今日は、このところ広がりつつある「わざわざ備えない備えで防災」というお話です。

カフェもジムもコインランドリーも いつもも災害時も!

なんだ?それは?となりますが、具体的にどういう備えなのか。この考え方で、街の庁舎を新しく建設した、北海道小清水町総務課長の松本崇文さんに聞きました。

北海道小清水町総務課長の松本崇文さん

「正式名称が、防災拠点型複合庁舎と言います。この中には役場機能の他に、商工会さんが入っている他、にぎわいの空間ということで、カフェとかコミュニティスペース、コインランドリーとフィットネスジムといったものが入っている施設になってます。

例えば、カフェに関しては、そこが災害時には炊き出しのスペースになってきます。で、コインランドリーは、例えば停電になったとしても、非常用発電機をこの役場は備えていますので、それでコインランドリーを動かすことが出来るので、衛生面を確保できるような仕組みになってます。フィットネスジムに関しても、ジムの中に、普段ヨガとかフィットネスをやるスタジオがあるんですけれども、そこの床が少し柔らかくできてますので、で、温泉熱を使った床暖も入ってるんですね。なので、冬場でも暖かい環境で、床の方も多少柔らかいですので、そこで、寝て休んでいただくっていうこともできるようになっております。」

防災拠点型複合施設「ワタシノ」といいますが、中の色々な施設が、そのまま災害時に機能するんです。

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<防災拠点型複合施設「ワタシノ」 空間写真@2023Nacása&Partners Inc.>
わざわざ備えない【備え】で防災!
<様々な施設が入っています 空間写真@2023Nacása&Partners Inc.>
わざわざ備えない【備え】で防災!
<炊き出しスペースにもなるカフェ 空間写真@2023Nacása&Partners Inc.>
わざわざ備えない【備え】で防災!
コインランドリー 空間写真@2023Nacása&Partners Inc.>>
わざわざ備えない【備え】で防災!
<柔らかくて床暖房もあるジムのスタジオ 災害時は寝ることもできます 空間写真@2023Nacása&Partners Inc.>

役場の建物はあったのですが、老朽化が進んでいて、しっかりとした災害本部ができるか心配があった。しかも、東日本大震災をはじめとする様々な災害もあり、特に2018年9月の北海道胆振東部地震で、48時間のブラックアウト(停電)を体験し、もし冬に起きていたら・・・このままでは町民を守れない、と思った。

そしてもう一つ、町の抱えていたコミュニティの再生という課題に対し、その両方を兼ね備えた施設を作ることにしました。そして出来上がったのが、今回の施設。

今までは、役場には用事が無ければ人は来なかったわけですが、この施設が出来てからは、例えば、日中は、町民の方だけでなく、町外の企業の方がコミュニティスペースを使っていたり、小学生や中学生が、放課後になると来ていたりとか、町の賑わい、コミュニティスペースとしてしっかり機能してるのを実感していました。

もちろん人が集まる工夫もしていて、例えばコインランドリーには、撥水機能が復活する洗濯機があったり、普段から利用してもらえるように考えられているんです。

松本さん自身も、今まで顔を合わせなかった住民を見かけるようになったり、住民同士も、今までにないつながりが出来たよ、という話も聞くそうで、災害時に大事な、住民同士の横のつながりを作る、大きな機能を果たしているかな、と嬉しそうでした。

災害時のために備えるのは、分かっていても難しいから・・・

こうした、普段も便利、災害時の備えにもなる、というものを「フェーズフリー」といって、最近、食品から衣料品、建物など非常に増えています。(耳にする機会も増えて来ていますか?)

防災専門家で、フェーズフリー協会代表の、佐藤唯行さんが2014年に提唱した考え方です。

学生のころから30年近く防災に携わってきた佐藤さん、なぜフェーズフリーを思い付いたのか。お話を伺いました。

フェーズフリー協会代表 佐藤唯行さん

「非常時のために何かをやっていくというのは、すごく難しいじゃないですか?だって、みんな分かってるんですよ。非常時のために何かしなきゃ、だって日本で暮らしてる以上、地震を考えないわけにはいかない、台風を考えないわけにはいかない、それをやらなきゃいけないと思うんだけども、でも、それにも増して日常にやらなきゃいけないことがいっぱいあるわけですよ。非常時にまでなかなか手が届かないわけですよね。

だとするならば、普段使ってるものが、別に何気なく便利だな~と使ってたものが、ついでに非常時に役に立ってしまったら、いいじゃないですか。そういうことなのかなと思ってます。非常時に必要なモノってなんですか?ってよく言われるんですけれども、結局、必要じゃないモノってないんですよね。私たちの暮らしを支えているありとあらゆるものは、非常時でも必要なんですよ。」

面と向かって住民の方々に備えましょうと話すと、その時はそうだなと思ってくれているのは分かる、佐藤さんにも伝わってくる。でも、どうしても現実、日常に紛れてしまう。

(分かりますよね?)

また、非常時のためだけのモノを準備するとなると、それはコストでやることになります。それだと、どうしても準備は限定的になってしまいます。最低限の備え、と言いますよね。もちろん、コストで準備しておくべきものもありますし、それはとても重要です。

でも、普段使うあらゆるモノは、災害時もやっぱり必要で、しかしありとあらゆるものはコストでは準備しきれないですよね。そこで、災害時のために備えよう、ではなく、日常の延長に防災の備えを持ってきたというわけです。

日常から普及してるから災害時も供給しやすい

この、日常の延長というところで、フェーズフリー商品には災害時における強みがあると、佐藤さんはおっしゃいます。

フェーズフリー協会代表 佐藤唯行さん

「能登の地震でも、今回の熊本の地震でも、フェーズフリーな商品がすごく活躍してるんですよね。それ、なぜかっていうと、フェーズフリー商品って日常から普及してるものじゃないですか。だから非常時でも供給できるんですよね。意味分かります?そうそう作ってる量、生産体制っていうのが、ちゃんと普段から、普段の需要に対応できるように、生産とか物流が整ってるわけです。だから供給できる。

例えば防災用品って非常時のために作ってたものだから、そんなに生産量がないんですよね。だからすぐ物資って品切れになってしまう。でもフェーズフリー商品って売れる中でやってるから、どんどん生産して送ることが出来る、っていうところが特徴なのかなって思いますね。」

普段から作っているモノだから、生産体制も整っているので、すぐに対応できます。

また、正直な話、非常時に使えますよという商品は売れる。売れるからこそ、持続可能な備えに繋がるということなのです。ちなみに、自治体も、住民の理解を得られる。(箱もの作る?他にやることあるだろ!となりにくい。)

長年、改善されない日本の避難所の問題も、コストで考えるから、最低限のレベルからなかなか出られないのではないか、というお話もありましたが、コストとは別に、国や自治体には、こうした考え方で備えてほしいですね。

(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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