今年の日本株相場をけん引してきた半導体大手キオクシアホールディングスの株価下落が加速しています。7月17日には16.1%安となり、6月22日に付けた高値の半分以下となりました。

この急激な下げにはどのような背景があるのでしょうか。今後の展望も交えて、楽天証券経済研究所の今中能夫チーフアナリストが解説します。


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なぜキオクシアは半値になったのか?暴落の背景と復活シナリオ
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「1カ月で半値以下」になったワケ

トウシル編集部(以下、トウシル):キオクシアホールディングス(285A)の株価が大きく下落している主な要因を教えてください。


楽天証券経済研究所・今中能夫チーフアナリスト(以下、今中):直接の引き金は、韓国のSKハイニックスが発表した大型設備投資です。同社は韓国清州市でのNAND型フラッシュメモリの工場建設に対して総額80兆ウォン(8.7兆円)規模の設備投資を行うと7月2日に発表しました。2027年に着工し、2029年前半の稼働を目指しています。


 キオクシアHDの今期設備投資計画が4,500億円程度ですので、1年あたりに直すとその規模は単純計算で約9~10倍です。これはマーケットにとって完全に盲点でした。現在、半導体メモリ大手各社はAI半導体に不可欠なHBM(広帯域メモリ)とAIデータセンターでの需要が急増している高性能汎用DRAMの増産に注力しており、NANDへの投資は後回しになると思われていたため、今回の発表は衝撃でした。


 このSKハイニックスによる積極的な投資計画が、NAND型フラッシュメモリの需給関係を悪化させるのではないかという懸念を呼び、株価急落につながりました。


 また、キオクシアHDは年初から株価が10倍近くになっていただけに、利益確定のための調整が入りやすかった面もあります。加えて、信用取引が活発な銘柄であることも影響しています。


 一度下がり始めると、追証回避のための売りが売りを呼ぶ「総崩れ」の状態になり、東京エレクトロン(8035)やレーザーテック(6920)といった他の半導体製造装置メーカーも連れ安となりました。


「特許侵害370億円」のインパクト

トウシル:7月16日、キオクシアHDが米企業の特許を侵害しているとして、米地裁で約370億円の賠償を命じる評決が出ました。会社側は争う姿勢ですが、投資家が警戒すべき実質的なリスクはありますか?


今中:この影響はほとんどないと考えています。キオクシアHDの現在の利益水準からすれば、仮に支払うことになったとしても、財務へのインパクトは限定的です。投資家が目を向けるべきは、訴訟よりも「NANDの需給バランス」だと私は考えています。


 現在、AIデータセンター向けでは、従来とは比較にならないほど高性能・大容量な記録媒体(SSD)が求められています。この実需がキオクシアHDの業績を押し上げてきましたが、SKハイニックスの巨額投資がこの需給を崩すのではないかという懸念が、今の株価形成の主因となっています。


「売られ過ぎ」なのか

トウシル:この1カ月でキオクシアHDの株価は半値以下になりました。投資家は、この下げ局面をどう捉えるべきでしょうか?


今中:率直に言って、現状は「突っ込み過ぎ(過度な株価下落)」という印象です。信用取引による下げ圧力が強まり、ファンダメンタルズを無視した売りが先行していますが、信用買い残が解消されれば、極端な割安感が意識されて買い需要が戻ると思います。


 半導体セクター全体のファンダメンタルズは依然として極めて強固です。先日のASMLホールディング(ASML)やTSMC(タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング:TSM)の決算を見ても、AIデータセンター向けの設備投資需要は、市場の予想以上に力強い。AIエージェントの普及はまだ始まったばかりであり、今後数年間はこの高い需要が続くでしょう。


 私の予想では、キオクシアHDの2027年3月期の予想株価収益率(PER)は6.2倍、来期にはさらに低い水準まで低下する見込みです。SKハイニックスの脅威はあるにせよ、当面はNANDの価格は高止まりし、高い利益率を享受できる状況は続くでしょう。

今の株価水準は、実力以上に売られすぎているというのが私の見方です。


キオクシアHD「復活」のシナリオ

トウシル:キオクシアHD株の今後を占う上で、どのようなポイントに注目すべきでしょうか?


今中:最大の注目点は、7月31日に予定されているキオクシアHDの決算発表です。ここで会社側がSKハイニックスの動きに対し、どのような対応方針を示すのか。設備投資を積み増すのか、あるいは現状維持なのか。この経営判断が今後の株価を左右する最大の焦点となります。


 決算発表で会社側から具体的な方針が示されれば、反発する余地は十分にあると考えています。荒れる相場ですが、今は冷静に「実需の強さ」と「会社の対応」を見極めるべき局面です。


トウシル:荒れる相場だからこそ、冷静な分析と視点が不可欠ですね。今中さん、本日は貴重なお話をありがとうございました。


(呉 太淳)

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