「会社は社長のものではない」星野リゾート代表・星野佳路が語る“経営者が消える”組織のつくり方
「会社は社長のものではない」星野リゾート代表・星野佳路が語る“経営者が消える”組織のつくり方

「会社は自分の子どもではない」。創業112年、4代目経営者として星野リゾートを国内有数のホテル運営会社へ成長させた星野佳路氏は、そう言い切る。

多くの創業者やオーナー経営者が、自らの存在感を会社の強さと重ね合わせる一方で、星野氏が目指すのは、その逆だ。

「自分がいなくても会社が成長し続けること」。後継者育成、組織づくり、非上場を貫く理由──。経営者として最後に果たすべき役割について聞いた(この記事は、7月25日(土)午前11時30分~テレビ東京で放送『日経スペシャル ガイアの夜明け Beyond The Story』でのインタビューを元に再構成したものです).

「私の使命は、潰れない会社を次の世代へ渡すことです」

――66歳になられたいま、ご自身の経営者人生を振り返って、最も大切にしてきたものは何でしょうか。

星野 やはり「潰れない会社」をつくることですね。星野リゾートはファミリービジネスです。私の代で急成長しましたが、本当に重要なのは、その先も会社が存続することです。

私は「潰れない会社」という言葉を、「持続可能な競争力」という言葉で表現しています。その競争力を次の世代へ受け渡すことが、4代目である私の使命だと思っています。

――いまも第一線で活躍されていますが、ご自身はいつまで経営者でおられるつもりですか。

星野 もうだいぶ離れてきているんですよ。実際、この10年ほどで私の仕事はかなり減っています。意図的に減らしてきました。

以前なら私が判断していたことも、いまはどんどん次の世代に任せようと。私が関わらなくても会社が回る領域を、少しずつ広げてきました。

――次世代への継承については、一定の手ごたえがあると。

星野 今、僕が急にいなくなっても、会社は5年10年は全然大丈夫だと思いますよ。ただ、今は非常に競争も激しいので、経営は常に、市場や競合を見て、新しいことにチャレンジしていかないといけないし、その時代ごとにやらなきゃいけないことは出てくると思います。

――多くの経営者は、仕事を手放すことに難しさを感じます。

星野 私は逆ですね。ある日突然、社長を辞めるよりも、少しずつ責任を渡していくほうが組織にはいい。自然にフェードアウトしていく。それが一番健全な承継だと思っています。

「会社は、自分の子どもではありません」

――オーナー経営者の中には、「会社は自分の子どもだ」と表現して、なかなか手放さない人もいます。

星野 私はそう思ったことはないですね。基本的には、あんまり仕事が好きじゃないんだと思うんです。

僕はこれまで集客を担当してきましたが、集客し続けることの大変さは一番に理解しているつもりですし、お金の面も大変でした。ですから、それをずっとやりたいなんて全く思わないですね。

会社は自分のものでも、子どもでもない。経営者として評価されるのは、「自分がいなくても競争力が残る組織をつくれたかどうか」です。逆に、私がいなければ会社が成り立たないのであれば、それは経営者として失敗だと思います。

――「カリスマ経営者」であり続けることには、興味がない。

星野 ないですね。私が集客を担当し続ける会社では、次の世代は育ちません。だから私は、個人の能力ではなく、会社の仕組みとして集客できる体制をつくってきました。
ブランドも、予約システムも、そのために整備してきたんです。

「アメリカで温泉旅館を作る」は必ず成功する

――いま星野リゾートにとって最大のライバルというと、どこになりますか?

星野 最大のライバルは、やはり外資系のホテル運営会社ですよね。僕らもホテル運営にコミットしてますけど、やっぱり今、海外大手のホテル運営会社さんが東京・大阪だけじゃなくて、どんどん地方に入ってきてますのでね。このことはもう、90年代から予想はしてましたけど。

――星野リゾートは、いまも非上場です。なぜでしょうか。

星野 会社はやっぱり成長ステージによって戦略を変えるべきなんですね。ですから、星野リゾートが永遠に非上場じゃなきゃいけないとは思ってないです。ただ、今はまだ我々、日本の中にしかいないじゃないですか。ここから先、海外に打って出るとなると、投資家の人たちからしたら、やっぱり非効率に映るわけです

実際に今、「アメリカで温泉旅館を作る」なんていうプロジェクトを進めていますけれども、ああいうことはやはりファミリーの非上場形態を維持しているからできることだと思いますね。

もちろん大きなリスクですし、短期的な収益は落とすかもしれませんけど、それは私たちが将来、世界のホテル運営会社の中で戦っていくために、今、絶対やらなきゃいけないことだと思ってるわけです。

――アメリカでの事業は成功しそうですか?

星野 必ずうまくいくと僕は思っています。あそこでブレイクスルーしていかないと本当の意味で、世界で戦っていくってことはできないです。

我々からすると、外資系の運営会社から日本をしっかり守るっていうのは大事ですけど、同時に私たちも海外に出ていって、しっかりと自分たちの実力を証明するってことも次の成長につながると思います。

次の経営者に期待すること

――それは星野さんの経営者としての最後のお仕事になるのでしょうか。

星野 そうですね。

何かあんまり最後とかっていうことに気合いを入れすぎない方がいいと思っているんですが、星野リゾートの戦略としてはそれはやっぱりやらざるを得ないんですね。

「アメリカに行く」と、「アメリカへ行くには温泉旅館で行く」、これは正しいと思っているんですけど、それを私の代でできるのであればやりますし、できないのであれば、次の代がやらざるを得ない大事な戦略だと思います。

――次の経営者に期待することは何でしょうか。

星野 会社はだいぶ大きくなりました。私が引き継いだ頃とは違って、いまは正社員だけでも5000人を超え、運営施設も80を超えています。もう一人の経営者が引っ張る時代ではありません。

会社全体の仕組みと、それを動かすチームで競争力を維持する時代です。その中でやはり短期的な成長や利益というものよりも、長期視点、持続可能性を重視して、正しい戦略をとっていくことが大事だと思います。

文/集英社オンライン編集部

前編 「根性論では会社は伸びない」星野リゾート代表・星野佳路が語る「経営はサイエンス」の真意 はこちら

【番組名】 日経スペシャル ガイアの夜明け Beyond The Story
【放送日時】 7月25日(土)午前11時30分~12時00分 テレビ東京で放送
【配信】 放送未公開部分を含む星野佳路さんの「Beyond The Story」オリジナル版や、「ガイアの夜明け」の過去放送回まで 動画配信サービス「テレ東 BIZ」なら見放題!
テレ東 BIZ:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia

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