「ママ、私、将来キャバ嬢になりたい」

 愛理さん(仮名・40代主婦)は、小学6年生の娘から突然そう告げられ、思わず耳を疑ったという。理由を聞くと「可愛いから」「お金持ちになれるから」とのこと。
さらに話を聞いていくと、クラスの女子たちの間ではキャバ嬢に憧れる空気が広がっており、「マンジャロ(※糖尿病治療薬)を打つと痩せるらしい」「将来整形したい」といった会話も珍しくないことがわかった。

「私たちが子どものころとは全然違います」

 そう語る愛理さんは、学生時代にキャバクラ勤務の経験を持つ母親だからこそ、仕事自体を頭ごなしに否定するつもりはない。しかし、小学生の口から当たり前のように飛び交う“痩せる” “整形したい”という言葉に、複雑な思いを抱いているという。今回は、ルッキズムの波に飲み込まれそうになる小6娘を持つ愛理さんに話を聞いた。

「痩せたい」「整形したい」小学生女子の会話に衝撃

「マンジャロ打ったら…」小6女子の“異常な会話”に絶句。「キ...の画像はこちら >>
「娘が容姿を気にするようになったのは、ここ1~2年のことでした。小4の頃は、テレビで活躍するアイドルに憧れて、髪型や洋服に興味を持ち、休日には彼女なりのオシャレを楽しむ程度だったんです」

 今やYouTubeやTikTokなどで、あらゆる情報を取りにいくのが当たり前の時代。娘もメイクやダンスの関連動画を視聴し、家で友達とお小遣いで買った100均コスメを使ってメイク研究をしていたという。学校にはメイクをしていかないというルールを守ったうえで、趣味程度に楽しんでいる娘を、愛理さんは「今どきの子だなぁ」と微笑ましく見守っていた。

 だが、小6になった今年、状況は一変した。

「『もっと可愛くなりたい』『痩せたい』と口癖のように言うようになったんです。娘はまったくダイエットが必要な体型ではないので、『十分可愛いし、子どものうちはダイエットなんてしなくていいんだよ!』と伝えました。

 でもある日、『マンジャロ打ったら簡単に痩せるんだって! 友達が言ってた』『将来整形するって言ってる子もいるよ』と言い出して……。ニュースで耳にしたことはあっても、まさか小学生同士の会話に出てくるワードだとは思わず、正直困惑してしまいました」

 小学生の頃といえば、せいぜい好きなアイドルの話をする程度だった愛理さん世代。
美容医療やダイエット薬の話なんて出たこともなかった時代から考えると、恐ろしさすら覚えたという。

娘が憧れたのは“キャバ嬢”そのものではなかった

「マンジャロ打ったら…」小6女子の“異常な会話”に絶句。「キャバ嬢になりたい」と語る娘に元夜職の母が“あえて否定しなかった”理由
※画像の生成にAIを利用しています
 SNSが身近になった今、子どもたちはフィルター越しに加工された「大人向けの情報」に簡単に触れることができる。

「娘が突然、『将来キャバ嬢になりたい』と言い出したので理由を聞いてみたら、『可愛いし、キラキラしてるから! お金もいっぱい貰えるし!』という答えが返ってきました。娘が見ているのは仕事の現実や苦労ではなく、SNSで切り取られた華やかな部分だけなんだと思います」

 近年は有名キャバ嬢がメディアやYouTubeで活躍し、若い世代からインフルエンサーとして注目を集めている。一方で、実際に夜職を経験した立場として、華やかさの裏側にあるシビアな現実を知っている愛理さんは、静かに口を開く。

「容姿を評価される仕事には、想像を絶するような苦労もあります。だからこそ娘には『見えている部分だけで判断してほしくない』と話しました。そして、成長途中の今は過剰なダイエットは必要ないこと、安易に整形を考えるのではなく、メイクや努力次第で理想の自分に近づけることを伝えました」

 娘は「わかった」と素直に頷いてくれたという。しかし、現代のルッキズムの風潮が、小学生にまで深く浸透してきている現実に、愛理さんは恐怖を感じている。

「可愛い=価値」になってしまうことの怖さ

「マンジャロ打ったら…」小6女子の“異常な会話”に絶句。「キャバ嬢になりたい」と語る娘に元夜職の母が“あえて否定しなかった”理由
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 愛理さんが本当に危惧しているのは、娘がキャバ嬢という職業に憧れたこと自体ではない。

「『可愛い子が勝ち』『痩せている方がいい』『気になるところはお金で整形すればいい』……そんな価値観が、小学生の間で当たり前になっていることが一番心配なんです。もちろん、年齢問わず自分を磨くことは素晴らしいこと。でも、まだ小学生なのに、容姿のフィルターだけで『今の自分じゃダメなんだ』と思い込んでしまうのは、あまりに危険ですよね」

 SNSを開けば、美容情報や美しく加工された写真が洪水のようにおしよせる時代。大人でさえ容姿を他人と比べて落ち込むのだから、多感な子どもたちが受ける影響は計り知れない。


元キャバ嬢の母が、小6娘に伝えたかったこと

「マンジャロ打ったら…」小6女子の“異常な会話”に絶句。「キャバ嬢になりたい」と語る娘に元夜職の母が“あえて否定しなかった”理由
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 愛理さんは、娘から「キャバ嬢になりたい」と言われたこと自体を頭ごなしに否定することはしなかったという。そのうえで、娘に一番伝えたかった思いを最後にこう語ってくれた。

「『可愛いかどうかだけで、自分の価値は決まらないよ。それに“可愛い”の基準も人それぞれ違うんだよ』と伝えました。勉強を頑張ること、スポーツに打ち込むこと、お友達に優しくできること……見た目以外にも、その人を輝かせるものはたくさんあるんだよ、と」

 ルッキズムがかつてなく身近になり、スマホひとつで手軽にコンプレックスを刺激される時代。だからこそ、親が子どもと「本当の価値観」について話し合う機会が、今強く求められているのかもしれない。

<取材・文/鈴木風香>

【鈴木風香】
フリーライター・記者。ファッション・美容の専門学校を卒業後、アパレル企業にて勤務。息子2人の出産を経てライターとして活動を開始。ママ目線での情報をお届け。Instagram:@yuyz.mama
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