米国株は史上最高値圏で推移しているが、恐怖指数と呼ばれる「VIX」は10ポイント台と落ち着いた水準にある。しかし、新恐怖指数「VIXEQ」をみると、個別企業の株価変動への警戒は高まりつつあることが分かる。

VIXEQから読み取れるAI・半導体市場の変化を整理し、安定した事業基盤を持つインフラ関連の高配当株を5銘柄紹介する。


AI時代を支えるインフラ関連の高配当株5選!「新恐怖指数」で...の画像はこちら >>

米国株は今後どれだけ動くのか?新恐怖指数「VIXEQ」

 米国株は史上最高値圏で推移していますが、「恐怖指数」と呼ばれるVIXは10ポイント台と落ち着いた水準にあり、市場全体を見る限りでは楽観ムードが強いようにみえます。


 ところが、その裏側では少し気になる変化も起きています。最近、米国市場で注目され始めた「VIXEQ(ビックスエクイティ)」という指数です。市場全体ではなく、一つ一つの企業に目を向けると、投資家は以前より大きな値動きを警戒していることが分かります。


 株式市場では、指数全体の動きを見るだけでは分からない変化が起き始めています。今回は、VIXEQが映し出す市場の変化を読み解きながら、日本株で注目したい投資テーマについて考えてみます。


 株式市場では、VIXを参考にしている投資家が多く存在します。VIXは多くの機関投資家が指標とする「S&P500種指数」のオプション価格から算出される指数で、市場全体が今後どの程度動くと予想されているかを示します。そのため、「恐怖指数」とも呼ばれ、市場心理を測る代表的な指標として知られています。


 VIXには一つ特徴があります。それは、あくまでも市場全体の変動を映す指数であり、個別企業の動きまでは分からないという点です。市場全体が落ち着いて見えても、その裏では一部の銘柄だけが大きく動いていることもあります。


 そこで注目されているのがVIXEQです。これはS&P500を構成する個別企業の予想変動率を集計した指数で、市場全体ではなく、個別企業の株価変動を市場がどのように織り込んでいるかを示します。


 私は、この違いを「森」と「木」に例えると分かりやすいと考えています。VIXは森全体の様子を眺める指数、VIXEQは一本一本の木がどの程度揺れているのかを見る指数です。森全体は穏やかでも、一部の木だけが強風にあおられていることがあります。現在の米国市場は、まさにそのような状態に近づいているのです。


VIXEQ上昇の背景に、AI・半導体関連株の成長期待

 VIXEQが上昇している背景には、AI・半導体関連株への資金集中があります。生成AIの普及期待を背景に、NVIDIA(NVDA)やBroadcom(AVGO)、AMD(AMD)などの株価は大きく上昇し、市場全体をけん引してきました。


 もっとも、期待が高まれば高まるほど、株価は小さなニュースにも敏感に反応するようになります。決算が市場予想を少し上回っただけでは評価されず、逆に期待をわずかでも下回れば株価が急落する場面も多く見られました。


 これはAI・半導体関連企業に弱気という意味ではなく、高い成長期待が織り込まれているからこそ、市場は将来の株価変動も大きく見込んでいると考えられます。


 実際、市場全体を示すVIXは比較的低い水準で推移している一方、VIXEQは上昇傾向が続いています。市場全体は落ち着いて見えても、個別企業を見ると期待と警戒が同時に高まっていることが読み取れます。


日本株も将来の株価変動を織り込んでいる

 こうした動きは、日本株市場にも共通する部分があります。日本には日経平均VIというボラティリティ指数がありますが、2023年以降を振り返ると、日経平均株価が上昇する局面でも比較的高い水準で推移する場面が目立ちます。


 一般的には、株価が上昇すれば投資家心理は改善し、ボラティリティ指数は低下しやすくなります。しかし、今回は、株価の上昇とボラティリティの高止まりが同時に見られました。


 背景には、日本市場ならではの構造があります。日経平均株価は価格平均型指数のため、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)、ソフトバンクグループ(9984)など値がさ株の影響を受けやすい特徴があります。また、海外投資家による先物売買の影響も大きいことから、市場全体の変動率が高まりやすい環境にあります。


 米国ではVIXEQ、日本では日経平均VIと対象は異なりますが、どちらもオプション市場が将来の株価変動を比較的高めに織り込んでいるという点では共通しています。


AI・半導体需要を支えるインフラ投資に注目

 もちろん、AI・半導体関連株への期待がすぐに終わるとは考えていません。生成AIの普及はまだ始まったばかりで、半導体やデータセンターへの投資も中長期的に続く可能性が高いとみています。


 そして、AI・半導体への投資が拡大すれば、その恩恵は半導体メーカーだけではなく、AI・半導体を支える設備やインフラを担う企業へも広がっていきます。


 例えば、データセンターを建設するには受変電設備や空調設備が必要です。膨大な電力を供給するためには送配電網の整備も欠かせません。さらに、半導体工場の新設、自動化設備、物流施設など、関連する投資分野は幅広く存在します。


 日本政府が閣議決定した「骨太の方針2026」でも、AI・半導体への投資促進に加え、GX、DX、国土強靱化(きょうじんか)、インフラ更新などが重点施策として掲げられています。AI・半導体への投資が広がることで、その裾野に位置するインフラ関連企業にも需要が波及していくことが期待されます。


 さらに、こうした企業の多くは成熟した事業基盤を持ち、高配当や増配、自社株買いなど株主還元にも積極的です。成長投資を進めながら株主還元も強化している企業が多い点は、中長期投資の観点からも注目したいポイントです。


