UEFAチャンピオンズリーグに挑む
日本人プレーヤーの現在地(後編)

◆前編>>鈴木彩艶がバルセロナを完封した先に見える世界一のGK像

 チャンピオンズリーグは、世界トップクラスの選手が集う舞台であると同時に、ひとりの選手が一夜にして評価を高める舞台でもある。そのチャンスを狙う日本人は、鈴木彩艶(アストン・ヴィラ)だけではない。

 遠藤航(リバプール)、伊藤洋輝(バイエルン)、松岡大起(スロヴァン・ブラチスラヴァ)、渡辺剛(フェイエノールト)、佐野航大(PSV)、そして上田綺世(リール)──。置かれた状況も期待される役割も異なる6人が、それぞれの現在地から世界最高峰へ挑む。強豪チームを相手に見せる彼らのワンプレーが、その後のキャリアを大きく変えるかもしれない。

 9月8日に幕を開けるチャンピオンズリーグのリーグフェーズ。後編では、6人を待ち受ける試練と、世界に名を売る可能性を探る。

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【チャンピオンズリーグ】注目は「鈴木彩艶」だけじゃない 欧州...の画像はこちら >>
 リバプールの遠藤航は2024-25シーズンから、いばらの道が続いている。同僚からの信頼は厚く、キャプテンのフィルジル・ファン・ダイクは「いつだって頼りになる」と一目置いている。サポーター間でもカルトヒーローのような存在で、遠藤が登場すると非常に盛り上がる。だが、なぜか試合出場のチャンスは巡ってこなかった。

 左足首の負傷もあり、アンドニ・イラオラ体制でも主力として扱われてはいない。センターバック、右サイドバック、守備的MFのいずれのポジションでも、序列は4~5番手といったところだ。

 しかし、この汎用性こそが遠藤のストロングポイントでもある。

 本職CBのファン・ダイクを右サイドバックで起用するのは現実的ではない。片や、ボランチのアレクシス・マック・アリスターもライアン・フラーフェンベルフもCBでは起用しづらい。プレミアリーグは世界一の強度を誇っているため、チャンピオンズリーグで上位に進出するためには手駒が多いに越したことはない。失点を回避したいアウェーでは、特に遠藤は重宝されるはずなのだが......。

 リーグフェーズの選手登録リストに「WATARU ENDO」の名前はなかった。欧州での出場機会を失ったことで、遠藤は今後のキャリアについて難しい判断を迫られている。

【伊藤洋輝にも必ずチャンスはくる】

 バイエルンの伊藤洋輝の立場も微妙だ。チームではターンオーバー要員のひとりであり、昨シーズンは対人プレーで安定感を欠いた。中足骨の骨折を再発し、2026年2月には右ハムストリングも痛めるなど、負傷によって継続的なアピールができなかった。

 夏には移籍の可能性も取り沙汰され、本人も新天地を模索していたと報じられた。夏の市場でも積極的に動いていたと聞く。だが、バイエルンからの脱出はできなかった。

 今シーズンのバイエルンは、ヨナタン・ターとダヨ・ウパメカノがCBの第1セットだ。

左サイドバックもナサニエル・ブラウンやアルフォンソ・デイヴィスが優先で、伊藤の立場は変わっていない。伊藤はCBのなかで唯一の左利きで、創造力に富む縦パスには一定の評価がある。しかし、先述した対人プレーの不安定さが、定位置確保を阻んでいるようだ。

 ただ、バイエルンは優勝候補の一角であり、チャンピオンズリーグでも当然のように選手を使い分ける。伊藤にも必ずチャンスがやってくるはずだ。バンサン・コンパニ監督の用兵を根本から覆せるか。

 松岡大起が所属するスロバキアのスロヴァン・ブラチスラヴァは、リーグフェーズでポット4に位置する。立場としてはアウトサイダーだ。しかも、初戦がパリ・サンジェルマンとのアウェーゲーム。大量失点の覚悟はしておいたほうがいい。

 とはいえ、この舞台で得られる経験は大きい。大会3連覇を目指す欧州王者との戦いから、松岡が多くのエッセンスを吸収できれば、日本代表復帰の可能性も浮上してくる。

決勝ラウンド進出は至難の業だが、チャンピオンズリーグのレベルを体感することは計り知れないプラスになるだろう。

 渡辺剛がDFリーダーを務めるフェイエノールトはポット3に入った。1969-70シーズンにチャンピオンズカップ、1970年にはインターコンチネンタル・カップを制した古豪は、しばらくビッグタイトルから遠ざかっている。

