夏のボーナスの使い道、住宅ローンの繰り上げ返済と投資のどちらに回すべきか迷っている人も多いのではないかと思います。本記事では「住宅ローン金利」と「投資リターン」をてんびんにかけた数学的な正解を解説。
夏のボーナスが入ると、家計に少しゆとりが生まれてうれしいですよね。でも、住宅ローンを抱える30~50代の方にとって、このまとまったお金の使い道は悩ましい問題です。
「少しでも早く借金を減らすために、繰り上げ返済に回すべきか?」
「それとも、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などで投資に回して増やすべきか?」
この「繰り上げ返済か、投資か」というテーマは、FP相談でも必ずと言っていいほど話題に上がります。今回は、感情論を少し脇に置き、「数学的な正解」と「後悔しないための考え方」を分かりやすくご説明します。
数学的な正解は「金利」と「利回り」の比較で決まる
数学的にお得な選択肢は、「住宅ローンの金利」と「投資の期待リターン(利回り)」を比べれば導き出せます。
ルールはシンプルです。
- 「投資の期待リターン」>「住宅ローンの金利」=「投資」が正解
- 「投資の期待リターン」<「住宅ローンの金利」=「繰り上げ返済」が正解
例えば、金利1%の住宅ローンを借りているとします。手元のボーナス100万円を繰り上げ返済に充てると、将来の1%分の利息(年間約1万円)を払わずに済みます。
一方、この100万円を全世界株式などに連動するインデックスファンド(投資信託)に投資したとしましょう。長期的に見ると、年5~6%程度のリターンが期待できるといわれています(年によって変動します)。
もし5%で運用できれば、1年間で5万円の利益が出ます(なお、この5%は税引き前の数字です。約20%課税される通常の口座ではなく、非課税のNISAを使う前提です)。
- 繰り上げ返済の効果:1%(1万円の利息負担軽減)
- 投資の効果:5%(5万円の利益)
単純に計算すると、投資で5%増やし、そこから1%のローン金利を払っても、差し引き毎年4%分(4万円)手元に多く残る計算です。現在の日本のように、住宅ローン金利が比較的低い(1~2%程度)環境下では、数学的な正解は「投資」となるのです。
ただし、注意点の一つとして「住宅ローン控除」があります。入居から一定期間は、年末のローン残高の0.7%程度が所得税などから差し引かれる仕組みです。繰り上げ返済で残高が減ると、この控除額も小さくなります。
控除期間中は実質的な金利が表面金利よりかなり低く(時にマイナスに)なるため、慌てて返済しないほうが得なケースもあります。ご自身のローンが控除期間中か、確認しておきましょう。
さらに、もう一つ見落としがちなのが「団体信用生命保険(団信)」です。多くの住宅ローンには、契約者に万が一のこと(死亡や高度障害など)があったとき、残りのローンをゼロにしてくれる保険がついています。繰り上げ返済で残高を減らすと、その分「肩代わりしてもらえる金額」も小さくなります。
つまり繰り上げ返済には、生命保険の保障を少しずつ減らす面もあるのです。手元の貯蓄や別途加入の生命保険とのバランスも見て判断していきましょう。
繰り上げ返済の最大のメリットは「ノーリスク」であること
「計算上は投資がお得なんだな」と思われたかもしれません。しかし、忘れてはいけないのが「リスク」の存在です。
期待リターン5%は、あくまで長期的な期待値です。年によってはマイナスになることもあります。
対して、繰り上げ返済で「金利分の利息が減る」効果は、変動しない確実なリターンです。金利1%のローンを繰り上げ返済するのは、「ノーリスクで1%の利回りが得られる金融商品」を買うのと同じです。
「投資で損をするかもしれないとハラハラするくらいなら、確実に借金を減らして安心したい」
「毎月の返済額が減る、または返済期間が短くなるという目に見える成果が欲しい」
人間はロボットではありませんから、こうした安心感や達成感は、計算式以上の価値を持つこともあります。「借金がある」ストレスから解放される費用と考えれば、繰り上げ返済も決して悪い選択ではありません。
夏のボーナス、結局どう使うのが一番いい?
では、今年の夏のボーナスはどうすべきでしょうか。以下のステップで状況をチェックしてみましょう。
1. まずは自分の住宅ローン金利を確認する
もし一昔前の固定金利などで住宅ローン金利が3%を超えているなら、「繰り上げ返済」が有力な選択肢です。ノーリスクで3%以上のリターンを得られる投資はそうそうありません(この場合は、ぜひ借り換えも検討しましょう)。逆に金利が1%程度なら、「投資」の優先度が高くなります。
なお、変動金利の場合、今後金利が上がれば返済負担も増え、繰り上げ返済の「お得度」も変わります。金利の動きが気になる方は意識しておきましょう。
2. 「手元の現金」が十分にあるか確認する
投資にせよ繰り上げ返済にせよ、手元の現金がギリギリでは危険です。病気や車の故障など急な出費に備え、「半年分程度の生活費」や子どもの教育費に充てる現金は必ず残した上で、余剰資金を使ってください。
また、繰り上げ返済に回したお金は基本的に引き出せません。投資(とくにNISA)なら必要なときに売って現金化できます。「お金を動かせる余地を残したい」という方は、判断材料として考慮に入れておきましょう。
3. 迷ったら「半分ずつ」というハイブリッド戦略もアリ
「投資がいいと分かっていても、やっぱり借金も減らしたい…」という方は、「ボーナスの半分を繰り上げ返済に、もう半分をNISAで投資に」と分けるのがおすすめです。どちらのメリットも得られ、精神的にもバランスの取れた選択になります。
一番納得できるボーナスの使い方を!
住宅ローンの返済も資産運用も、どちらも「資産状況を良くするための前向きな行動」です。どちらを選んでも、なんとなく無駄遣いするよりずっと素晴らしいお金の使い方であることは間違いありません。
大切なのは、「周りがやっているから」ではなく、数字の根拠と自分の心の声の両方に耳を傾けて決断することです。ぜひ今回の考え方を参考に、ご自身やご家族が一番納得できるボーナスの使い道を見つけていただければと思います。
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