映画業界のライバル東宝と東映で比較。東宝は邦画市場で圧倒的シェアを誇り、株式分割で個人投資家も買いやすく、優待の魅力も高い。

一方の東映は「ドラゴンボール」などの世界的IPで安定収益を確保し、含み資産も豊富だが、株主還元や長期保有のメリットには課題がある。成長性なら東宝、資産価値重視なら東映という選択肢。


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今回のお題 映画業界の永遠のライバル

 子どもたちは夏休みに入りましたが、この夏は物価高(国際線燃油サーチャージも値上げ)や円安で海外旅行を避け、国内レジャーを楽しもうといったムードが日本国内で強まっているそうです。そして、連日暑い…ということで、手軽で涼しい映画館にでも行こう!なんてご家族も多いのではないでしょうか。なんといっても、この夏は映画のラインナップが超充実。アニメでは「トイ・ストーリー5」、ちいかわの最新作、8月には「ミニオンズ&モンスターズ」も公開予定です。実写ではスパイダーマンやキングダム、「モアナと伝説の海」なども公開予定。かなり盛り上がりそうなこの夏の日本の映画業界にあって、永遠のライバルである東宝(9602)と東映(9605)の2社を今回は比べてみます。


A:東宝(9602) 東映(9605)
東宝 vs 東映 日本の映画業界で永遠のライバル グロースかバリューどちらを選ぶ?

東宝 vs 東映 日本の映画業界で永遠のライバル グロースかバリューどちらを選ぶ?

 両社の株価のポイントや株価データを見ながら、双方を比較し、皆さんの相場観で購入検討するならどちらにしますか?


銘柄A:東宝(9602)

東宝 vs 東映 日本の映画業界で永遠のライバル グロースかバリューどちらを選ぶ?
出所:筆者作成 ※日足チャート、年初来 2026年7月24日時点

ここがGOOD

大ヒット連発、邦画市場で群抜く存在

 言うまでもなく、日本の映画市場を支配している東宝。一部データでは、2025年の邦画市場における東宝シェアが69%に達したのだそうです。興行収入10億円超えでヒットとされる映画業界で、100億円超えの大ヒットを連発。前年は、邦画実写で歴代最高記録を塗り替えた「国宝」も東宝作品です。そのほか、劇場版「鬼滅の刃」「名探偵コナン」など…定番IPを有していることで、続編を作りながら、100億円超えのミリオンセラー連発が今後も有力視されます。


 また、他社が追随できない強みとなるのが、全国の好立地に自社グループで「TOHOシネマズ」を有し、製作した映画の興行までワンストップで行える点です。

この夏も猛暑で屋内レジャーに人気が出そうですが、その際に選択肢に上る商業施設にも「TOHOシネマズ」は広く入っています。話題作が公開された直後のスタートダッシュに成功しやすく、初速の興行収入の良さがさらなる客数増につながる仕組みが武器と言えそうです。今夏公開の映画では、「映画ちいかわ 人魚の島のひみつ」が初動から好調と伝わっています。初動好調でニュースになることで、さらなる客数増へ…最終興行収入で100億円級の大型ヒットになるか?第2四半期の業績寄与に注目です!


株主優待の妙味かなりUP!

 株主還元の面で東映より強い東宝。第1四半期決算の発表時、政策保有株(26年2月期末時点で10社、1,092億円分も保有)の売却方針を発表したことが好感されました。2030年2月期までに500億円超を処分し、これを成長投資や株主還元に充てるという話なので、当然ポジティブです。配当利回りが高い株ではありませんが、東映の0.2%に対し、東宝の1.5%は随分高いといえます。


 最近の変化でポジティブなのは、3月に株式5分割をしたことで最低投資額が大幅に低下(7月24日時点では100株で約14万円)し、それだけ買いやすくなった100株の保有でも従来通りに株主優待の映画招待券「1枚」が貰える点です。従来の100株は今の投資額の5倍で、映画招待券が年2枚(2月と8月)でした。それが、年1枚(8月のみ)ですが、これから東宝株を買う投資家にとっては大きなメリット。


 分割後の100株(投資額が従来の5分の1)でも映画招待券が「年1枚」もらえるようになりました。分割前に換算すると「わずか20株」の保有で優待がもらえる計算になります。

これにより、これまでよりはるかに少ない元手(5分の1の資金)で東宝の優待を受けられるようになり、少額から投資したい人には大きな拡充です。ちなみに、東映は100株(約58万円)では1,000円分のQUOカードしか貰えず、映画招待券は500株以上の保有から…投資の手軽さでは東宝圧勝です。


ここが心配

“ゴジラ”軸のIP戦略は成功するか?

