヒビールはプロテイン飲料「PF21」を、カルピス食品工業(当時)はビフィズス活性飲料「オリゴCC」を相次いで投入した。
「鉄骨飲料」もこうした流れの中で登場した商品だった。
最大のヒット要因は、広大な風呂場で大勢の“鉄骨娘”たちが摩訶不思議な衣装でダンスを踊るインパクト抜群のテレビCMだろう。起用されたのは鷲尾いさ子さん(当時22歳)。
モデル出身の鷲尾さんは1985年に全日空のキャンペーンガールに起用されて脚光を浴び、1986年~1987年にかけてはUCCのCM(「UCCオリジナル」)にも出演。抜群のスタイルとクールな雰囲気で注目を集めていた。
だが「鉄骨飲料」ではそのイメージを一新し、振り切った歌唱とダンスで老若男女問わず人気を広げた。「鉄骨飲料」だけでなく、彼女の歌ったCMソング「鉄骨娘」もオリコンチャート最高15位、累計CD売上15万枚を超えるヒットを記録している。
ちなみに同じ年にCD化された「リゲイン」CMソング「勇気のしるし~リゲインのテーマ~」(牛若丸三郎太こと時任三郎さん)は同最高2位、累計60万枚を売上げた。テレビCMが圧倒的なリーチと存在感を誇った時代だった。同年末の日経平均株価3万8915円87銭は、その後35年にわたって史上最高値であり続けた(2024年2月に更新)。
「鉄骨飲料」はその後特定保健用食品(トクホ)認定(1995年)など何度かのリニューアルを経て、再び私たちの前に登場した。
同社が数年前から試験的に展開してきたVTuberだ。この春にサントリーの公式キャラクターに就任した“彼女”の初仕事が「鉄骨ダンス」のオマージュCM。振付指導はオリジナルのCMも手掛けた振付師の南流石さんだという。
“失われた30年”を経て「鉄骨飲料」は120mlの小瓶から500mlのPETボトルへ、新進女優を起用したテレビCMは2次元キャラクターによるYouTubeCMへ変わったが、一度見聞きしたら忘れられない歌とダンス、そしてグレープフルーツベースのさわやかな味わいは、37年前と変わらないようだ。
【岸田林(きしだ・りん)】









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