今、抹茶人気が高まっています。去年のお茶の輸出額は721億円と過去最高。

このうちおよそ8割を、抹茶など粉末のお茶が占めました。ところが、残る2割、急須でいれて飲む「煎茶」などの茶葉の需要が減っています。

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茶葉を仕入れて加工・販売する「製茶業者」の休廃業や解散は、去年13件と過去最多。茶農家そのものも減り続けています。

抹茶向けへの転換はなぜ難しい?

それなら、需要が伸びている抹茶の原料、「てん茶」づくりに切り替えればよさそうですが、実は、そう簡単ではありません。お茶どころ・静岡県のお茶振興課長 西川 博さんに聞きました。

静岡県お茶振興課 課長 西川 博さん

煎茶を作るという工程からてん茶に変わるためには、巨額の設備投資が必要なんですね。それから、てん茶っていうものは、暗い中で芽を育てる。その覆いをするという作業が結構手間がかかるんですね。それが人手がないとできない。他にもですね、静岡県内では「やぶきた」っていう煎茶に適した品種が多く植えられているんですけど、その品種はてん茶にすると、(品質が)てん茶としては高くない。簡単に既存の煎茶の生産をてん茶に転換するっていうことは、難しさがあるっていうところにはなります。

巨額の設備投資、また静岡で多く栽培されている品種がてん茶に向いていないなどの事情で、誰もが簡単に切り替えられるわけではありません。

ペットボトルのお茶向けなどの需要は続いているため、静岡茶市場で取引された今年の一番茶は、1キロおよそ3300円まで上昇しました。農家にとっては一息つける価格ですが、人手不足や高齢化の問題は残っています。県内でお茶を販売する農家は、およそ30年前の6分の1以下。茶園面積も半分近くまで減っています。さらに、放置された山あいの茶畑は、イノシシなどが隠れる場所になるおそれもあります。

会議室のお茶で茶畑を支える

こうした中、後継者のいない茶畑を救おうという動きが出てきました。手がけるのは、ご自身も静岡で300年以上続く茶農家の出身で、茶畑の再生事業を行う、Blue Farm株式会社CEO 青木 大輔さんです。一体どんな仕組みなのか、青木さんに聞きました。

Blue Farm株式会社CEO 青木 大輔さん

抹茶ブームの裏で減る茶畑 企業と農家をつなぐ新たな取り組み

今企業様が応接室で使ってるペットボトルの飲料、これを我々の飲料に置き換えてもらうだけです。契約としては1本140円の飲料を買うだけです。年間、例えば1万本ペットボトルの飲料を使ってますよっていうことであれば、それを置き換えてもらうだけで、そうすると、企業様の茶畑というものが割り当てられまして、そこを企業様の管理茶園にしますと。実はお茶畑には温室効果ガスの削減、生物多様性の保全だとか、企業様が求めるサステナブルの機能が使われずに眠っているというような状況になってますので、これを企業、ひいては社会に開放するというようなことをやろうとしてます。

この仕組みは、茶畑の定期契約サービス「ChaaS(チャース)」といいます。

現在、Blue Farmは、後継者のいない茶畑など、およそ10ヘクタールを管理しています。企業は、その茶畑と契約、そこで採れた煎茶で作られた、ボトル缶のお茶が各企業に届く仕組みです。すでに全国でおよそ50社が契約しています。主に会議室や応接室で使われていて、来客や社員に直接お茶を出すことで、企業も「環境への取り組み」を自然な形でアピールしやすいそうです。 「SUSTEA(サスティー)」という、290ミリリットルのボトル缶のお茶です。

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茶畑が割り当てられると言っても、契約した企業の社員が畑仕事をするわけではありません。日々の手入れや収穫は、Blue Farmの社員や地域の生産者が担います。茶畑にはセンサーやアプリを導入し、土の状態や農作業の情報を集め、企業に環境への効果を数字で示しているそう。

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茶畑を引き継ぐため、自ら農家に

このように、後継者のいない茶畑を救うための取り組みを進める中で、ITだけでは解決できない問題が見えてきました。再び青木さんに聞きました。

Blue Farm株式会社CEO 青木 大輔さん

最初テクノロジーで一次産業を変えるとか言ってたんですけど、テクノロジーを使う人たちがそもそもいないっていうのがわかりまして。「もう僕たちが農家やります」というのが大きな転換点になっていて。

農家の方々も、ずっと先祖代々やってきた茶畑を誰かに引き継ぎたい。なんですけど、「よくわからない人にはやっぱり預けられない」っていう思いがあって、引き継ぐためにはやっぱり信用というかクレジットが重要になってきていて、それが何かっていうと「実際農業やってるかどうか」なんですよ。もう自分たちで実際やんないと、農家から農地を承継するってことはやっぱできないですね。

ITを導入しても、それを使う人も、実際に畑を管理する人も足りませんでした。そのため、現在は、農学部出身者や農業経験のある社員が畑に入り、地域の生産者とも協力しながら茶畑を管理しています。

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また、契約企業の社員が茶畑を訪れ、生産者と直接話したり、お茶摘みを体験したりすることもあります。長年畑を守ってきた生産者にとっては、自分たちのお茶を誰が飲むのかが見え、「この畑が新しい価値を生んでいる」と実感する機会になっているそうです。企業と農家が支え合って、長く続いてきた茶畑を、次の世代つないでほしいですね。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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