都内の“事故物件”「3DK・家賃2万円台」も…「病死・2日後発見」なら入居して大丈夫? 大島てる氏が明かす“目に見えないリスク”とは
〈東京T市間取り2K、32.85㎡、家賃4万3700円、軽減中の家賃2万1800円〉〈東京A市間取り2DK、48.32㎡、家賃4万8900円、軽減中の家賃2万4400円〉〈東京A市間取り3DK、58.28㎡、家賃5万4000円、軽減中の家賃2万7000円〉
これらは「JKK東京(東京都住宅供給公社)」の特定物件募集ページに掲載されている物件情報だ。
特定物件とは、「孤独死で発見が遅れた住戸」「自死等があった住戸」をいう。
いわゆる“事故物件”のため、入居から3年間、毎月の家賃を50%割引して募集が行われている。
物件情報には「事故内容」「発見までの日数」も記載されている。冒頭の3件はそれぞれ「病死、15日」「病死、10日」「病死、9日」となっている。
「このくらいなら問題ない」と思うだろうか。なにせ、もともと安めの家賃が3年間半額なのだから、「我慢できる」と考える人もいるかもしれない。
加えて、原則先着順であり、一定の申し込み資格を満たしていれば抽選なしで入居できる可能性がある。

大島てる氏に物件情報の”読み方”を聞いた

気にならない、霊感もない――そんな人は応募してみてもいいかもしれない。その前に、念のため「事故物件公示サイト」を運営する大島てる氏に、事故物件の情報の“捉え方”について聞いてみた。
「まず、重要なのは、発見までの日数だけで状況を判断することは適切ではないということです。
特に夏場は、気温や湿度の影響により遺体の腐敗が非常に速く進行することがあります。その結果、漏れ出た悪臭によって周囲の住民などが異変に気付き、比較的短期間で発見される事例も少なくありません。
しかし、ここで留意すべきなのは、早期発見であったとしても、室内の状況が軽微であることを必ずしも意味するわけではないという点です。
例えば、『たった2日で発見された』という事実は、場合によっては『わずか2日間で遺体の腐敗が著しく進行し、室内環境にも大きな影響が生じていた』ことを意味する可能性があります。

次に入居する人の立場からすれば、心理的な抵抗感を抱くことは十分に理解できると言えるでしょう。したがって、『発見が早かった』という事実だけをもって影響が小さいと結論付けることは適切ではないと考えられます」
決して不安にさせるつもりはない。だが、「病死 2日」という情報に飛びつくにしても、こうした可能性も考慮し、慎重さは忘れないほうがいいだろう。大島氏はさらに夏特有の“事故物件”の捉え方について次のように助言する。

夏特有の”事故”の怖さ

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事故物件サイト「大島てる」では日々あの情報が更新される(大島てるより)

「もう1つのポイントは、熱中症です。これは高齢者だけの問題ではありません。
確かに、高齢者の熱中症死が度々報道されていますが、乳幼児も熱中症で亡くなることがあるのです。
さらに、青年や壮年であっても、体調を崩している人や持病・障害のある人だけが熱中症になるわけではありません。 健康な人であっても、気温や湿度、運動量、水分補給の状況など、さまざまな条件が重なれば熱中症を発症する可能性があります。
言い換えれば、現在は健康そのものであるように見える人であっても、状況次第では短時間のうちに重篤な状態へ進行し、命を落とす可能性があるということ。この点は、熱中症という疾患の危険性を理解する上で重要なポイントと言えるでしょう。
だからこそ、死体検案書(死亡を証明する書類)における死因分類において、熱中症による死亡は自然死や老衰とは区別して扱われているのです。
『自然死であれば事故物件として扱うべきではない』という考え方の是非についてはさまざまな議論がありますが、熱中症死はその議論とは切り分けて考える必要があります」
自然死には告知義務がないとされているが、熱中症死は死体検案書の分類上、自然死とは区別される。
もっとも、国土交通省のガイドラインでは、自然死のほか転倒事故や誤嚥など日常生活の中での不慮の死も原則として告知不要とされており、熱中症死が直ちに告知の対象となるわけではない。
いずれにせよ大島氏の指摘は、発見までの日数だけで室内の状況を判断してはいけないという"目に見えないリスク"を示すものとして、念頭に置いておいた方がよさそうだ。

告知義務はどうなっている?

最後に不動産問題に詳しい荒木謙人弁護士に、事故物件にまつわる法律問題について聞いた。
まず、賃貸物件で過去に自然死や事故死があった場合、宅地建物取引業者(不動産業者)はいつまで入居者に告知する義務を負うのか。
「不動産業者は宅地建物取引業法47条1号等により、相手方の取引判断に重要な影響を及ぼす事実について故意に告げず、または不実を告げることが禁止されています。
この点について、国土交通省の『宅地建物取引業者による人の死の告知に関する ガイドライン』は、自殺・他殺・原因不明の死などがあった場合、賃貸借では死の発生から概ね3年間は告知が必要としています。3年を経過すれば通常は告知不要とされますが、事件性、周知性、社会的影響等が特に高い事案では、告知の必要がある場合もあります」
これに対し、老衰や持病による病死といった自然死や、転倒事故・誤嚥など日常生活の中で起きた不慮の死については、居住用不動産の賃貸・売買を問わず、原則として告知する必要はないという。
「その例外として告知が必要なのは『特殊清掃』が行われたケースです。発見が遅れて長期間ご遺体が放置された結果、室内の汚損や臭気が生じ、特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合は、通常の自然死等とは別に告知の対象となります。
期間については、賃貸借であれば『特殊清掃等が行われることとなった死が発覚してから概ね3年間』が告知の目安です。売買には期間の定めがなく、原則として告知が必要です」(荒木弁護士)
冒頭の格安物件の期間がなぜ3年なのか…。それにはこうした事情も関係していそうだ。

なお、ガイドラインはあくまで行政上の指針にすぎず、直接の法的拘束力があるわけではない。
「賃借人は、業者が国土交通省のガイドラインに沿った対応をしたとしても、個別具体的な事情によっては、媒介業者に対する損害賠償請求や、貸主に対する契約解除など、民事上の責任を追及できるケースもあり得ます」(荒木弁護士)
事故物件については、たとえ本人が気にしなくても、事件・事故を知る周辺住民が色眼鏡で見る可能性も否定できない。いくら「霊感もなく気にしない」と本人が思っても、近隣住民からの無言の圧や好奇の目は耐えがたいものかもしれない。
気にならない人にとっては格安な事故物件。告知義務を理解し、有効に活用すればお得なのは確かだが、それには相応の事情があるということだ。破格値だけに安易に釣られず、最低限の慎重さは持っておいたほうがいいだろう。


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