13枚目にしてACIDMANの音楽と思想の粋を極めたアルバム『光学』の世界を堪能する、究極の体験。6月27日、幕張メッセ国際展示場 展示ホール9・10で、『ACIDMAN LIVE TOUR “光学”』ファイナルが開催された。
「光学(introduction)」に合わせ、暗闇にひとつずつ光がともり、音が高鳴り、スクリーンに光の粒が舞う。映画のタイトルバックのように、ツアータイトルが浮かび上がる。ドラマチックなオープニングに続く、1曲目は「アストロサイト」だ。官能的と言っていいほどしなやかなグルーヴと、様々なイメージを掻き立てるカラフルな映像。あれは天体かそれとも細胞か? メタリックなリフが炸裂する「go away」へ、会場内の興奮と熱が一気に高まる。広大な空間に光と爆音が交錯し、今ここにしかない非日常感を掻き立てる。
Photo:Taka"nekoze photo"
Photo:西槇 太一
「ようこそお越しくださいました。(会場を見渡して)いやー、台風の中、こんなにいっぱい来てくれてうれしいです。
何よりもみなさんの命・安全が大事ですから――。開口一番、ファンへの感謝、悪天候のため会場へ来られなかった人へのケア、物販の混雑への謝罪から始まった、大木伸夫(vo / g)の言葉は偽りない本音だろう。その上で、ただ楽しいだけじゃなく、自分の中に問いが生まれるようなライブにしたい――。大木の言葉に温かい拍手が湧く。会場内に、この場を共にする数千人の連帯感が生まれたのがわかる。
Photo:西槇 太一
ここから3曲、過去のアルバムから『光学』の世界観に沿ってセレクトされた「アイソトープ」「Rebirth」「プラタナス」は、オーディエンスが主役だ。客席を捉えるライブカメラが映し出す、フロアいっぱいに突き上がる拳と大歓声が壮観だ。この日を特別な日にしようという思いは、みな同じだ。そして「白と黒」では、タブゾンビ(SOIL&"PIMP"SESSIONS)がステージに登場。高らかにトランペットを吹き鳴らし、クライマックスでは大木のギターとスリリングな掛け合いで盛り上げる。音色の美しさはもちろん、吹き終えてすぐにステージを去る、後ろ姿までかっこいい。
Photo:Taka"nekoze photo"
「次に歌うのは、愛を感じようという歌です。
「物質の最小単位は、光のエネルギーだと言われています。僕もあなたも、このマイクもギターも、争い合う人も、武器も、すべて元は一緒です。僕はそれを考えるたびに、争い合っている場合じゃない、あっという間に死んでいってしまう生命をもっと感じて、光を感じて、愛を感じよう、と思います。すべての物事は愛で作られている。最期の瞬間に“愛に溢れたいい人生だった”と思えるように、一人ひとりの心が豊かになって、想像力で、世界がひとつになればいいと思っています」
Photo:Taka"nekoze photo"
「feel every love」を歌う前の大木の言葉は、『光学』の核心に触れるメッセージだ。浦山一悟(ds)が叩く電子ドラム、手拍子のリズム、コーラスのオリヴィア・バレル、Tokyo Embassy Choir、四家ストリングスを加えた、豊かな包容力と躍動感に満ちたサウンドが、それを美しく彩る。会場内に祈りの歌が満ちる。それは間違いなく、今の時代に最も必要なメッセージだ。
Photo:西槇 太一
「1/f(interlude)」を経て、ライブはいよいよ『光学』の最深部へと進んでゆく。青い光が広いホールを満たし、ミニマルなギターリフが激しいシューゲイズサウンドへ帰結する「青い風」。龍が舞い上がっていくような映像が印象的な、強烈なディストーションとリヴァーヴにまみれた音の桃源郷「龍」。
「次に歌う曲には、語源に“小さな歌”という意味があります。宇宙の視点から見ると、小さな地球の、小さな島国の、小さなロックバンドが、すべてのものは繋がっていると歌い続けています。バタフライエフェクトと言って、地球の反対側の蝶のはばたきが、こちら側では台風になるかもしれない。こんなタイミングなこと、ありますか? これは偶然じゃなくて、本当にそういうことなのかもしれないと思っています」
「あなたの涙は、蒸発して、雲になり、遠い国に降る雨になって、いつか綺麗な花を咲かせる。悲しい涙を流している人も、こう思ってほしい。あなたの涙には意味があります。僕たちは一人ひとりがスペシャルな存在で、ただ生きているだけで、僕らは宇宙の一部になっている。それを僕は奇跡と呼びます」
