GEヘルスケア・テクノロジーズは、医療画像診断や超音波機器、患者モニタリングの世界的大手です。2023年に19世紀創業企業ゼネラル・エレクトリック(GE)から独立上場し、過去2年間で株主資本は1.5倍に拡大。

一方、時価総額は1.1倍止まりで、同業他社比でも割安感が出ています。


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エジソンの会社を起源とするGE三分割で成立

 GEヘルスケア・テクノロジーズ(GEHC NASDAQ)(株価74.82ドル、時価総額338億ドル:8月21日終値)(以降、GEヘルスケア)は、医療画像診断(MRI、CT、PET)、超音波、患者モニタリング、手術支援、医療データ解析などの機器を提供する世界的医療機器メーカーです。


 トーマス・エジソンが創業した会社を起源とする19世紀創業企業ゼネラル・エレクトリック(GE)の事業三分割(医療機器事業がGEヘルスケア、航空エンジン事業がGEエアロスペース(GE NYSE)、電力・再生可能エネルギー事業がGEベルノバ(GEV NYSE)として独立)によって2023年に上場しました。


 GEヘルスケアは医療機器とデジタル技術を統合した「Precision Care」を成長戦略の中心に据えています。AI画像診断、遠隔モニタリング、病院運営の効率化ソリューションを強化し、慢性疾患の増加や医療人材不足に対応する技術を展開。グローバルで病院・クリニック・研究機関を顧客とし、診断精度向上と医療の効率化を支える基盤企業として存在感を高めています。


<GEヘルスケアのMRIシリーズ「SIGNA」>
医療画像診断機器大手のGEヘルスケア・テクノロジーズに割安感(西 勇太郎)
出所:GEヘルスケア・テクノロジーズ

 GEヘルスケアの前身は1994年に法人化されたGEのヘルスケア部門で、MRI、CT、超音波など画像診断装置を中心に世界的事業を拡大しました。


 2000年代にはITソリューションや患者モニタリング領域を強化し、造影剤事業も加わり総合医療テクノロジー事業へと成長。GE本体の事業再編に伴い、2022年に分離準備会社として法人化され、2023年1月にGEから正式にスピンオフしてNASDAQへ上場し、現在に至ります。


 GEヘルスケアの画像診断、超音波、患者モニタリングの主要3事業における最大のライバルはシーメンスヘルシニアーズ(SHL フランクフルト)で、MRI、CT、X線など画像診断装置の技術力と販売網でGEと世界首位を競っています。


 コーニンクレッカ・フィリップス(PHIA アムステルダム)は超音波と患者モニタリング領域で強く、病院内ソリューションでGEと直接競合しています。


 キヤノン(7751 東京)子会社のキヤノンメディカルシステムズはCT・MRIで高い技術力を持ち、特にアジア市場でGEと競争しています。さらに中国の深センマインドレイ(300760 深セン)はモニタリング領域で急成長しており、価格競争力を背景に存在感を高めています。


利益増加トレンドも株価は今年に入って下落

 GEヘルスケア・テクノロジーズの当期純利益は、MRI・CT・PETなど高単価の画像診断装置や医薬品診断(PDx)が伸び製品ミックスが高収益領域へシフトしたこと、グローバルで値上げを実施し粗利率が改善したことなどにより、増加トレンドにあります。


<GEヘルスケア・テクノロジーズの当期純利益推移(2023年12月期以降)>
医療画像診断機器大手のGEヘルスケア・テクノロジーズに割安感(西 勇太郎)
※2026年は予想値出所:GEヘルスケア・テクノロジーズ資料などより作成

 同社の株価は当期純利益の増加を反映して上昇する流れでしたが、2026年に入ってからは半導体、原材料、物流コストの急騰を材料視して下落しています。


<GEヘルスケア・テクノロジーズの株価推移(2023年12月期以降)>
医療画像診断機器大手のGEヘルスケア・テクノロジーズに割安感(西 勇太郎)
※2026年は直近値出所:GEヘルスケア・テクノロジーズ資料などより作成

過去業績対比でPBRに割安感、解消されれば株価は110ドル

 過去2年間の変化で見ると、売上高が1.1倍、当期純利益は1.5倍に拡大しました。株主資本蓄積も順調に進んで1.5倍に達しているのに対し、前述の通り株価は2026年に入って下落した結果、時価総額は1.1倍止まりの状況となっています。結果的に株価純資産倍率(PBR)は4.9倍から3.6倍へと低下し、割安感が高まっています。


 この割安感が解消され、PBRが4.9倍にまで上昇した場合には、株価は110ドル(47%上昇)となります。


<GEヘルスケアの業績推移(2023年12月期と2025年12月期)> (百万ドル) 2023年12月期 2025年12月期 変化(倍) 売上高 19,552 20,625 1.1 営業利益 2,435 2,762 1.1 当期純利益 1,385 2,084 1.5 株主資本等合計 7,133 10,379 1.5 時価総額 35,199 37,362 1.1 PBR(倍) 4.9 3.6 - PER(倍) 25 18 - ※時価総額は、2023年12月期は期末時点値、2025年12月期は直近値
出所:GEヘルスケア・テクノロジーズの資料などより作成

 GEヘルスケアの事業は画像診断、高度画像解析ソリューション、患者ケアソリューション、医薬品診断の主要4セグメントから構成されています。


 画像診断セグメントは、MRI・CT・PET/CT・X線などの装置を提供し、病院の診断能力の基盤を担う中核領域です。高度画像解析ソリューションセグメントは、3D/4D画像処理やAI診断支援ソフトを提供し、画像診断の精度向上と読影効率化を支えています。


