作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。
7月26日(日)の放送は「村上RADIO~村上の世間話8~」をオンエア。
今回の放送は、村上さんが、日常の何気ない出来事や気づきを楽しく語りながら、お気に入りの音楽を聴く恒例企画「村上の世間話」の第8回目。今回は、7月3日に発売された村上さんの新作長編『夏帆 The Tale of KAHO』についての話や、海外の旅先でのエピソード、世界的ポップスターとの知られざる交流秘話などがたっぷりと語られました。
この記事では、中盤1曲と食堂車について語ったパートを紹介します。

村上春樹 食堂車を覚えていますか?「リニア新幹線なんて別にい...の画像はこちら >>

「村上RADIO」



◆Clarence Carter「I'd Rather Go Blind」

クラレンス・カーターを聴いてください、「I'd Rather Go Blind」。
クラレンス・カーターは、僕の大好きな黒人ソウル・シンガーです。前にも話したと思うけど、ずっと以前にカーターさんが来日したとき、聴きに行きました。良かったですよ、これは。このクラレンス・カーターさんは今年の5月13日に90歳で亡くなったそうです。彼は全盲、まったく目が見えないのですが、ここでは「I'd Rather Go Blind」という歌は、「きみが去って行く姿を見るくらいなら、僕は盲目になったほうがましだ」という内容です。しかし本当に目の見えない人がこれを歌うと、なんかやはり重みが出てきます。

【世間話】

最近はいろんな新しいものが出てきて、そのかわりに古くからあるいろんなものが姿を消していきます。効率が何より重視されて、効率が劣るものはどんどん捨て去られていきます。

そんな「消えゆくもの」のひとつに食堂車があります。食堂車ってご存じですか? 昔の長距離特急とか急行列車にはだいたい食堂車が一両、付属してついていました。カフェテリアみたいなものじゃなく、ウェイターとコックがいて、調理設備があって、ちゃんとした一品料理を出す正式なレストランです。テーブルには白いテーブルクロスがかけられ、一輪挿しにはカーネーションなんかが挿してあります。この雰囲気、なかなか素敵だったですね。子どものころ、家族旅行なんかに行くと、この食堂車で食事をさせてもらいました。父親はいつも昼間からビールを飲んで、みんなで好きな料理を頼み、窓の外の風景を見ながら楽しく食事をしました。
そういう楽しみがいつの間にかなくなってしまって、僕としてはとても淋しいです。トンネルだらけのリニア新幹線なんて別にいらないから、食堂車を残しておいてくれよ、とか言いたいですが、僕が何を言おうと世間の人はまず耳を貸してはくれません。なにしろiPodまでなくなってしまう世の中ですからね。(ニャーオ)

<番組概要>
番組名:村上RADIO~村上の世間話8~
放送日時:7月26日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

編集部おすすめ