【配当利回り2.4%以上】AI・半導体投資の恩恵に期待したい日本株5選

 そこで今回は、AI・半導体時代の設備投資拡大という視点から、中長期で注目したいインフラ関連の高配当株を5銘柄紹介します。予想配当利回りが、7月17日時点のプライム市場の平均予想配当利回り(2.4%)を上回る銘柄を選びました。


銘柄名 証券コード 株価(円) 予想配当利回り(%) 特色 ライト工業 1926 3,860 3.8 防災・減災需要を取り込む国土強靱化関連株 三機工業 1961 2,438 2.7 AI時代のデータセンター需要を取り込む設備工事大手 栗本鐵工所 5602 1,487 4.0 上下水道更新が追い風 老朽化対策の本命企業 横河ブリッジHD 5911 2,936 4.4 インフラ更新と国土強靱化で追い風続く橋梁(きょうりょう)大手 ダイトロン 7609 3,540 2.7 AI・半導体投資の裾野拡大を追い風に成長期待 ※株価は7月24日終値。配当利回りは、2027年3月期(ダイトロンは2026年12月期)の配当予想を用いて計算。三機工業は2026年5月1日に普通株式1株を3株に、ダイトロンは2026年1月1日に普通株式1株を2株に、それぞれ株式分割を実施。いずれも分割後の数値で計算。社名のHDはホールディングスの略。

ライト工業(1926)

 法面工事や地盤改良工事など特殊土木工事を得意とする企業です。豪雨や地震など自然災害が相次ぐ日本では、防災・減災関連銘柄として継続的な需要が期待されています。


 国土強靱化政策では道路や河川だけでなく、土砂災害対策や斜面補強なども重要なテーマとなっています。

景気循環だけでなく、防災という社会的課題に支えられた需要であることから、中長期で安定した受注が見込まれます。


 同社は利益率の高さにも定評があり、財務体質も堅実です。近年は株主還元にも積極的で、安定配当を継続しています。AI・半導体関連のような華やかさはありませんが、日本が抱える社会課題の解決という視点で見ると、中長期で安定した成長が期待できる企業の一つです。


三機工業(1961)

 空調設備や電気設備、給排水設備などを手掛ける総合設備工事会社です。近年はデータセンターや半導体工場向けの設備工事が成長をけん引しており、AI・半導体関連投資の拡大による恩恵が期待されています。


 生成AIの普及には、高性能GPUを稼働させる大規模なデータセンターが欠かせません。しかし、データセンターは建物を造るだけでは完成しません。大量の熱を効率よく処理する空調設備や、安定した電力を供給する受変電設備、高度な制御システムなどが必要になります。


 同社はこうした設備分野を得意としており、AI・半導体投資の拡大に伴い、設備工事の需要拡大が期待されます。


 一方で、首都圏を中心とした大型再開発や都市インフラ更新も追い風です。安定した受注残高を背景に業績は堅調に推移しており、株主還元にも積極的な姿勢を示しています。AI・半導体ブームを支える「縁の下の力持ち」として、中長期で注目したい企業の一つです。


栗本鐵工所(5602)

 上下水道向けのダクタイル鉄管や産業機械などを手掛ける老舗メーカーです。一見するとAI・半導体とは縁遠い企業に思えますが、社会インフラを支えるという意味では重要な役割を担っています。


 日本では高度経済成長期に整備された上下水道やインフラ設備の老朽化が大きな課題となっています。国土強靱化や防災・減災への取り組みが進む中、更新需要は今後も息の長いテーマになりそうです。骨太の方針でもインフラ設備の更新は重点分野として位置付けられており、同社にとって追い風となるでしょう。


 加えて、近年は利益成長に合わせて株主還元も強化しています。設備投資関連銘柄は景気敏感株として見られることもありますが、社会インフラの更新需要は一過性では終わりません。中長期的な視点で見れば、安定した事業基盤を持つ企業として評価が高まると考えます。


横河ブリッジHD(5911)

 橋梁や大型鋼構造物で国内トップクラスの実績を持つ企業です。高速道路や鉄道橋など、社会インフラの維持・更新に欠かせない存在です。


 日本では橋梁の老朽化が急速に進んでおり、今後は更新や補修工事が本格化するとみられています。新設需要だけでなく、既存インフラの維持管理が重要なテーマとなる中、同社の事業環境は比較的安定しています。


 また、政府が進める国土強靱化政策や防災投資も追い風となるでしょう。近年は株主還元も積極化しており、配当性向の引き上げや自己株式取得など資本効率も意識した経営が目立っています。

派手さはありませんが、設備投資やインフラ更新をテーマに投資するなら、注目したい銘柄の一つです。


ダイトロン(7609)

 半導体や電子部品、ファクトリーオートメーション(FA)機器などを取り扱う技術商社です。単なる商社ではなく、製造装置やシステム提案まで行える点が強みとなっています。


 AI・半導体関連投資が拡大すれば、半導体そのものだけでなく、生産設備や検査装置、自動化設備への需要も高まります。同社はこうした製造現場を支える製品を幅広く取り扱っており、AI・半導体投資の拡大に伴い、需要の裾野が広がる恩恵を受けそうです。


 さらに、製造業では人手不足を背景にFA投資が続いており、自動化・省人化需要も追い風です。利益成長に合わせて配当も増加傾向にあり、株主還元にも積極的です。AI・半導体関連株そのものは値動きが大きくなりがちですが、その周辺で安定的に成長が期待できる企業として、中長期で注目したい銘柄の一つです。


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(田代 昌之)

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