中国商務部が6月29日、デュアルユース(軍民両用)品目の対日輸出規制を目的とした「禁輸リスト」と「監視リスト」にそれぞれ20社を追加すると発表しました。レアアース関連に端を発する邦人拘束事件に続き、対中ビジネスリスクは顕在化しています。

中国側の狙いや日本が取るべき対策について考察します。


日本企業40社を「制裁リスト」に追加:中国の狙いは?の画像はこちら >>
日本企業40社を「制裁リスト」に追加:中国の狙いは?
この記事をYouTubeで視聴する

中国がデュアルユース対日輸出規制「禁輸」&「監視」リスト第2弾を「電撃発表」

 中国政府による日本への「制裁措置」が止まりません。


 6月29日、中国商務部が「輸出管理法」および「両用品目輸出管理条例」などに基づき、軍民両用(デュアルユース)品目の輸出の禁止対象となる企業・団体のリスト(禁輸リスト)と、軍民両用品の輸出に対する監視が強化される対象の企業・団体のリスト(監視リスト)を発表しました。両リストにはそれぞれ日本企業20社が名指しで掲載されています。


 今年2月24日にも、中国商務部が同じ法律・条令に基づき、「禁輸リスト」と「監視リスト」をそれぞれ20社発表していました。その詳細や何を禁止、制限しているのかに関しては、当時配信したレポートをご参照いただきたいですが、改めてその背景と内容を以下に記します。


▼あわせて読みたい

2026年2月26日: 中国が新たな対日禁輸措置を発動、その中身と影響は?


【禁輸リスト】

背景:「日本の軍事力強化に関与した」と見なされた20社


内容:
(1)輸出事業者はリストに掲載されている日本企業に両用品を輸出することを禁止
(2)海外の組織・個人も中国原産の両用品を当該企業へ移転または提供することを禁止
(3)現在進行中の関連する輸出活動は即時に停止


【監視リスト】

背景:軍民両用品の最終使用者・用途を確認できない20社


内容:
(1)輸出事業者が監視リスト掲載企業に両用品を輸出する場合、包括許可の申請、または登録申告方式による輸出証明書の取得は認められない
(2)輸出事業者が個別許可を申請する際、監視リスト掲載企業に対するリスク評価報告書を提出するとともに、申請した両用品が日本の軍事力向上に資するいかなる用途にも使われない旨について、書面による誓約を提出しなければならない
(3)商務部は、監視リスト掲載企業に対する両用品の輸出について、より厳格な最終使用者・用途の審査を実施。日本の「軍事ユーザー」「軍事用途」、ならびに日本の「軍事力」向上に資する一切の最終使用者・用途に関わる輸出は承認しない
(4)監視リストに掲載された事業体は、調査への協力義務を履行した場合、同リストからの削除を申請することが可能


リスト入りした企業40社一覧

 ここからは、6月29日に発表された「禁輸リスト」20社、「監視リスト」20社を具体的に見ていきましょう。


【禁輸リスト】20社
  • 防衛研究所
  • 防衛装備庁 陸上装備研究所
  • 防衛装備庁 艦艇装備研究所
  • 防衛装備庁 航空装備研究所
  • 日鋼特機株式会社
  • 日鋼YPK商事株式会社
  • 三菱電機ディフェンス&スペーステクノロジーズ株式会社
  • 三菱電機ソフトウエア株式会社
  • 三菱電機エンジニアリング株式会社
  • 三菱プレシジョン株式会社
  • エムエイチアイオーシャニクス株式会社
  • MHIさがみハイテック株式会社
  • 株式会社エムエイチアイロジテック
  • 光和興業株式会社
  • 菱重特殊車両サービス株式会社
  • MHIマリテック株式会社
  • 株式会社ケージーエム
  • 日本飛行機株式会社
  • 株式会社フォーチュニオ
  • 青木精密工業株式会社
  • 【監視リスト20社】
  • 株式会社三井E&S
  • 三井物産エアロスペース株式会社
  • Terra Drone 株式会社
  • 株式会社ACSL
  • 三菱原子力燃料株式会社
  • 日本原燃株式会社
  • 富士通ネットワークソリューションズ株式会社
  • 日立アドバンストシステムズ
  • コマツ
  • コマツNTC株式会社
  • 沖電気工業株式会社
  • 株式会社OKIコムエコーズ
  • OKIサーキットテクノロジー株式会社
  • OKIネクステック株式会社
  • 沖エンジニアリング株式会社
  • 株式会社YDKテクノロジーズ
  • 日本電磁測器株式会社
  • 豊和工業株式会社
  • 細谷火工株式会社
  • 藤倉航装株式会社
  •  禁輸リストと監視リストでは位置づけが異なります。「禁輸」に関しては、防衛装備系、防衛研究機関系の企業・団体をリストに掲載している一方、「監視」においては、半導体、電子部品、インフラ関連の企業が含まれています。


