「インドア」「ビーチ」二刀流バレーボーラー
水町泰杜インタビュー(後編)

◆水町泰杜・前編>>「二刀流に挑戦する次の世代の子たちが出てきたら......」
◆水町泰杜・中編>>二刀流3年目の誓い「日本では敵なしのペアになりたい」

 同じトヨタ自動車に所属する黒澤孝太とペアを組んだ水町泰杜は、今秋の「第20回アジア競技大会(愛知・名古屋)」の日本代表に内定した。

 今年5月の「ジャパンツアー2026第1戦名古屋大会」を制したことでつかんだ切符。

だが、そこを最大のターゲットにしたわけではなかったと水町は明かす。

【男子バレー】水町泰杜のプレーは見る者を惹きつけてやまない ...の画像はこちら >>
「もちろん出場権が獲れたら、それはそれでよかったですけれど、まずはシーズン最初の公式戦であるジャパンツアーの名古屋大会をあくまでもひとつの大会として、(黒澤)孝太とどれくらい戦えるかを測る意味合いが強かったです」

 水町にとっては初めて本格的にシーズンを戦う日本人ペアであり、だからこそ、現時点の力を確かめるための場だった。もっとも、第1戦名古屋大会は2週にわたって開催されるものであり、その1週目の「碧南ラウンド」はペアを組んで1週間足らずで臨むものだったことを踏まえれば、おのずとそうなるだろう。

「それこそ2週目の『tonarinoラウンド』は正直、見ていませんでした。まずは『碧南ラウンド』の1試合目を勝とうぜ、今この試合を楽しもう、という気持ちでプレーしていました。それに『碧南ラウンド』で対戦したペアも国内きっての実力派でしたから、この試合をがんばろうと。そうしてひとつずつ積み上げていった結果、優勝して出場権を獲得できたわけです」

 水町はその実力とは裏腹に、決して自信をみなぎらせる性分ではない。大学卒業後にウルフドッグス名古屋に入団してトップカテゴリーに臨む時もそう、ビーチバレーにチャレンジする時もそう。「自分が通用するか、わかりませんから」と口にしてきた。

 決して自分の力量を低く見積もっているわけではない。けれども、初めて飛び込む世界なら、なおさらその姿勢は強くなる。

「2シーズンを過ごしたとはいえ、ビーチバレーに関しては『始めたての身』だと自覚していますし、インドアはもちろん、インドア以上にビーチバレーは経験がモノをいうスポーツだと考えていますから。

『いけるだろ』みたいな姿勢で勝てる場ではない──その心構えでいました」

【インドアと異なる醍醐味とは?】

 とはいえ、それでいて結果を残すあたりが、水町泰杜というアスリートの非凡さを何よりも物語っている。実際にジャパンツアーでは連勝を果たし、3シーズン目を迎えて国内の実力派ペアの大半からすでに勝ち星を上げているのも事実だ。

 それでも、自分の実力に対して絶対的な自信がついたかと言えば、そうではない。そこにビーチバレーの真髄があると、水町は語った。

「この競技は、環境に左右される要素が本当に大きくて。一度勝てたからといって、次にまた勝てる保証がないんです。

 勝てた試合を振り返ると『あの時は風が吹いていたのが大きかったよな』『雨が降っていたら厳しかったんじゃない?』なんて思うことがたくさん。そこはインドアとまるで違いますね。ただ、最初のシーズンに比べたら、圧倒的に自分が戦えている感覚は持っています」

 会場や試合当日の環境によって、すべてががらりと変わる。ましてや対戦相手もペアの組み合わせが異なれば、戦い方も違ってくる。

 そんなビーチバレーならではの特色が、水町にとっては面白さであり醍醐味となっている。それは自分自身に対しても。「まだまだ!! プレーしかり、戦術しかり、できないことや知らないことばかりです」と話す姿はどこかうれしそうだ。

 そんな水町に聞いてみた。「うまくなりたい」「勝ちたい」、はたまた『週刊少年ジャンプ』作品の主人公のように「強くなりたい」。ビーチバレーボール選手として抱える感情はいかなるものか、そして、その割合は──。

「時と場合によって、違うかもしれません。日々の練習では、できることを増やしたい。いろんな経験をしたいし、見て、プレーして、学びたいと思いながら過ごしています。そこは『うまくなりたい』ですよね。

 もちろん試合になれば、『勝ちたい』が一番です。それにビーチバレーはほとんど大会がトーナメント形式なので、負けたらそこで終わり。だから、負けたくない......かな。いや、どうだろう。『勝ちたい』よりも『もっともっと試合がしたい』かもしれません。

 僕にとって試合は、ただただ楽しい時間なんです。だからこそ、もっと試合がしたいし、そのためには勝たなければいけないわけです」

【海外の試合に参加する計画も】

 学生時代からそうだった。負けたら悔しくて、その先の試合をスタンドで眺めるのが、水町にとっては何よりも嫌いな時間だった。

 ただ、ビーチバレーはたとえ自分が負けていたとしても、レベルの高い試合を見て学ぶ時間にあてることができている。そこがインドアと異なる向き合い方だ。そうは言っても、願うなら試合がしたい。

「一試合、一試合が、自分を成長させる場所だと思っています。ビーチバレーの試合って楽しいんですよ、やっぱり」

 ここからビーチバレーシーズンはさらに本格化し、ジャパンツアーのほか、出場権を獲得した8月の第40回全日本ビーチバレーボール選手権大会(神奈川・藤沢)や秋のアジア競技大会が控えている。また黒澤とともに、海外の試合に参加する計画も進んでいる。

 そこでプレーする水町はいつだって、どこだって「うまくなりたい」「勝ちたい」という思いがみなぎっているだろう。それがきっと、見る者を惹きつけてやまない。

(了/文中敬称略)


【profile】
水町泰杜(みずまち・たいと)
2001年9月7日生まれ、熊本県山鹿市出身。

181cm。ポジションはアウトサイドヒッター。名門・鎮西高では1年時から春高バレー優勝に貢献。進学した早稲田大学でもインカレ連覇を経験し、4年時には主将としてチームを大学4冠に導いた。世代屈指の勝負強さと卓越したレシーブ力を武器に、2023年にウルフドッグス名古屋へ入団。現在はインドアだけでなくビーチバレーとの"二刀流"にも挑戦している。今後の日本バレー界を背負って立つ存在。

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