 昨シーズン終了後にロビン・ファン・ペルシー監督が退任。エースストライカーの上田綺世もリールに新天地を求めた。チームの再構築は避けられず、ジョバンニ・ファン・ブロンクホルスト新監督は組織に安定感を求めるため、堅実なプレーに定評のある渡辺に信頼を寄せるのではないだろうか。

【兄・佐野海舟とビッグクラブへ】

 渡辺は対人に強く、スピードと的確な状況判断に基づくカバーリングも申し分ない。29歳という年齢も影響し、ヨーロッパ5大リーグへの移籍は叶わなかったが、各方面で高く評価されるオランダリーグ屈指のCBである。

 初戦はバルセロナとのアウェー。ラミン・ヤマルやラフィーニャとのマッチアップが楽しみだ。11月3日にはホームでインテルと対戦する。ラウタロ・マルティネスを封じることができれば、渡辺の評価が急上昇する可能性も十分にあるだろう。

 そのフェイエノールトから遅れること約20年、PSVは1987-88シーズンのチャンピオンズカップを制している。

智将フース・ヒディンクが指揮を執り、ヴィム・キーフト、ロナルド・クーマン、エリック・ゲレツら個性的なタレントを揃えた好チームだった。

 その後もエールディビジで強さを誇り、リーグ優勝は計27回。堂々たるタイトルホルダーだ。そんな強豪に2026年8月、佐野航大がNECナイメヘンから移籍した。佐野はデビュー早々、積極的なプレーでピーター・ボス監督を「期待どおり、いや、期待以上」と喜ばせている。

 佐野の持ち味はプレッシング耐性だ。押し込まれてもパニックに陥らず、最適なプレーを選択できる。圧倒的な劣勢が予想されるレアル・マドリードとのアウェー(11月24日)は、「KODAI SANO」の名前を世界に広めるチャンスだ。

 チャンピオンズリーグのレベルを肌で知ることによって、選手として大幅なランクアップも期待できる。移籍間もないPSVで堂々と振る舞う強いメンタルも持っている。この自信をチャンピオンズリーグでも披露できれば、実兄・佐野海舟とともにビッグクラブへのルートが開けてくるに違いない。

 フェイエノールトからリールへ──。

上田綺世の選択肢は間違っていない。エールディビジで得点王に輝いたあと、ヨーロッパ5大リーグのひとつであるフランスのリーグ・アンに挑む決断を下した。

【上田綺世の僚友ジルーとの出会い】

 プレミアリーグやブンデスリーガからもオファーは届いていたのかもしれない。だが、残留争いに巻き込まれるクラブだとしたら、FWというポジションは苦しい。いくら待ってもボールに触れることができず、自陣に下がってディフェンスを強いられ、パスを受けることができても相手ゴールまでの距離が遠く、あっという間に囲まれる。

 もちろん、チャンピオンズリーグでも守勢に回らざるを得ない試合は少なからずあるだろう。おそらく10月13日のアーセナル戦(アウェー)、11月25日のバイエルン戦(ホーム)などは、失点のリスクを最大限に抑え込むゲームプランを用いなければならない。

 しかし、その他の6試合は上田の決定力を活かすべく、攻撃的に打って出ることが肝要だ。彼のキープ力、巧みなポジショニングはチャンピオンズリーグの舞台でも十分に通用するはず。リーグ・アンのデビュー戦となった9月3日のトゥールーズ戦でも、一瞬の間合いでマーカーの前に入り、決勝ゴールを決めてヒーローとなった。

 また、僚友オリヴィエ・ジルーの存在も心強い。フランス代表歴代最多となる57ゴールの記録を持ち、チェルシーやアーセナルでは献身的な姿勢でロッカールームとサポーターからリスペクトされていた人物だ。

柔軟なボールタッチと強靱なフィジカルは、39歳になった現在も衰えを知らない。

 上田にとって、ジルーは「生きた教科書」である。今後のキャリアを踏まえると、これ以上ないアドバンテージだ。出会いは、人を変える──。

粕谷秀樹●取材・文 text by Hideki Kasuya

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