祖業の「富士山麓電氣鐵道」を描いた一景(画像:富士急行)

富士急行線の電車も、富士急ハイランドの絶叫マシンも、浮世絵になりました。1926(大正15)年の創立から100周年を迎えた富士急行が、記念事業として現代の富士山麓を描いた浮世絵シリーズ「冨士急三十六景」を発表しました。

葛飾北斎の名作「冨嶽三十六景」をオマージュし、江戸木版画の伝統技法で富士急行線の「がんじゃ踏切」や富士急ハイランド、山中湖のバス・遊覧船などを活気豊かに描いた全10作品です。
2026年10月10日(土)より「ハイランドリゾート ホテル&スパ(山梨県富士吉田市)」地下1階にて一般展示がスタート。鉄道ファン必見の創業車両「モ1号」カラーの描かれ方から、展示会場のアクセス・見どころ、そして「どこで実物が見られるか」など詳しく解説します!

「冨士急三十六景」とは? 現代の富士山麓を江戸木版画で描いた10作品

富士急行の設立は1926(大正15)年9月18日。「富士を世界に拓く」という志のもとに生まれた会社で、2026年9月18日にちょうど100年を迎えました。その記念として発表されたのが「冨士急三十六景」です。
北斎が「冨嶽三十六景」で描いたのは、富士山そのものだけでなく、その時代を生きる人々と富士山の関係でした。それから約200年。見る場所、移動手段、旅のかたちは大きく変わりました。その現代の富士山麓を、同じ浮世絵という形式で記録しようという企画です。
作品には、昔の旅人と現代の観光客、海外から訪れた人たちが一緒に描き込まれています。スマートフォンを手にした人もいれば、ドローンを飛ばしている人もいます。

今回の公開は10作品ですが、本家の「冨嶽三十六景」も人気を受けて後に46図まで増えました。「冨士急三十六景」もこれから景色を増やしていく予定だといいます。

富士急行線のがんじゃ踏切、さび朱色の電車を描いた一景

鉄道ファンが気になるのは、祖業の「富士山麓電氣鐵道」を描いた一景でしょう。舞台は三ツ峠駅~寿駅間にある「がんじゃ踏切」です。手前を走る電車の車体は、創業当時の車両「モ1号」を踏襲したさび朱色。富士山の青との対比で、鉄道の存在感を際立たせています。現在の車両とともに、どこか懐かしさのある旅人たちの姿も描かれています。
富士山麓電氣鐵道は1926年9月18日の設立。1929年に大月~富士吉田間23.6kmで鉄道営業を始め、現在は大月駅~河口湖駅の全長26.6kmを結んでいます。

バスに遊覧船、絶叫マシン!100年前にはなかった富士の風景

残る9作品も、富士急グループが100年かけて富士山麓につくってきた風景が題材です。
「山中湖と富士急バス」では、観光客、地元の人、海外からの旅行者を乗せたバスが山中湖畔を走ります。奥には山中湖の遊覧船「白鳥の湖」と水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」、さらに河口湖の遊覧船「天晴(あっぱれ)」も描き込まれています。

富士急行が創立100周年で「冨士急三十六景」を発表!葛飾北斎オマージュの浮世絵10作品、絶叫マシンや芦ノ湖船などの江戸木版画の無料展示
冨士急三十六景「山中湖と富士急バス」
「山中湖と富士急バス」。奥には遊覧船「白鳥の湖」と水陸両用バス「YAMANAKAKO NO KABA」の姿も(画像:富士急行)

「富士急ハイランド」は絶叫マシンと富士山の共演です。画の中にはオリジナルキャラクターの「絶叫戦隊ハイランダー」が紛れているので、探してみてください。

富士急行が創立100周年で「冨士急三十六景」を発表!葛飾北斎オマージュの浮世絵10作品、絶叫マシンや芦ノ湖船などの江戸木版画の無料展示
冨士急三十六景「富士急ハイランド」
「富士急ハイランド」。
どこかに「絶叫戦隊ハイランダー」が紛れている(画像:富士急行)

