7月の米国株市場は復調傾向にあります。この底堅さを支えるのが二つの「循環物色」です。

ただ、積極的な上値追いは期待しづらく、当面は様子見ムードが続く見込みです。数週間後に本格化する企業決算の注目点とともに、相場急変に備える「押し目買いのセオリー」と「分散投資の候補となる業種・セクター」などについて整理します。


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2026年後半の日本株戦略:AI半導体の押し目買いと割安株妙味。「循環物色」を考えよう(土信田雅之)
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二つの「循環物色」が支える今週の米国株市場

「月またぎ」で7月相場入りを迎えた今週の米国株市場ですが、これまでのところ、全体的に復調傾向を示しているものの、積極的に上値を追うような展開ではなく、「方向感を探りながら戻りをうかがっている」印象となっています。


<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年7月1日時点)
2026年後半の日本株戦略:AI半導体の押し目買いと割安株妙味。「循環物色」を考えよう(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 図1は2025年末を100とした米主要株価指数のパフォーマンス比較のグラフです。


 株価の上げ下げが荒くなっているSOX指数(半導体関連銘柄で構成される株価指数)に対し、ダウ工業株30種平均やS&P500種指数、ナスダック総合指数、そして中小型銘柄で構成されるラッセル2000については、緩やかに下値が切り上がっている様子がうかがえます。


 こうした相場の堅調さの背景にあるものとして、二つの「循環物色」が挙げられます。


グロース株からバリュー株への資金シフト

 一つ目の循環物色は、「AI・半導体関連銘柄をはじめとする成長株(グロース株)から、割安株(バリュー株)への資金シフト」です。


 ここ最近の中東情勢に対する楽観的なムードを受けて原油価格が下落し、インフレ進行や供給網(サプライチェーン)への不安が後退したことで、これまで高インフレ・高金利の環境下で低調な値動きを余儀なくされていたバリュー銘柄に買いが向かう動きが出ています。


 このバリュー株優位の動きは、S&P500種指数の「時価総額加重平均型」と「均等加重平均型」の値動きを比較しても感じ取れます。


<図2>米S&P500と均等加重平均S&P500の推移の値動き比較(2025年末を100)(2026年7月1日時点)
2026年後半の日本株戦略:AI半導体の押し目買いと割安株妙味。「循環物色」を考えよう(土信田雅之)
出所:Bloombergデータを基に作成

 一般的に、S&P500といえば時価総額加重平均を指し、浮動株調整後の時価総額が大きい銘柄ほど組入比率が高く、組入上位銘柄のマイクロソフト(MSFT)やアップル(AAPL)、エヌビディア(NVDA)といった超大型株の動きが指数に反映されます。


 その一方、均等加重平均のS&P500は、時価総額に関係なく、500銘柄全てを「一律 0.2%ずつ」均等に組み入れて計算したもので、時価総額が比較的小さい銘柄のパフォーマンスが指数に反映されやすいという特徴があります。


 あらためて図2を見ると、ここ2週間ほどの期間は均等加重平均型のS&P500が優位なパフォーマンスを示しており、物色の裾野が主要ハイテク株以外の広範なバリュー株、あるいは中小型株にまで広がり、相場を支えている様子が感じ取れます。


 もっとも、日米の10年債利回りなど、金利はあまり下がっていません。


 そのため、株式市場が許容できる株価収益率(PER)も切り上がっているわけではなく、株価がある程度上昇すると割高感が意識されやすい状況が継続していることが、積極的に上値を追えない理由の一つになっていると思われます。


 とはいえ、目先のインフレ警戒が薄れたこと自体が、割安に放置されていた銘柄の見直し買いを支援していると思われます。


AI・半導体関連銘柄内での循環物色

 二つ目は、「AI・半導体関連銘柄内での循環物色」です。


 ひと口にAI・半導体関連銘柄といっても、その範囲はAI相場が進展していく中で拡大してきました。具体的には、AI投資や開発を行っているハイパースケーラーをはじめ、AI投資の実需の恩恵を受ける半導体やメモリ、データセンター周辺銘柄(電線株)、さらに製品製造に欠かせない電子部品や素材を扱う銘柄といった具合に分けられます。


 これらの銘柄が相場の主役として入れ替わったり、割高感のある銘柄が売られる一方で、出遅れている関連銘柄が発掘されて買われたり、材料のあった銘柄に資金が向かうなどの動きが繰り返される中で株価水準が維持されている格好になっています。


