「現代の億ションしょぼすぎて涙出てきた」「大金払う価値ある?」1億円の新築3LDKにSNSで嘲笑…なぜ“憧れの住まい”は豪華ではなくなったのか
「現代の億ションしょぼすぎて涙出てきた」「大金払う価値ある?」1億円の新築3LDKにSNSで嘲笑…なぜ“憧れの住まい”は豪華ではなくなったのか

2026年9月、ニュース番組において、都内で1億円の新築マンションを購入した子育てファミリーが新居を訪れる様子が放送された。それに対してSNS上では、「これが億ション? しょぼすぎる」「こんなのに1億も出すなんて信じられない」といった嘲笑や批判が相次ぎ、物議を醸している。

なぜ一般感覚の「億ション=豪華絢爛な豪邸」と、現在の東京不動産市場の現実にはこれほど大きな乖離が生まれてしまったのか。

なぜ億ションは「しょぼく」なってしまったのか

2026年9月、人気経済ニュース番組において、東京の億ションを購入した夫婦が完成した新居を訪れる様子が放送された。

夫婦が購入した物件は、JR中央線の人気駅から徒歩10分の新築マンションの3LDKで、約40平米近いルーフバルコニーがついた眺望の良い物件である。購入価格は約1億円で、新居を見た夫婦が喜ぶ様子が放送された。

しかし、これを見たネットユーザーから、

「1億円もするのに狭すぎる」
「外観や仕様が安っぽい」
「こんな羨ましくない億ションは初めて見た」
「家賃数万円のアパートと大して変わらない」

といった心ない投稿が相次いだのである。

他人の新居に対して、このような中傷をするのは言語道断であるが、この放送を紹介し「現代の億ションしょぼすぎて涙が出た」と書き添えた投稿は2175万回表示され、2.3万を超えるいいねがついてしまった。

なぜ、一般にイメージされる「億ション」と、実際の住居にこのような乖離が出てきたのか。

端的に言えば、その原因は昨今の東京のマンション価格の高騰にある。

不動産経済研究所によると、2026年8月の東京23区の新築の1戸当たり平均価格は1億3821万円となった。また、中古の方も決して安くはなく、東京カンテイによると、同年7月の売り希望価格は70平方メートル換算で1億2724万円となった。

むしろ「億ション」は平均より安い価格になってきているのだ。

「1億円を何のパラメーターに振り分けるのか」問題

フジテレビアナウンサーで宅建士の資格を持ち、マンション愛好家としても知られる西岡孝洋氏は「率直に言って、人が一生懸命働いて、買うと決断したマイホームに外からケチをつけるのはどうかと思います」としたうえで、「このご夫婦は極めて合理的な選択をした」と指摘する。

「都心へのアクセスが抜群な人気の住宅街で、新築3LDKが約1億円。放送によれば、毎月25万円前後の支払いで抑えているわけです。

もし予算を5000万円に下げようとしたら、残念ですが、今の東京圏では都心への通勤に時間がかかるエリアでしか買えません。

ご夫婦の勤務地が新宿駅や東京駅にある場合、毎日の通勤時間や子育ての利便性を捨ててまで遠くに引っ越すのは難しいでしょう。彼らは『広さ』や豪奢な建物ではなく、『都心近くで暮らす時間と人生』を1億円で買ったのです。極めて真っ当な選択だと思います」(西岡氏)

マンション価格が高騰する中で、「1億円というお金」を何のパラメーターに振り分けるのかが大切になっている。通勤利便性に振り分ける人もいれば、広さや建物に振り分ける人もいるだろう。

一方で西岡氏は、マンションを販売するデベロッパー側の姿勢の変化を指摘する。

「今回のマンションの話ではありませんが、昔であればデベロッパーは『1億円の値付けをする部屋なのだから、それ相応の高級な内装にしたり、豪華な共用部を作ったりしなければ売れない』という意識がありました。しかし今は建築費や用地取得費が上がりに上がってしまい、総額を1億円前後に抑えようとすると、そういったものをコストカットせざるを得ません。

それに、デベロッパー自身にも『1億円程度の部屋なら、別に特別仕様にしなくてもこのくらいの仕様で売れるでしょ』という雰囲気が出来上がってしまっているような気がします。売り手側の意識変化という点でも、今の億ションの切なさを感じます。

昔の感覚で『1億円出せば大理石張りの豪華なエントランスがあって、広々としたリビングがある100平米超の部屋で、コンシェルジュがいて……』という『豪華絢爛な億ション』をイメージしていると、今の現実には絶対に追いつかない。

世間一般が想像するような本当の『昔ながらの億ション』を買おうと思ったら、今の23区では2億円か3億円を出さないと買えません。

1億円という価格は『特別な高級住宅』ではなく、東京23区で普通のファミリーが家を買うための『スタートラインの金額』になってしまったと感じます」

「億ションなのにしょぼい」という批判は、購入者個人の目利きやセンスの問題ではなく、コスト高騰によって歪んでしまった東京の住宅市場の構造そのものが映し出された結果と言える。

「いくら嘆いても昔の価格は戻ってこない……」

一方で、実際に「億ション」を買った人はどう考えているのか。昨年、江東区でマンションを購入した30代会社員の男性に話をきいた。

「夫婦ともに大手町付近で働いているのですが、通勤利便性を考えて電車1本で行ける駅にマンションを買いました。価格は仲介手数料などを入れて1億円をちょっと超えるくらいです。タワマンなどではなく、普通のマンションです。豪華なラウンジなどもないですね。確かに昔イメージしていた『億ション』とは違いますが、大手町までは電車で10分くらいなので、『時間を買った』という感覚ですね。個人的には満足しています」(30代会社員)

「億ションなのにしょぼい」というSNS上での嘲笑についてはどう感じているのか。

「正直、この騒動についてはちょっと嫌な気持ちになりましたが、批判している人は東京のマンション市場のことをよく知らないのではないでしょうか。それに、そもそも誰かに羨ましがってもらうために家を買うわけではないので、よく考えたら『まあいいかな』と(笑)。

東京に限っては、もう『億ション』の定義を更新しないといけないですね。

上がり過ぎたので暴落するという意見もSNSで見ますが、私はいくら嘆いても昔の価格は戻ってこないと思ってます。調整くらいはあるかもしれませんが……今できるベストの選択をするしかないかなと」

高騰してしまった東京のマンション市場。大切なのは、世間やSNSの見知らぬ他人に『羨ましい』と思われることではなく、自分の毎日の生活が快適に回り、無事に家計が成立することだろう。買うか買わないかも含めて、それぞれが「ベストな住まい」を選択していくことが肝要なのかもしれない。

取材・文/集英社オンライン編集部

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