     また、中国自身が「軍民融合」を含めた国家戦略の観点から重視、推進している無人機、AI、原子力、先端素材といった分野に従事する日本企業に制裁の対象が拡大している点は重要だと思います。


     中国側が今回のリスト発表を含めた対日輸出規制で日本側の動きを警戒、けん制、抑止しているのはデュアルユース、すなわち軍民両用の品目であるという思惑を念頭に、中国側が制裁対象としてリストアップしている業界、企業を分析していく必要があります。


    中国側の真の狙いは?

     先週のレポートで扱った重電大手企業の日本人社員2名が東北部の大連市で拘束された事件を含め、最近、中国側の日本企業、およびその社員や事業への圧力が実質的に強化されてきています。


    ▼あわせて読みたい

    2026年6月25日: 重電大手の日本人社員が中国で拘束、対中ビジネスのリスクが一層顕在化


     中国で事業展開する企業、中国と輸出入を含めた取引をしている企業、中国に駐在員(およびその帯同家族)や出張者を抱えている企業、およびそんな日本企業に投資をしている国民を含めて、中国側の動きに対して不安や不信感を募らせ、強めるのも無理はない状況が続いていると思います。


     それでは、中国側はなぜ今このタイミングで、禁輸&監視リスト第2弾の発表を含めた「対日制裁」と言える措置を強化しているのか。この問題を捉える上で私が重要だと考えるポイントを3点取り上げます。


     一つ目は、習近平政権として、高市政権の昨年11月の国会答弁における、台湾有事が起これば「存立危機事態」になり得るという発言への反発が続いているということです。中国は台湾問題を絶対に妥協できない「核心的利益」と位置付けており、中国側としても、高市早苗総理が関連発言を「撤回」しない限り、今の強度と烈度による対日制裁を続ける姿勢を堅持しています。


     二つ目は、中国側の戦術が「官民分断」であるという点です。中国側が直接的に制裁しているのは、禁輸&監視リストに掲載された企業であったり、レアアース関連品目を中国から輸入・調達できない企業であったりします。


     これらの企業には、「高市政権が台湾問題で中国側の立場や利益を踏みにじったから制裁措置を取っている。原因は自国政府にある」と思わせることで、日本の政府と企業の間にくさびを打ち込み、結果として、高市政権の政策や立場に変更を迫るという思惑が作用していると見るべきです。


     三つ目に、中国側の真の狙い・目的が、日本の防衛力強化をそぐことにあるという点です。高市政権として、防衛費の増加、「防衛装備移転三原則」および運用指針の改正など日本の防衛力を強固にする政策を掲げ、防衛産業を振興させようとしているのは周知のとおりです。


     中国側としては、自国の安全保障政策・環境、および歴史的経緯、政治的事情を踏まえた国内プロパガンダの観点から、日本側の動きを警戒、けん制、抑止しようとしているのです。だからこそ、直接的な防衛産業・企業や、民生用だけでなく、軍事用にも転用が可能なデュアルユース品目の対日規制を強化しようとしているのです。


     私自身は、今回の禁輸&監視リスト40社の発表はまだまだ序の口に過ぎず、引き続き、対日制裁措置が複合的に取られると予測しています。対中ビジネスリスクが顕在化する中、中国とどう付き合っていくべきか。日本の政府、企業、個人も自分事として考え、向き合っていく必要があるでしょう。


    (加藤 嘉一)

    編集部おすすめ