 患者ケアソリューションセグメントは、生体モニタ、麻酔・呼吸管理、ICU向け機器、病院内データ連携ソフトを扱い、治療現場の安全性と運営効率を高めています。医薬品診断セグメントはCT・MRI・核医学向け造影剤を提供し、画像診断の質を左右する高収益の消耗品領域です。


 収益拡大のけん引役は高度画像解析ソリューションセグメントです。同セグメントは、画像診断装置の高性能化とAI活用の進展を背景に急速に需要が拡大しています。MRI・CTの高分解能化により画像データ量が増大し、3D/4D処理やAI診断支援ソフトの導入が不可欠となったことで、装置販売に連動してソフトウエア収益が継続的に積み上がる構造が形成されています。


 さらに、読影効率化や診断精度向上を求める病院の投資が増え、サブスクリプション型のソフトウエア収益が安定成長を実現。画像診断セグメントと連動した「高付加価値ソフト」として利益率が高く、GEヘルスケアの全体収益の押し上げ要因となっています。


<GEヘルスケアのセグメント別業績推移(2023年12月期と2025年12月期)> (百万ドル) 2023年12月期 2025年12月期 変化(倍) セグメント別売上高 19,552 20,625 1.1   画像診断 10,581 9,245 0.9   高度画像解析ソリューション 3,457 5,354 1.5   患者ケアソリューション 3,142 3,086 1.0   医薬品診断 2,306 2,900 1.3 セグメント別利益 2,956 3,154 1.1   画像診断 1,124 891 0.8   高度画像解析ソリューション 821 1,175 1.4   患者ケアソリューション 383 209 0.5   医薬品診断 617 872 1.4 出所:GEヘルスケア・テクノロジーズの資料などより作成

 今後については、画像診断装置の堅調な需要と高度画像解析ソリューションの拡大により安定成長が見込まれています。


 病院の設備投資は米欧で底堅く、MRI・CTの更新需要が継続。AIを活用した画像解析ソフトやクラウド型サービスの採用が進んでおり、利益率改善にも寄与しています。さらにサービス収益や保守契約が安定した収益基盤を形成し、増収増益トレンド継続が予想されています。株価水準がこのまま変わらなければ、2027年12月期にはPBRが2.5倍にまで低下する計算になります。


<GEヘルスケア・テクノロジーズの業績予想> (百万ドル) 2025年12月期 2026年12月期 2027年12月期 実績 予想 予想 売上高 20,625 21,717 22,726 当期純利益 2,084 2,176 2,394 株主資本等合計 10,379 12,365 14,693 時価総額 37,362 37,362 37,362 PBR(倍) 3.6 3.0 2.5 PER(倍) 18 17 16 ※時価総額は直近値
出所:GEヘルスケア・テクノロジーズ、FactSetの資料などより作成

医療用電子機器の同業他社比でもPBRに割安感

 一般に株式の評価と収益性はおおむね、図のような比例関係にあります。


<株価評価と収益性はおおむね比例関係>
医療画像診断機器大手のGEヘルスケア・テクノロジーズに割安感(西 勇太郎)
出所:各社資料より作成

 この関係を活用し、GEヘルスケアと上場同業他社について、収益性については自己資本利益率(ROE)を、株価評価についてはPBRを適用した散布図を作成します。


 なお、GEヘルスケアの上場同業他社である主な医療用電子機器企業には前掲のシーメンスヘルシニアーズ、コーニンクレッカ・フィリップスなどに加えて、アボットラボラトリーズ(ABT NYSE)、メドトロニック(MDT NYSE)、ボストン・サイエンティフィック(BSX NYSE)、インテュイティブ・サージカル(ISRG NASDAQ)、オリンパス(7733 東京)、レスメド(RMD NYSE)などがあります。


 これらの企業についての散布図を作成すると、ROEとPBRの間におおむね比例関係があることが確認できます。その中で、GEヘルスケアについては割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があるといえます。

この割安感が解消された場合のGEヘルスケアのPBR(散布図の青破線に乗る水準)は4.9であり、相当する株価は110ドル(47%上昇)です。


<主な医療用電子機器企業のROEとPBRの関係>
医療画像診断機器大手のGEヘルスケア・テクノロジーズに割安感(西 勇太郎)
出所:各社資料より作成

<主な医療用電子機器企業10社のROEとPBR> 社名 証券
コード 取引所 売上高 ROE PBR 百万ドル % 倍 アボットラボラトリーズ ABT NYSE 44,328 13 3.8 メドトロニック MDT NYSE 36,364 10 2.4 シーメンスヘルシニアーズ SHL フランクフルト 25,844 12 2.5 GEヘルスケア・テクノロジーズ GEHC NASDAQ 20,625 22 3.2 コーニンクレッカ・フィリップス PHIA アムステルダム 20,153 8 2.1 ボストン・サイエンティフィック BSX NYSE 20,074 13 3.1 インテュイティブ・サージカル ISRG NASDAQ 10,065 17 7.9 オリンパス 7733 東京 6,716 9 2.8 レスメド RMD NYSE 5,653 24 5.1 深センマインドレイ 300760 深セン 4,629 22 4.8 出所:各社資料より作成

 GEヘルスケアは今後も収益拡大が見込まれる中で、現在の株価74.82ドルには過去実績比、同業他社比で割安感があります。割安感が解消された水準は47%上昇した110ドルです。


(西 勇太郎)

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