先週の日銀利上げ決定や米国・イランの和平協議進展による原油価格低下によりドル円は一時円高に動きましたが、その後追加利上げや為替介入の先行きが見られず161円半ばまで戻しました。162円を超えるのか、また超えたタイミングで介入してくるのかに注目です。


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利上げ姿勢への傾斜でドル高に。162円を超えるか

 先週16日、日本銀行は市場の予想通り、0.25%の利上げを決定(政策金利1.0%程度)しましたが、植田和男総裁が入院のため代行した内田真一副総裁の記者会見で、利上げペースやターミナルレート(最終的な政策金利水準)への言及がなく、年内の追加利上げに関する方向性が不透明であったことから早期利上げ観測が後退しました。


 ドル円はわずかに円高に動きましたが、記者会見後はすぐに反発し、160円台半ばの円安に戻しました。


 一方、17日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場の予想通り金利据え置きの決定(政策金利3.50~3.75%)でしたが、金利見通しが3月時点の年内利下げ1回から利上げ1回見通しになったことから、これまでの利下げ姿勢からタカ派姿勢に転じたことが鮮明になったため、ドルは上昇しました。 


 米国とイランの和平協議進展で原油価格は下がりましたが、ドル円は米金融政策の利上げ姿勢への傾斜でドル高となっています。ドル円は、18日には、161円台に乗せ、一気に161円台後半まで円安が進みました。


 片山さつき財務相は週明けも円安けん制発言をしていますが、4月終わりの円安値160.70円近辺を上抜けても、そして2年前の162円手前の円安水準に迫っていても政府の介入が見送られていることから、市場は動じていないようです。


 22日、ドル円の円安が進み、161.90円台に乗せた後、片山財務相とベッセント米財務長官がオンライン協議を行ったとの報道を受け、ドル円は161.07円近辺の円高となりました。


 おそらく162円に近づいたことから急きょオンラインで為替について協議したのだろうと推測されますが、日本や米国からのレートチェックや実弾の為替介入が見られなかったことから、ドル円はすぐに161円台半ばに戻しています。


 ここからは162円を超えるかどうかに注目です。162円を越えると、160~165円のゾーンに入り、その後は5円刻みや10円刻みの大台は意識されるでしょうが、長期的には1985年のプラザ合意以降の局面では200円まで節目がないことから、当局も相当意識しているはずです。


 160円から162円手前まで介入が見送られたことから、162円を上抜けても介入は出ないだろうとの見方もありますが、日米財務相協議が行われたことから、介入警戒感は一段と高まっています。


 162円を上抜けたタイミングで介入してくるのかどうか注目です。ただ、4月終わりの介入金額(約12兆円)以上の規模でないと、円高に行ってもすぐに元の水準に戻される可能性がありそうです。


 日米協調介入も考えられますが、米国の株は高値を更新する水準であり、米長期金利も上昇しているとはいえ、安定していることから米国は協調介入には踏み込まないかもしれません。22日の日米財務相オンライン協議は、米国は介入を容認していることを市場に知らしめただけかもしれません。


ウォーシュ新議長の発信縮小で政策・金利見通しは不透明に

 ウォーシュ新議長の初舞台となる今回のFOMCで市場が驚いたのは、声明文が従来の分量の半分以下となったことです。市場では、将来的な利下げを示唆する文言が削除される可能性を予想していたのですが、声明文からは金融政策の方向性を示唆する「フォワードガイダンス」と呼ばれる文言は全て削除されました。


 ウォーシュ議長は記者会見で、声明文の変更について「フォワードガイダンスは現在の政策局面に適していないという点で一致した」と説明しています。


 対外発信の縮小は声明文の簡素化だけではないようです。今後は、FOMC後の記者会見、会合の3週間後に公表する議事要旨、そしてFOMC参加者による政策金利予想など、今後の米連邦準備制度理事会(FRB)改革の作業部会で見直し作業の対象になると説明しています。


 ウォーシュ議長は、安易に先行きを示せば「予測に縛られてしまう」懸念があり、柔軟な議論を阻害しかねないとの考えが根底にあるようです。しかし、市場にとっては、対外発信の縮小は政策変更の見通しをうまく織り込めなくなる恐れがあります。市場の不安が増すことによって、経済指標などに過度に反応する可能性があることには留意する必要がありそうです。


 ウォーシュ議長は、FOMC参加者による金利・経済見通しを「政策を遂行する上で有益でない」として自らの予測を提示しませんでした。その金利見通しについては、ウォーシュ議長を除く18人中9人が、年内利上げを見込んでいます。政策金利の見通し(中央値)は3.8%で、3月時点の3.4%見通し(年内1回の利下げ)から年内の利上げ1回の見通しとなっています。


 その内訳を見ると、FOMC18人のうち、9人は利上げですが、8人は据え置きであり、1人は利下げとなっています。前回3月見通しからの変化を見てみますと、利上げ予想(前回0→9人)、据え置き予想(前回7→8人)、利下げ予想(前回12→1人)となっています。


 この見通しの変化を見ると、年内利下げの可能性はほぼなくなり、年内利上げが参加者の約半数の予想となったことから、FRBはタカ派姿勢に傾いたと市場は受け止めドル高となりました。ただ、据え置き見通しも一人増えたという点にも留意する必要がありそうです。


 原油が下がり、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)で80ドル前後を維持できれば、ガソリンが下がり、物価が下がってくることが予想されます。物価の低下には数カ月はかかりそうですが、物価が下がってくればFOMC内での利上げの見方も年内に変わる可能性はあることには留意したいと思います。


 FOMC内での見方はまだ流動的で、年内利上げから年内据え置きに変わるというシナリオも留意していきたいと思います。利下げ見通しでなくても、利上げ見通しから据え置き見通しに変わっただけでもドル高材料剥落によってドル売りになる可能性があります。


 米国のガソリン平均価格は、米・イラン紛争が始まった2月末には1ガロン(約3.8リットル)当たり3ドル割れでした。

5月には一時4.5ドルを超えました(50%以上の急騰)が、現在は4ドル割れとなっています。


 原油価格の下落に伴い、ガソリンもまだ下落余地がありそうです。夏場の需要期が過ぎた後に、ガソリン価格が下落していけば、FRB内の見方も変わってくるかもしれません。


(ハッサク)

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