7月17日(金)、日経平均株価の急落は市場に大きな衝撃を与えました。週明けには反発したものの先行き不透明な状況が続く中、不安を抱いている個人投資家も多いのではないでしょうか。

そこで、株価急落の原因と今後の見通し、長期で生き残るための戦略について、楽天証券経済研究所の上源悠詞ポートフォリオ・ストラテジストに話を聞きます。


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日経平均急落…相場の現状は?

トウシル編集部(以下、トウシル):先週金曜日の日経平均株価の大幅下落、そして週明け以降の不安定な相場について、まずは現状をどう見ていますか?


楽天証券経済研究所・上源悠詞ポートフォリオ・ストラテジスト(以下、上源):もともと市場では「AIブームはバブルではないか」という警戒感がくすぶっていました。そうした米ハイパースケーラーのAIへの過剰投資が懸念される中で、中国のAI企業が高性能なモデルを発表したことが引き金となったと考えられます。


 また、これから本格的な決算シーズンを迎えます。これまでは株価が非常に速いスピードで上昇してきたため、投資家のあいだでは「何かをきっかけに利益を確定したい」という心理が強く働いていたと考えられます。こうした要因が重なったことで、AI・半導体関連株が全面安となり、日経平均やハイテク銘柄が大きく下落した、というのが私の分析です。


トウシル:相場は調整の機会を探っていたということですね。では、今後はどのような展開を予想していますか?


上源:今後は月末の金融政策決定会合や、来月頭の米国の重要な経済指標発表など、イベントが目白押しです。さらに8月に入ると「夏枯れ相場」と呼ばれる時期に差し掛かります。薄商いゆえ、価格変動が大きくなりやすいタイミングです。


 投資家心理が慎重に傾いている今、何らかのイベントが発生すると株価は上下に振れしやすいでしょう。個人的には、もう少しボラティリティ(価格変動幅)が高い局面が続いていくのではないかとみています。


急落相場で個人投資家に明暗

トウシル:急落相場では、保有銘柄を投げ売ったり積み立てを中断したりと市場から退場してしまう投資家がいる一方、いまがチャンスとばかりに買い増す投資家も増えるイメージがあります。こうした「退場する投資家」と「生き残っていく投資家」には、どのような違いがあるのでしょうか?


上源:結論から言うと、両者の違いは「自身のポートフォリオにおけるリターンの振れ幅(リスク)を、あらかじめイメージできているかどうか」にあると考えています。


 普段、リスクという言葉を聞くと「危険」というネガティブな意味で捉えがちですが、資産運用におけるリスクとは「リターンの振れ幅を数値化した尺度」を指します。今回の下落で焦って行動してしまった人は、自身の資産がどの程度まで下落し得るのかという「振れ幅」を想定できていない場合が多いのです。


急落相場を生き残るための戦略

トウシル:では、個人投資家が急落相場を生き残るためには、どのような準備が必要でしょうか。


上源:皆さんが普段投資を検討する際に見るチャートは、多くの場合、右肩上がりの上昇を描いたものが多いと思います。しかし、重要なのは「ドローダウン(下落率)」の水準です。


 過去の長期チャートを見ると、実は投資期間の初期や中盤には、下落局面が隠れていることがよくあります。自分が投資している株式や投資信託が、過去にどれくらいの下落を経験したことがあるのかを確認しておくことは、非常に重要なリスク管理です。


 特にAI・半導体関連のようなセクターは、株価の上昇スピードが速い一方、下落スピードも速い。だからこそ、普段からドローダウンを意識したリスク管理ができていると、こうした相場局面で差が出ます。


 投資信託であれば、ファンド詳細ページなどでリスク・リターンの数値を確認することができます。数字を見るのは少し手間かもしれませんが、投資する前に一目確認するだけで、下落相場に対する心の準備は大きく変わるはずです。


下落相場をチャンスに変える具体的な投資手法

トウシル:こうした相場環境で、個人投資家がとるべき具体的な投資戦略を教えてください。


上源:まず大切なのは「分散」です。今回、AI・半導体関連株が急落した一方、S&P500種指数や東証株価指数(TOPIX)といった指数は、実はそれほど大きく下げていません。


【図表1】株式インデックスファンドのパフォーマンス比較
キオクシアショックや日経平均株価の急落で「投資を中断した人」が知らない残念な事実
※2026年6月30日を100として指数化※2026年6月30日~2026年7月22日の基準価額データを用いて作成出典:楽天証券経済研究所作成

 こうした特定のテーマが高騰しているタイミングでは、たとえ短期的な視点であったとしても、高配当株や銀行株など、AI・半導体とは異なる値動きをする資産を組み合わせておくことが、リスクを抑える鍵となります。


急落相場で光る「積立投資」のメリット

上源:そして、銘柄の分散と同じかそれ以上に重要なのが「時間分散」です。


 十分に分散したうえで、積立投資をしている人は、ぜひそのまま継続してください。むしろ、今のこの下落局面こそが「口数を多く買えるチャンス」と考えることもできます。


 反対に、焦って積み立てをやめてしまうことは、将来的な資産増加の機会を自ら放棄することになりかねません。余裕資金の範囲内で行うことが大前提ですが、今の相場を押し目買いの好機と捉え、あらかじめ決めた規律に従って、下落したタイミングで多めに投資する戦略を取り入れるのも一つの手でしょう。


※関連記事: なぜ「ドルコスト平均法」が選ばれるのか?「バリュー平均法」との比較で考える積立投資の「真価」


 過去のデータで検証した際も、下落局面で焦って積み立てを中断し、そのまま再開しなかった投資家は、年率リターンが著しく低下するという結果が出ています。


【図表2-1】急落相場時の対応別パフォーマンス表
キオクシアショックや日経平均株価の急落で「投資を中断した人」が知らない残念な事実
※上図は過去のデータや一定の条件に基づいた試算結果であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではありません。※試算の詳細な条件は以下をご参照ください。 出所:「相場急落時の積立中止と売却、どのくらい将来資産と年率リターンにダメージが出る?」

 


【図表2-2】急落相場時の対応別パフォーマンスグラフ
キオクシアショックや日経平均株価の急落で「投資を中断した人」が知らない残念な事実
※上図は過去のデータや一定の条件に基づいた試算結果であり、将来の投資成果を示唆・保証するものではありません。※試算の詳細な条件は以下をご参照ください。 出所:「相場急落時の積立中止と売却、どのくらい将来資産と年率リターンにダメージが出る?」

 今回の急落で銘柄を投げ売ってしまった人や、積立投資を中断した人は、そもそも投資金額が大きすぎたのか、あるいはリスクを取りすぎていたのか……自身の投資計画を見直す絶好の機会です。


 ぜひこの機会に、自身の許容できる「リターンの振れ幅」と向き合い、無理のない投資を続けていきましょう。


(トウシル編集チーム)

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