「箱根遊船」の舞台は芦ノ湖です。お茶を楽しむ「大茶会」と、湖に浮かぶ緑の公園がテーマの「SORAKAZE」という個性の異なる2隻が並び、湖畔には箱根神社の平和の鳥居も描かれています。芦ノ湖の遊覧船事業は、富士急グループが伊豆箱根鉄道から譲渡を受けて2023年3月から手がけているものです。

富士急行が創立100周年で「冨士急三十六景」を発表!葛飾北斎オマージュの浮世絵10作品、絶叫マシンや芦ノ湖船などの江戸木版画の無料展示
冨士急三十六景「箱根遊船」
「箱根遊船」。芦ノ湖に「大茶会」と「SORAKAZE」の2隻が並ぶ(画像:富士急行)

春の「富士芝桜まつり」は、濃いピンクから白に近い色合いまで、芝桜の色の重なりを摺りで表現しました。会場の富士本栖湖リゾート(山梨県)では、例年4月中旬から5月下旬にかけて約50万株の芝桜が咲きます。

富士急行が創立100周年で「冨士急三十六景」を発表!葛飾北斎オマージュの浮世絵10作品、絶叫マシンや芦ノ湖船などの江戸木版画の無料展示
冨士急三十六景「富士芝桜まつり」
「富士芝桜まつり」。画の右側には“ミニ芝桜富士”も描かれている(画像:富士急行)

このほか「富士ゴルフコース」「アウトドアリゾート『PICA』」「ホテルマウント富士『はなれの湯』」「初島」「スノーパーク イエティ」を加えた10作品です。イエティの一景では、雪煙や雪面の一部に鉱物の雲母を使う「雲母(きら)刷り」という木版画の技法が使われ、光の角度で表情が変わるきらめきを加えています。

実物はどこで見られる?10月10日からハイランドリゾート ホテル&スパで展示

作品は2026年10月10日(土)から、ハイランドリゾート ホテル&スパの地下1階で展示されます。終了日は未定です。江戸木版画ならではの色の重なりや和紙の風合いは、印刷物の画像では伝わりにくい部分なので、近くまで行くなら実物を見ておきたいところです。

【概要】「冨士急三十六景」作品展示
期間:2026年10月10日(土)~終了日未定
場所:ハイランドリゾート ホテル&スパ 地下1階
作品数:10点(今後追加予定)
※展示期間などの詳細は変更となる場合があります

「冨士急三十六景」の世界観を楽しめる特別グッズやお土産の展開、作品そのものの販売も検討中で、詳細は決まり次第発表されるとのことです。

江戸木版画とは? 絵師・彫師・摺師の分業でつくる伝統的工芸品

「冨士急三十六景」は浮世絵風のイラストではなく、江戸時代から受け継がれてきた「江戸木版画」の技法で実際に摺られています。江戸木版画は2007年に経済産業大臣指定伝統的工芸品となったもので、絵師、彫師、摺師がそれぞれの工程を担い、和紙に一色ずつ摺り重ねてつくります。

富士急行が創立100周年で「冨士急三十六景」を発表!葛飾北斎オマージュの浮世絵10作品、絶叫マシンや芦ノ湖船などの江戸木版画の無料展示
江戸木版画の伝統を受け継ぐ「高橋工房」制作イメージ(画像:富士急行)

制作を手がけたのは、安政年間(1855~1860年)創業で160年以上の歴史を持つ浮世絵木版画工房「高橋工房」。代々摺師の技を受け継ぎ、四代目からは版元も兼ねています。
絵師を務めたのは美術作家の田村久美子さんです。「『現代に北斎がいたら、どんな絵を描くだろう』。この企画のお話しをいただいてから、この問いと共に描いてきました」とコメントしています。

太田記念美術館主席学芸員の日野原健司さんは、「北斎の『冨嶽三十六景』よりもユーモラスでにぎやかな画からは、富士山の楽しみ方が変わっても、富士山に惹かれ、そこへ集まる人々の思いは変わらないことが伝わってきます」と評しています。

100年の時を超えて、北斎の情熱と職人技で蘇る現代の富士山麓。10月10日からはぜひ現地ホテルで実物を鑑賞し、浮世絵に描かれた絶景を巡る富士山麓の旅へ出かけてみませんか?
(画像:富士急行)

鉄道チャンネル編集部
(旅とおでかけ!鉄道チャンネル)

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