タクシー大手の「大和自動車交通」買収と資本・業務提携で事業基盤を強化 国際自動車が筆頭株主に

大手タクシー会社の大和自動車交通<9082>が、事業基盤の強化に向け、同業会社の買収や資本・業務提携を進めている。

2024年12月に十全交通(現 大和自動車交通府中=東京都府中市)を子会社化し、東京都西部の営業基盤を拡充したのに続き、2025年10月には国際自動車(東京都港区)と資本・業務提携し、人材、整備、燃料調達の各分野で協力を開始した。

国際自動車はその後、大和自動車交通の株式を追加取得し、2026年5月に議決権比率10.06%の筆頭株主となった。

買収による営業基盤の拡充と、資本・業務提携による経営資源の相互活用を、タクシー事業の強化にどうつなげるかが今後の課題となる。

十全交通の子会社化で多摩地区強化

大和自動車交通は、比較的営業基盤が手薄だった東京都西部で事業を強化するため、2023年に十全交通と業務提携した。

連携をさらに深め、事業運営の効率を高めるため、2024年に十全交通の子会社化に踏み切った。

大和自動車交通グループは、多摩地区に大和自動車交通立川と大和交通保谷を傘下に置き、十全交通を加えて、配車、車両整備などの業務を統合するとともに、間接部門の集約を進め、コストを削減する方針だ。

大和自動車交通は、これまでもM&Aを重ねてきた。

同社の沿革で確認できる最初の買収は1972年で、真和タクシー(現 大和自動車交通吉祥寺)を買収した。

その後、1991年に保谷交通(現 大和交通保谷)、1996年に柏自動車(現 大和自動車交通吉祥寺)を子会社化した。

さらに2020年に丸井自動車(現 大和自動車交通北千住)とトータルメンテナンスジャパン、2022年に宮園砿油を相次いで傘下に収めた。

同社は最新の有価証券報告書や決算短信、中期経営計画などで、M&Aの加速については言及しておらず、抑制についても具体的な方針を示していない。

このため、これまでの実績を踏まえると、引き続きM&Aを実施する可能性は高いとみることができそうだ。

タクシー大手の「大和自動車交通」買収と資本・業務提携で事業基盤を強化 国際自動車が筆頭株主に
大和自動車交通の沿革と主なM&A

国際自動車との資本・業務提携進める

一方、大和自動車交通は2025年10月29日、国際自動車が大和自動車交通の株式の一部を取得すると発表した。

あわせて国際自動車と業務提携し、採用、教育、研修の協力体制の構築、整備工場の相互融通、燃料の共同仕入れによるコスト削減の三つの分野で協力することにした。

さらに、大和自動車交通は2026年6月に、議決権比率8.29%で第三位の株主だった国際自動車が、2026年5月29日付で同10.06%の筆頭株主になったと発表した。

国際自動車は2025年11月と2026年6月に提出した大量保有報告書で、大和自動車交通株の保有目的を「業務提携を推進し、発行者との関係をより強固なものとするため」としている。

また、大和自動車交通は、国際自動車との業務提携とあわせて、配車アプリを展開するS.RIDE(東京都港区)とも業務提携し、配車プラットフォームやAI(人工知能)技術などを活用して、旅客運送事業の効率化、高度化に取り組むことにした。

乗務員増と十全交通の寄与で黒字転換

大和自動車交通の2026年3月期は、売上高199億700万円(前年度比4.5%増)、営業利益3億8400万円(前年度は2100万円の営業赤字)となった。

2024年12月に取得した十全交通が期初から連結対象となったことに加え、タクシー乗務員の募集活動や提携先企業からの受け入れで乗務員が増え、タクシー車両の稼働率が上昇したことから、増収となり、営業損益は黒字に転換した。

同期の売上高に占める主力の旅客自動車運送事業(ハイヤー、タクシー)の割合は74.5%だった。

そのほか、不動産事業(不動産売買、賃貸、仲介)が5.3%、販売事業(燃料販売、資材販売、金属製品販売)が9.6%、サービス・メンテナンス事業(清掃、設備管理など)が10.5%といった構成だ。

タクシー大手の「大和自動車交通」買収と資本・業務提携で事業基盤を強化 国際自動車が筆頭株主に
大和自動車交通の売上高構成比

2027年3月期については、タクシー運賃の改定、配車アプリ「S.RIDE」と海外配車アプリ「Uber」との連携、インバウンド(訪日観光客)の利用増などにより、売上高は前年度比5.5%増、営業利益は同30.1%増を見込む。

大和自動車交通は、主力の旅客自動車運送事業について、乗務員不足、自動運転化への対応、人件費や物価の高騰によるコスト上昇圧力に加え、イラン情勢の長期化に伴う燃料価格高騰もあり、厳しい状況が続くと予想する。

買収と資本・業務提携で事業基盤の強化を目指す大和自動車交通にとって、両施策を乗務員の確保やコスト削減、車両稼働率の向上に結び付け、厳しい事業環境下で収益力を高められるかが問われる。

関連記事はこちら
「タクシー業界」事業承継型M&Aが広がる余地 休廃業・解散が過去最多

文:M&A Online記者 松本亮一

タクシー大手の「大和自動車交通」買収と資本・業務提携で事業基盤を強化 国際自動車が筆頭株主に
M&Aが生み出すビジネス革新
編集部おすすめ