7月も半ばとなり、そろそろ、夏の果物、梨の季節がやってきます。千葉県市川市では、早い品種は今月下旬から出荷が始まる見込みですが、その梨を育てる農家はいま、ある困りごとを抱えています。

きっかけは、中国で発生した「火傷病」という梨の病気です。実は、市川市の農家の多くはこれまで、梨の実をならせるための受粉に使う「花粉」を中国からの輸入に頼っていましたが、この病気の影響で現在は輸入がストップしてしまいました。

「火傷病」とは?

では、 火傷病とはどんな病気で、なぜ農家は中国産の花粉を使ってきたのか。市川市役所 農政課 金城 達也さんに聞きました。

市川市役所 農政課 金城 達也さん

火傷病が何かっていうと、細菌による植物の病気で、花粉を介して木に侵入して、枯れ症状というのを起こすという病気です。仮に火傷病に感染してしまうと、治療法がありませんので、基本的には伐採をして、焼却処分や、捨ててしまうという方法しかありません。梨の花が開花している時期に、花を摘んで、花から花粉を取り出して、受粉をするという工程を終えないといけないので短い期間で莫大な労力がかかってしまうと。その結果、お金を出してでも、輸入花粉で受粉をすることで花を摘んで花粉を取り出すっていう作業はしなくてよくなるので、そういうコストを考えて、農家の皆さんも輸入花粉を使っていたというような状況だったと思います。多くの方は輸入花粉を使われてましたので、自家採取しなきゃいけないというところで、労力だとか手間を考えると、大変だったのかなと思いますね。

国が中国産花粉の輸入を止めたのは、2023年の8月です。翌年の春から、農家は受粉に使う花粉を自分たちで用意することになりました。そこで市川市は、2024年の春、花粉を採る作業を手伝う花摘みボランティア「梨花隊(りかたい)」を立ち上げました。

市川の梨を花から支える 梨農家を救うボランティア”梨花隊”の画像はこちら >>

登録しているのはおよそ300人。

中心は50代、60代ですが、20代から70代まで幅広い世代が参加しています。今年は、およそ50人が実際に梨園で作業しました。参加者は事前に研修資料で作業を学び、市が、参加者の希望する日、農家の受け入れ日を調整します。

市川の梨を花から支える 梨農家を救うボランティア”梨花隊”

〈梨の花〉

農家を救ったボランティア「梨花隊」の活躍

では、梨花隊はどのような作業を行い、農家はどれほど助かったのでしょうか。 市川市で梨を育てる荒井梨園の荒井一昭さんのお話です。

荒井梨園 荒井一昭さん

一つの花芽に…花芽って花の咲く元ですね。その花芽から花が7つぐらい出てくるんだけど、それを一つおきとかに全部取ってもらっちゃったりするんですよ。で、疲れたら休んでくださいってお茶やったりしてさ。で、1日やるんじゃなくてうちは午後からお願いして3時間ぐらいやってもらってそれで帰るって形だったんで、長い時間いるとやっぱり大変なんでね。あくまでボランティアさんですからね。でも本当に助かってますよ。結構花取るのって、他の作業もありますから、農家やってると、ボランティアさんで花取ってもらって他の作業できますから。だからそれだけでもね、違いますよね。

花取りだけで結構本当に時間かかるんですよ。

荒井梨園では、梨花隊が始まってから、3年続けて毎年ボランティアを受け入れています。今年も、4月に行われ、1回に3人ほどが畑に入りました。作業では、全ての花を摘み取るわけではなく、実をならせるための花は残しながら摘んでいく必要があります。そのため、摘んだ花を集めやすいよう、梨の棚に開いたビニール傘を逆さに引っ掛けて、摘み取った花をその傘の中にポンポンと落としてもらう形をとっています。こうして集めた花から取り出した花粉は、しっかり乾燥させて冷凍しておけば、翌年以降に使うこともできます。花が多く採れた年に少し多めに保存しておくことで、花粉が十分に採れない年などにも備えることができるそうです。

市川の梨を花から支える 梨農家を救うボランティア”梨花隊”

荒井さんの梨園には、気象系の会社に勤めている人や研究職の人、子育て中の方など様々な人が手伝いに来たそう。市によると、参加者のほとんどがリピーターで、3年続けて参加している人もいるそうで、こうした交流は他の農園でも広がり、「自分が手伝った梨を食べたい」と直接買いに来てくれるなど、市川の梨に親しみを持ってもらえる新たな繋がりになっていると、手応えを感じているそうです。

今年の梨は?梨花隊のこれから

では、自分たちで採った花粉を使って育てた今年の梨は、無事に育っているのでしょうか。今年の梨の育ち具合と、ボランティアへの今後の期待について、再び荒井さんのお話です。

荒井梨園 荒井一昭さん

今年は今のとこ順調なんです。

見込みは、今年はこのまま順調にいけば平年より大きくなるかなとは思うんですけど。花取り専用の畑を、作ったんです、2年前に植えたんで、だんだん花粉取れるようになってくるんじゃないかなと思うんですけど。これからやっぱり木も大きくなってくると、作業量も増えてくると思うので、そこら辺がなかなか難しいかなとは思うんですけど。ボランティアさんで楽しみにしてる人いるんですよ。忙しくても日にち空けてきますとか、言われてますよ。だからそういうので、行政入ってもらった方が気が楽なんでね。そういう感じで進めてもらいたいです、はい。

荒井梨園では新たに花粉用の木を育て始めました。これなら実をならせる花を残す必要がなく、咲いた花をまとめて摘み取れるそうです。今後、木が成長すれば少しずつ花粉が確保しやすくなる見込みですが、その分、花を摘む作業量も増えていきます。市川市としても、こうした農家さんの声に耳を傾けながら、今後の中国産花粉の状況や現場の意向を見極めて、支援の形を考えていくとのことでした。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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