F1第11戦ハンガリーGPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 ハンガリーGP決勝に、アストンマーティン・ホンダの2台は攻めの戦略で臨んだ。

 ソフトタイヤを積極的に使い、その速さでライバルとの差を埋める戦略──。

 それ自体は、これまでにもずっとやってきた。だが、今まではそれしか選択肢がなかった。今回は違う。ライバルたちと戦い、前に行くための積極策だ。

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 ランス・ストロールはソフトをたった8周で捨ててタイヤを交換し、集団から抜け出してフリーエアで走ることで、気づけばフランコ・コラピント(アルピーヌ)、カルロス・サインツ(ウイリアムズ)、ハース勢(エステバン・オコン、オリバー・ベアマン)をアンダーカットしていた。今までとは違い、マシン本来の速さを生かすための戦略だ。

 その後も、自分よりフレッシュなタイヤを履くコラピントやハース勢を引き離す速さを発揮し、うしろではなく前を追いかけてポジションを争うレースを見せた。

 一方、フェルナンド・アロンソは実に34周もの間、ソフトタイヤを保たせて引っ張り、1ストップ作戦で浮上する戦略を採った。アロンソだからこそできる、ストロールとは真逆の方向性の攻めた戦略だ。

 レース終盤のVSC(バーチャルセーフティカー)で、ストロールはステイアウトしてピエール・ガスリー(アルピーヌ)と12位争いへ。アロンソはピットインしてソフトタイヤに履き替え、最後にさらにプッシュする戦略を狙った。

 しかし運悪く、アロンソがピットインしたのとほぼ同時にVSCが終了。

ストロールの後方14位でコースに戻ることになり、背後まで追いかけたものの抜くには至らず、ストロール13位、アロンソ14位でレースを終えた。

「予選順位がよくなかったから、フリーエアで走るためにこういう戦略にしたんだ。ウイリアムズのうしろにスタックしてしまったので、彼らを(アンダーカットして)オーバーテイクするため、早めにピットインを仕掛けてフリーエアで走ることにした。

 予選ではうまくラップをまとめられなくて、いい結果にはならなかったけど、今日は今まで以上に周回を重ねることができた。いいレースができたと思う。今シーズン初めて中団グループの集団のなかで走ることができた」

【ステアリングを叩きつけるように】

 レースを終えてそう語ったストロールは、猛暑のなかで疲労困憊しつつも、ライバルと争えているからこそ、最後まで全力を出しきって走り続けた。チェッカーを受けて「コクピットのなかはこの暑さだから、アイスクリームを用意しておいてよ」と言いながら、チームスタッフ全員の6カ月間にわたる苦労と努力をねぎらうことも忘れなかった。

「僕らのヒストリーのなかで、最大級のダウンフォース増だったと思う。みんな、よくやってくれた。ハードワークをありがとう」

 マシンから降りる際、少しだけHALOに寄りかかるようにして身体を休め、戦いに帰ってきたという実感を噛み締めた。

 その一方でアロンソは、諸手を挙げて喜ぶようなことはしなかった。

 たしかに前進はした。

しかし、自分たちが目指しているのはここではなく、もっと上だからだ。

 チェッカー後にターン1でタイヤを潰すほどハードブレーキングでロックアップさせたあと、「あの第1スティントは、なんてひどい戦略だ」と苦言を呈し、パルクフェルメにマシンを止めた時も、コクピットの前に外したステアリングを叩きつけるように置いた。

「コラレーション(シミュレーションとの相関)はよかったし、パフォーマンスのゲインも想定どおりだった。予選も決勝も、パフォーマンスの向上という点で、いい前進が果たせたと思う。

 でも、新しいコンセプトのまったく新しいマシンで走り出したばかりだから、セットアップ面や最適化の面で、まだまだ改善の余地はある。次のレースではパワーユニットも改善が進むし、どのあたりまで戦えるようになるのか、オランダGPで確かめるのが楽しみだよ」

 アップデートが機能し、コラレーションに間違いがないことが確認でき、シーズン後半戦と来年に向けて進めている開発の方向性が正しいこともはっきりと証明できた。

 だからこそ、まだまだこんなところでは満足しない。

 長く苦しかった6カ月間を耐え抜き、チーム全体が一丸となって自分たちの力で長いトンネルから抜け出した。

 アストンマーティン・ホンダの序章は、ついに終わった。ようやくここから第1章──本当の戦いが始まる。

米家峰起●取材・文 text by Mineoki Yoneya

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