 ちなみに、国内株市場では、基本はバリュー銘柄でありながら、半導体基板の中で使われる絶縁体(樹脂フィルム)で高シェアというAI・半導体関連銘柄の性格を持つ味の素の株価が最高値を更新するといった動きも出てきています。


上値を追うのはもうしばらく先か?試される「期待と現実」

 このように、株式市場での物色意欲は継続していると思われますが、市場全体が本格的に上値を追う展開になるのは、もうしばらく先になりそうです。


 今週から7月相場に入り、月の半ば以降は日米企業の決算発表が本格化します。ただ、これまでのAI・半導体関連銘柄は、「旺盛なAI需要の高まりと継続」を先取りする格好で株価が上昇してきた面があるため、さらなる株価の上昇には「先行した期待に現実がついていけるか?」を確認する必要があります。


 市場が期待しているスピード感で企業業績が成長していることが確認できれば、株式市場の水準が切り上がっていくことが見込まれますが、最近ではAI投資のコスト増や、投資資金のファイナンスなどが懸念され始めているだけに、こうした懸念点が目立つ決算が増えてしまった場合には、調整局面入りが強く意識されることになります。


目先の投資戦略は「押し目買い」と「分散投資」が有効か?

 そのため、決算動向が見えてくるまでは、足元で見せている循環物色の動向が続くことになりそうです。そんな中での投資戦略として、AI・半導体関連の「押し目買い」、および他セクターへの「分散投資」が選択肢として浮上してきます。


 前者の押し目買いとは、株価が下落したタイミングを狙って買いを入れることですが、実際には、下落している最中で買うのではなく、「下げ止まりと、トレンドの継続を確認してから」行うのがセオリーになります。


 トレンドの継続を確認する方法については、テクニカル分析の視点が欠かせませんが、主なポイントとしては、「移動平均線(25日、50日、200日)が株価のサポートとして機能する」「直近の高値から10%押しまでの範囲内で下げ止まる」「MACDの方向転換」「直近の高値どうしを結んだ上値ラインを超えることができるか」などが挙げられ、S&P500の日足チャートでは図3のようになります。


<図3>米S&P500(日足)とMACDの動き
2026年後半の日本株戦略:AI半導体の押し目買いと割安株妙味。「循環物色」を考えよう(土信田雅之)
出所:MARKETSPEED II

 このほか、AI・半導体銘柄については、AI需要の強さや投資余力など、全体のムードに影響を及ぼす要素の他に、競争の「勝ち組」を選別する段階に移行することが想定されるため、個別銘柄を押し目買いするのであれば、「競合が多い分野か?」「代替不可能な技術などの強みを持っているか?」などの競争優位性の視点を持って、銘柄を選定することがポイントになると思われます。


 また、足元で良好な需給環境にある、あるいは上昇が見込まれる「非AI・半導体セクター」への分散投資については、足元の米国株市場の動きを見ると、以下の業種やセクターへの買いが入り始めている印象があります。


【インフラ・防衛セクター】
 地政学リスクの構造的な変化や各国の予算拡大を背景に、防衛産業や老朽化したインフラの再整備に関連する銘柄は、景気動向に左右されにくいディフェンシブな成長セクターとして資金が流入しやすくなっています。


【農業・コモディティ関連】
 気候変動や人口動態を背景に、中長期での食料需要や農業効率化(スマート農業等)への投資は堅調です。原油価格が落ち着いた足元だからこそ、インプットコストが下がった農業関連株には見直し買いの余地があります。


【金融・高配当バリュー株】
 日米の金利が高止まりする中、利回りメリットを享受できる銀行株や、インフレ耐性を持つ高配当な伝統的バリュー株は、グロース株が調整した際の強力な資金の逃避先(受け皿)となります。


 現在の相場環境は、間もなく本格化する決算シーズンを前にした様子見の状況ともいえます。


 日本株については、来週末10日(金)に、国内株価指数ミニ先物およびオプション取引のSQ日が控えているため、日経平均株価が大きく動く展開も予想できますが、日米ともに焦って高値を追うのではなく、二つの循環物色の波を冷静に観察しながら、AI関連の本命銘柄が調整したところを拾う準備をしつつ、ポートフォリオの一部を底堅いバリュー株や防衛・インフラといった代替セクターに振り分けるなど、柔軟な対応が年後半の好パフォーマンスのカギになりそうです。


(土信田 雅之)

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