 東宝の27年2月期の通期見通しは、前期の超大ヒット作の反動で減収減益です。年ごとの大型コンテンツの有無、ヒット作の有無で業績がブレやすい側面が東宝にはあります。アナリストの東宝株に対する分析も、その核となるのが今後公開する映画のスケジュールになっています。ヒットしそうな映画があるかどうか…。その点、東映は、映画事業よりも子会社東映アニメーションの版権(ライセンス)事業の利益の方が圧倒的に大きい企業。東映アニメの持つ「ドラゴンボール」「ONE PIECE」は最強レベルのIP(知的財産)です。


 そのため東宝も、昨年IP・アニメ事業を独立させ、2028年2月期を最終年度とする新中計では巨額のIP投資プランを示しました。とくに自社100%IPである「ゴジラ」には3年間で150億円投資し、グローバルにも展開してブランド価値を高める計画のようです。その足掛かりとして、今年11月に公開予定の最新作「ゴジラ-0.0」が前作同様の大ヒットを記録できるかどうかが非常に重要です。


AI株人気との相性の悪さ

 足元で株価は持ち直していますが、それでも年初来パフォーマンスは-9%と、東映の+8%に対して大きな差が付いています。その理由で考えられるのは、日本株市場でAI株人気が空前の盛り上がりを見せたこと。

AI株に資金が大挙する相場になると、幅広いAI株以外の銘柄(非AI株)は無条件に売られました。


 大型のAI株へ資金シフトする際に、売られる非AI株も大型株が目立ちました。時価総額が大きく、流動性も高い株…それでいえば、東宝の時価総額は1兆円超で東映や松竹と比べ大幅に時価総額が大きいうえ、流動性(売買代金25日移動平均)も東映の14倍あります。東宝は、AI株を買うための換金売り対象になった”AI株の被害者”だったと考えられます。足元でAI株人気が一服し、それに伴い東宝株は復調していますが…またAI株人気が復活した際は、業績不問で売られるリスクをはらんでいます。


東宝 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
東宝 vs 東映 日本の映画業界で永遠のライバル グロースかバリューどちらを選ぶ?
出所:筆者作成

銘柄B:東映(9605)

東宝 vs 東映 日本の映画業界で永遠のライバル グロースかバリューどちらを選ぶ?
出所:筆者作成 ※日足チャート、年初来 2026年7月24日時点

ここがGOOD

世界で稼げるIPが豊富

 日本を代表するIP保有株なのが東映です。子会社の東映アニメーションが「ドラゴンボール」「ONE PIECE」「プリキュア」など世界的なアニメ作品を持つうえ、東映でも特撮モノで「仮面ライダー」「スーパー戦隊」などを保有しています。今回、映画業界のライバルとして東宝と比較しますが、映画メインの東宝とIPメインの東映で収益構造には違いも。


 東映におけるIPビジネスは、映像関連事業の中の「コンテンツ事業」が該当します。このコンテンツ事業は、グループ全体の売上高の48%を占める文句無しのコア事業です。一方の東宝は、IPビジネスの占める比率が21%。東映が海外で高い利益率をIPで稼ぎ、映画のヒット作の有無に左右されにくい収益構造という点を評価する機関投資家も多そうです。


親孝行な子会社を持つ“含み資産株”

 日本には親子上場という、親会社とその子会社の両方が上場している関係が未だ多く存在します。

ガバナンスの観点から、親子上場を解消させようとする動きも活発です。東映については、子会社の東映アニメーション(4816)が東証スタンダード市場に上場しており、有名な親子上場案件です。そして、これも有名ですが、親会社の東映の時価総額(4,349億円)より、子会社の東映アニメーションの時価総額(5,686億円)が大きいという逆転関係にあります。


