7月に入り、学校ではプールの授業が行われている時期ですが、猛暑や、急な雨などの影響で、学校では予定通りにプールの授業ができないケースもでています。さらにプールの老朽化や、先生たちが毎日行う水質管理の負担が大きな課題となっていて、いま、学校のプールは転換点を迎えています。

大田区が描く新しい水泳授業

では、自治体はどのようにして子どもたちの水泳授業を守ろうとしているのでしょうか。大田区では今年、プールのあり方を見直す新たな方針をまとめました。どんな内容なのか、大田区教育委員会 施設担当課長 小野澤 行平さんに聞きました。

大田区教育委員会 施設担当課長 小野澤 行平さん

まずは既存プールを活用するっていうところ、日差しよけをつけながら熱中症対策により対応できるようにしていくというところ。次は、民間プールです。スポーツジムやスイミングクラブでプールを持っているところや、大田区の区営プール、こちらの外部施設を利用して、屋内の温水プールで、水泳指導を行うというふうに考えているところ。もう一つは、中学校を原則に屋内の温水プールを整備していって、その周辺の小学校がそこのプールを借りに来るようなプールシェア。こちらを軸に考えてございます。

プールを一つの学校だけで持つのではなく、地域の中で使い分ける方針です。使えるプールは日よけを付けて使い続け、近くに民間や区営の屋内プールがあればそこも使う。さらに、中学校に屋内プールを整備して、周りの小学校も一緒に使う形です。背景には、費用の問題もあります。学校の屋外プールを建て替え、維持していくには、80年間で1校あたりおよそ17億円かかる試算ですが、3~4校でシェアすれば1校あたりの負担を大きく抑えられます。

水泳授業が変わる 広がるプールの共同利用の画像はこちら >>

〈移動式日よけの整備事例〉

さらに先生たちが長い時間拘束されていた水質管理や清掃の負担も、外部の施設を使えば、その分は減らせます。ただ、大きな課題が子どもたちの移動。バス会社の人材や、バスの台数そのものを確保するのは簡単ではありません。そこで大田区は、半径1キロほどを目安に、歩いて移動することを基本にしていますが、暑い中、低学年の子どもも歩くことになるため、見守りや休憩場所をどうするかが課題です。

先行自治体で見えた課題

大田区の本格的な整備はこれからですが、実は千葉県君津市では、すでに5年以上前からこうした集約化を進めています。君津市では、市内の小学校12校のうち、4校は自分の学校のプールを使い、2校は別の学校のプールを借りています。そして残る6校は、市営プールや民間のスイミング施設など、学校の外にあるプールを使っています。実際にやってみて、どこが大変だったのか、君津市教育委員会 教育部副参事 諏方 壽一郎さんに聞きました。

君津市教育委員会 教育部副参事 諏方 壽一郎さん

隣の学校まで徒歩で行くと、30分以上かかってしまうというところもあるので、必ず市内の学校に行くときには、バスを利用してます。児童の輸送に係る貸切バスでは、昨今の運転手不足による影響で、バスを複数台揃えることが年々難しくなってきているところが正直言ってございます。また学校とプール施設の日程調整では、学校が希望する日程に全て答えることが難しいというところもあります。調整には様々な配慮、例えば学校間同士であったり、学校と施設、あとバス会社等が必要となるところが、少し大変だったところかなというところでございます。 

学校の外に出る分、バスの確保、移動時間、施設との日程調整といった新たな負担もあります。

実際、移動も含めると、午前中の授業枠の多くを水泳にあてる日もあるということです。ただ、日程調整については、教育委員会が中心となって前の年の12月から一括して各学校や施設と調整を行っているそうです。また、費用面でも、自前のプールを何億円もかけて直したり、水道代や光熱費などをかけて維持したりするよりは、バス代や施設の利用料を払っても、費用はかなり抑えられます。人数が少ない時は、タクシーも使うなど、工夫して乗り切っています。 また、民間のスイミング施設にとっても、一般のお客さんが少ない平日の午前中を使ってもらえるメリットがあり、学校の困りごとと、地域の施設の空き時間がうまくつながっています。

水泳授業が変わる 広がるプールの共同利用

5年で変わった現場の受け止め

では、5年以上続けてみて、現場の受け止め方はどう変わったのでしょうか。再び諏方さんに聞きました。

君津市教育委員会 教育部副参事 諏方 壽一郎さん

教員の中では、導入当初は移動時間がかかるということや、インストラクターの活用方法について多少の戸惑いや不安の声が正直ありました。ただ、プール清掃とか管理が削減されること、また、衛生管理された綺麗なプールを使用することができること、ですので、本当に両方の意見が当初はありました。ただ、5年経過して、年々そのノウハウを各校が蓄積してますので、現在は基本方針に従って、市内の各小学校が水泳授業にとても積極的・意欲的に取り組んでいるというところでございます。

不安だったというインストラクターの活用も、プロが補助に入ってくれることで、水が苦手な子の克服や、より細やかな指導につながるといったメリットが見えてきました。また、君津市では、小学校で泳ぐ力を身につける一方、中学校では水に入る授業ではなく、水の事故を防ぐ方法や、心肺蘇生法、AEDの使い方などを学ぶ授業に切り替え、9年間を通して授業のあり方まで見直しました。

使われなくなった学校の屋外プールの一部は、水をためて、災害用の防火水槽としての役割も担っているということです。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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