製紙中堅の北越コーポレーション<3865>は2030年3月期を最終年とする4年間の中期経営計画で、M&Aや新規事業などの戦略投資に500億円を充て、事業ポートフォリオ(事業構成)の転換を加速する方針を示した。
M&Aでは、工業用紙や特殊加工品などの機能材分野、紙器や液体容器などの紙加工分野を中心に、国内と北米で案件の具体化を目指す。
紙・パルプ業界では国内紙需要の縮小や原材料高などを背景に、業界最大手の王子ホールディングス<3861>や業界2位の日本製紙<3863>が、海外企業の買収に力を入れるなど、事業ポートフォリオの見直しが進んでいる。
北越コーポレーションにとって、M&Aを通じた新たな収益の柱づくりは、業界内で競争力を維持するための重要な取り組みとなる。
機能材、紙加工に照準
北越コーポレーションは2026年5月に、2027年3月期から2030年3月期までの中期経営計画を策定した。
この中で「将来の中核事業を育成するため、新規事業の開拓や輸出拡大を進め、事業ポートフォリオの転換を加速し、国内外でM&Aや新規事業の検討を積極的に進める」との方針を打ち出した。
この方針の実現に向け、4年間で1500億円を投資する計画で、このうちM&Aや新規事業には、戦略投資として500億円の枠を設定した。
M&Aでは、機能材分野や紙加工分野などを中心に、買収後すぐに売上高や利益への貢献が見込まれる案件を対象とする。
重点地域は国内と北米で、M&Aによって新規事業を取り込み、収益基盤の拡大につなげる。
これにより、新たな収益の柱を構築し、成長分野を取り込んだ事業ポートフォリオへの転換を進める。
こうした取り組みに加え、「紙板紙の価格改定」「操業・コスト改善」「既存事業販売強化」も進め、2030年3月期に売上高3500億円(2026年3月期比21.6%増)、営業利益240億円(同3.18倍)を見込む。
このうち、M&Aによる新事業の取り込みなどで、営業利益240億円のうち20億円分の寄与を見込む。
外部成長を具体化する転機に
北越コーポレーションの近年のM&Aは、買収よりも事業整理や資本関係の見直しが中心だった。
2024年3月には、中国で白板紙を製造、販売する江門星輝造紙有限公司を傘下に持つ星輝投資控股有限公司の株式90%を譲渡し、中国白板紙事業を連結対象から外した。
2026年3月には、大王製紙<3880>との戦略的業務提携を深化させるため、資本関係の見直しを進めた。
北越コーポレーションによる大王製紙株の議決権所有割合を24.83%から19.70%に引き下げる一方、大王製紙による北越コーポレーション株の議決権割合を1.35%から17.59%に引き上げ、相互の議決権割合をいずれも20%未満とした。
主な買収案件としては、2012年の鉛蓄電池用セパレーターや空気清浄用フィルターを製造、販売するフランスのFINANCIERE BERNARD DUMAS S.A.S.の子会社化と、2015年の紙・パルプを製造するカナダのAlpac Forest Products Inc.と販売会社であるAlpac Pulp Sales Inc.の子会社化までさかのぼる。
今回の中期経営計画で掲げた戦略投資500億円は、外部成長を改めて具体化する転機となりそうだ。
業界で進む事業ポートフォリオの見直し
帝国データバンクが2026年3月に公表した「紙・パルプ業界の動向と展望」によると、デジタル化やペーパーレス化の進行、人口減少を背景に、紙媒体の需要が縮小傾向にある。
EC(電子商取引)の拡大を背景に、包装分野や衛生用紙などの需要は底堅いものの、新聞用紙や印刷・情報用紙の需要減少が続いており、生産設備の統廃合や業界再編が進んでいる。
また原材料やエネルギーコストの高騰、物流費の上昇、人手不足、為替変動なども業界の収益を圧迫する構造的な負担となる。
こうした中、各社は収益構造の多角化に向け、海外展開やバイオマス関連事業、再生可能エネルギー分野への進出を加速し、事業ポートフォリオの見直しを進めている。
王子HD、日本製紙にも動き
同業界では、王子ホールディングス(HD)<3861>が、木質バイオマスビジネスの中核化に向け、森林資源を活用した事業ポートフォリオの転換を進めている。
同社は2025年に、製薬業界向け微結晶セルロースを製造、販売するインドのChemfield Celluloseを買収し、2026年1月には、溶解パルプやバイオエタノールの製造・販売事業を手がけるオーストリアのAustroCel Halleinを子会社化した。
他方、日本製紙<3863>は森林・木材事業の強化に動いている。
同社は2026年2月、100%子会社のNippon Paper Resources Australiaを通じ、ニュージーランドの針葉樹チップ生産輸出会社Marusumi Whangarei Companyの全株式を、オーストラリアのPentarch Forestryと共同取得することに合意した。
日本製紙の出資比率は70%で、針葉樹チップの需要増加を見据え、森林資源が豊富なニュージーランドで生産、輸出事業に参入する。
北越コーポレーションは紙・パルプ業界について「国内紙需要の減少が続くほか、原材料費や物流費の高騰もあり、厳しい事業環境が続く」とみる。
このため2027年3月期の売上高は3050億円(前年度比6.0%増)と増加に転じるものの、営業利益は30億円(同60.2%減)と2期連続の大幅減少が避けられない見通しだ。
2026年3月期の売上高構成比は、紙パルプ事業が90.8%、パッケージング・紙加工事業が6.1%、その他が3.1%だった。
紙パルプ事業が売上高の90%超を占める中、国内紙需要の縮小を前提にした事業構造の転換は待ったなしの状況にある。
北越コーポレーションの500億円の戦略投資は、海外展開を進める大手各社の動向をにらみつつ、成長分野を取り込むための有力な手段となりそうだ。
文:M&A Online記者 松本亮一
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