 東映による東映アニメーションの持ち株比率は約34%で、保有株の価値だけで時価ベースで2000億円弱あります。また、保有する超一等地の土地などの価値も高く、東映の時価総額が過小評価されている感は長く抱かれています。とはいえ、稼ぎ頭でもある東映アニメーションの株を売却して現金化し、株主還元に回せるはずもなく、「いくら価値のある資産があっても、売却出来なければ意味が無い」とみなされているのでしょうか。含み資産株であることは間違いなく、いずれアクティビストなども狙ってくる可能性はありそうです。


ここが心配

今期は大幅減益見通し

 今27年3月期の期初計画(ガイダンス)が大幅減益見通しで、印象の悪さは否めないところです。27年3月期の最終利益予想は前期比46%減で126億円と、当時の市場予想(コンセンサス)の166億円を大きく下回りました。理由としては、前期に計上した不動産の売却益の反動もありますが、映像作品の製作コスト上昇は気がかりです。クオリティの高いアニメを作るには、その製作コストはどんどん高まっている様子。


 一過性の不動産売却益の反動などが主因のため、今後に響くものでは無いためネガティブに捉える必要はありません。また、子会社東映アニメーションの業績予想が慎重にも見え、ガイダンスが出た後の最終利益のコンセンサスは158億円と上振れが見込まれています。

とはいえ、現状は会社側の大幅減益見通しで予想PERが29倍台に急上昇。グロースの東宝と同じレベルになったことで、割安感は失われました。


長期保有するメリットに乏しく

 前期は特別配当もあり1株配当金が36円でしたが、今期は普通配当のみで12円に。配当利回りは0.2%と、日本株全体で見ても低過ぎと言える水準です。 また、株主優待も、100株ではQuoカード1,000円分が貰えますが、映画招待券は500株以上からもらえます。500株以上といえば、最低投資額で300万円弱必要とハードル高過ぎです。


 また、非常に価値のある資産を多く抱えながら、売却できない資産が多いため、株主還元に回ってこないと見透かされている点も問題です。そのため、PBRは東宝の2.4倍に比べて1.3倍と低いですが、PBRを押し上げるような材料(株主還元の強化など)にも欠ける印象。東映のファンは多いと思われますが、株主還元を受け取りながら長期保有する東映株のファンは少ないと思われます。


東映 レーダーチャート ※各指標の数値に基づき独自基準でスコア化
東宝 vs 東映 日本の映画業界で永遠のライバル グロースかバリューどちらを選ぶ?
出所:筆者作成

あなたなら、どっちを買う?

 東宝、東映という、国民的に馴染みある2つの企業ですが、銘柄としての持ち味には結構な差があることが分かりました。映画事業で無双状態ながら、IP戦略でのさらなる成長を課題とするグロース株の東宝。最強IPで安定した利益源を確保しているものの、株主還元が弱過ぎで低PBRに甘んじる東映。今期予想PERでは全く同じ水準に来ているというタイミングで、ここから買うならグロースの東宝とバリューの東映、あなたならどっちですか?


東宝 vs 東映 日本の映画業界で永遠のライバル グロースかバリューどちらを選ぶ?
出所:筆者作成 ※2026年7月24日時点

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各指標の説明 予想PER 1株当たり利益の何倍(何年分)まで株価が買われているかを示す指標。
同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。 PBR 1株当たり純資産の何倍まで株価が買われているかを示す指標。同業他社と比較する際に使われ、低いほど割安と判断します。この数値が1倍を下回る企業に対し、東証は「1倍を上回るよう頑張れ」と指令を出しています。 配当利回り 今期の予想配当金ベースの利回りで、高いほど配当妙味が高いと判定します。定義はありませんが、3%以上なら配当利回りが高いと認識されています。 流動性 1日の売買代金がどれくらいあるか?(表では25日平均)を金額で表示しています。同数値が高いほど、機関投資家も大口の個人投資家もストレスなく参加できると考えられます。

(岡村 友哉)

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