Q.クリニックの特色について教えてください。

当クリニックは、顕微鏡下で1つの卵子の中に1つの精子を注入し受精卵をつくる「顕微授精」の正常受精率は80.5%、凍結保護剤で保護した受精卵を液体窒素につけて瞬時に凍結させる「受精卵凍結法(ガラス化法)」の融解後の生存率は99.9%以上を誇り、調節卵巣刺激(※)など患者様に最適な治療法に関しては約20年以上の経験と実績があります。

また体外受精において、患者さんの体に痛みや負担がかかる採卵手術では、静脈麻酔で痛みがない状態で採卵を行う無痛採卵を実施し、患者さんの年齢や状態に応じ、タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精と適切なタイミングでステップアップしながら治療を進めています。
高度な生殖医療を提供することで、できるだけ早く「結果」を出し、限られた人生の少しでも多くの時間を子育てとご自身のために使っていただきたいと願っています。
※ 体外受精において排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激し、多数の卵を発育させる方法のことです。
Q.不妊治療の地域格差の現状について教えてください。

国内には、不妊治療(体外受精)を行っている施設が600施設ほどあります。しかし、その多くは都市部に集中しています。
特に地方では、不妊治療を専門に行う施設が数施設しかない地域もあり、通院するには長距離移動を余儀なくされるケースも珍しくありません。これにより、医療アクセスの不便さが患者さんにとっての大きな負担となっています。
また、保険適用が進んだことで、不妊治療は「どこでも同じ」と思われがちですが、実際には施設によって治療方針や設備に大きな差があることを多くの患者さんはご存じない場合が多いです。
特に、体外受精をはじめとした高度な治療には、施設ごとの医師の技術力や培養室の設備の違い、そして胚培養士の技術力が大きく影響します。このため、単に医療費の面だけでなく、治療の質を重視して遠方の施設を選ぶ患者さんもいます。
Q.Central ART Lab(CAL)の仕組みについて教えてください。

Central ART Labは、地方や地域の産科婦人科と当院が医療連携を行う仕組みで、患者さんが普段の通院は自分の地元や近隣の婦人科に通い、採卵・移植などの高度な医療が必要な場合にのみ当院に来院していただくというものです。
このように、地域の産科婦人科と連携することで、患者さんは普段の治療を近場で受けながら、必要な時には高度な医療を提供する施設にアクセスできるようになります。
この仕組みは、特に遠方からの通院が難しい患者さんや、都心部に住んでいて仕事との両立に悩んでいる患者さんにとって、大きなメリットをもたらします。遠距離の通院による身体的・精神的な負担を軽減し、患者さんがストレスなく治療を続けられる環境を提供することができます。
Q.実際にCentral ART Lab(CAL)ではどのような成果が出ているのでしょうか?
福島県在住の年齢34歳(当時)の患者さんの例ですと、年齢相応の卵巣予備能(妊娠する能力の目安)がある方で、Central ART Labにより体外受精を実施しました。
1回の採卵と1回の移植で妊娠判定陽性、胎児心拍も確認できたため、当院を卒業し現在は地元の連携クリニックで妊婦検診をされています。
Q.Central ART Lab(CAL)の今後の展望について教えてください。
患者さん一人ひとりのライフスタイルに合わせた柔軟な治療を提供するため、今後も医療連携を強化していきます。
Central ART Labを通じて、全国の患者さんがよりスムーズに質の高い不妊治療を受けられるような環境を整え、社会全体の不妊治療へのアクセス向上に貢献していくことを目指しています。
Q.院内の雰囲気はどのような感じですか?

4施設とも待合室はナチュラルな雰囲気を大切にし、患者さんにゆったりとくつろいでいただける空間を心がけています。プライバシーや不安な気持ちに寄り添った空間づくりをはじめ、オリジナルの予約アプリを使って診察室の呼び出しを行っています。
特に品川と名古屋のクリニックは、都心の駅前という立地からお仕事の合間に通院されている方も多く、待ち時間にPCを気兼ねなく使用できるよう電源やWi-Fiを用意しています。
また2人目や3人目の不妊治療をご希望で、お子様連れの患者さんも気がねなく来院いただけるよう、待合室と別に親子待合室を設けています。
Q.患者さんとの診察で大切にしていることは何ですか?

不妊治療がまだ自由診療だけだったころ「高額な医療費を払ってでも我が子を抱きたい」という患者さんの強い思いを受け、「私たち医師も真剣勝負で挑まなければならない」と覚悟を決めて治療にあたっていました。
その想いは保険適用となった今でも変わりません。不妊治療は患者さんも医師も真剣勝負、誠実にのぞむべきだと思っています。
Q.不妊治療を検討している読者へのメッセージ
一ヶ月のうちで妊娠可能な期間はごくわずか(※)なため、自然に身を任せて子どもを授からなくても、医学的根拠に基づいてた治療を行うことで妊娠できる場合もあります。
なかなか妊娠しないとお悩みのご夫婦には、お二人だけで解決策を探さずに私たちを頼っていただきたいと考えています。
また不妊治療は時には治療が辛く、心が折れそうになることもあるかもしれません。それを乗り越え、願いを叶えるため、これからも患者さんを精一杯お支えしたいと思っています。
※卵子の受精能力は排卵後12〜24時間、精子の寿命は3~4日といわれています。