「sonet」を歌う前、大木の解説には特に熱がこもる。
Photo:西槇 太一
ここからいよいよクライマックスへ、ステージ上とフロアが一体となった疾走を止めるものは何もない。「MEMORIES」もまた、小さな生命と美しい光を慈しむ歌だ。そしてイントロで佐藤雅俊(b)がスポットを浴びる「造花が笑う」が始まれば、幕張メッセはもはやライブハウスだ。フロアの隅々に熱気が行き渡り、強烈な光と爆音が満ち満ちる。さらに続けて「飛光」から「輝けるもの」へ、新旧キラーチューンを繋げるセットリストは圧巻だ。キャリアの長いバンドの代表曲は、過去に偏ることが多い。しかしACIDMANは違う。ライブを見ればわかる。
Photo:Victor Nomoto - Metacraft
「今回のツアーはやるたびに良くなって、ファイナルは最高になるだろうなと思っていました。今日は来てくれて本当にありがとう。それに尽きます」(浦山)
Photo:Victor Nomoto - Metacraft
「今回のツアーは、みなさんの“聴くぞ”というエネルギーが凄くて、こちらも力を出し切りました。今日もいいライブができていると思います」(佐藤)
Photo:西槇 太一
アンコールはやらないと宣言して、ついに最後の曲。「あらゆるもの」について語る、大木の言葉こそ『光学』の核心だ。たった一瞬の命を大切に。世界が平和になりますように。みなさんの心が少しでも豊かになりますように――。「その一役を担いたい」と大木は言った。こんなことを真正面から語って、さまになるバンドが他にいくつあるだろう。
「この世のすべては、光でできています。それがたまたま僕であり、あなたである。このたった一度の命を大切に生きていってほしい。この先苦しいことがあったら、この話を思い出してください。生きてるだけで誰もが宇宙の一部です」
ACIDMAN自身によるオマージュのような「あらゆるもの」は、ACIDMANの究極の1曲かもしれない。人、動物、植物、無機物に至る「あらゆるもの」がスクリーンに映し出される。歌詞に織り込まれた、アルバム収録曲のタイトルが次々に現われる。過去のミュージックビデオで見た、懐かしい景色が通り過ぎる。ラストは再びタブゾンビと四家ストリングスが登場、フィナーレに花を添える。そして、アウトロに乗せたスタッフクレジットのエンドロール。最後に残った大木のギターの爪弾きと共に、メンバーがひとりずつステージを去る。小さな灯りが点滅し、やがて消える。全ては光に還ってゆく。一瞬の後、夢から覚めたように湧き上がる歓声と拍手の温かさ。それは『光学』のコンセプトを見事に表現しきった、ACIDMANのライブ史に残る美しいラストシーン。
Photo:西槇 太一
ある意味で『光学』は、ACIDMANの目指すものを表現しきった作品だ。最小単位を突き詰めればその先はない。しかし心配はいらない。すでに次のライブ、10月30日(金)KT神奈川・KT Zepp Yokohamaで『This is ACIDMAN 2026』が決定している。そして来年、2027年には結成30年、デビュー25年のアニバーサリーが待っている。究極のその先へバンドは進む。代わりのいない存在として未来を目指す。ACIDMANと見たい景色はまだまだある。
Photo:Taka"nekoze photo"
<公演情報>
『ACIDMAN LIVE TOUR “光学”』
2026年6月27日 千葉・幕張メッセ国際展⽰場 展⽰ホール9・10
【SET LIST】
01.光学(introduction)
02.アストロサイト
03.go away
04.アイソトープ
05.Rebirth
06.白と黒
07.feel every lov
08.1/f (interlude)
09.青い風
10.龍
11.蛍光
12.光の夜
13.sonet
14.MEMORIES
15.造花が笑う
16.飛光
17.輝けるもの
18.あらゆるもの
<ライブ情報>
『This is ACIDMAN 2026』
10月30日(金) 神奈川・KT Zepp Yokohama
ACIDMAN オフィシャルサイト:
https://acidman.jp/

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