乃木坂46の元メンバーで、現在は俳優・モデルとして活躍する若月佑美が、15周年記念作品集「FIRST EGOISM」(株式会社ヘリテージ刊)を発売した。本作は、若月が15年間積み重ねてきた表現を一冊に収めた初の作品集。
本作のために撮り下ろした写真のほかにも、二科展に9回入選する腕前の絵画作品も収録されている。日刊SPA!のインタビューでは、作品集に収録された写真を中心に、作品創作への思いや、制作にかける信念を語ってもらった。
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■アイドルからアーティストへ

――芸能活動15周年おめでとうございます。数字の大きさに改めてびっくりします。

若月佑美(以下、若月):本当、早いですよね。あっという間に15年も経っていて、自分の実感よりも周りのファンの方で、当時学生だった方が今は社会人になっていると聞くと、それだけ月日が経ったんだなと驚きです。その分、これまでやってきてよかったなと思います。

――若月さん自身、濃縮された時間を過ごしてきたと思いますが、振り返ってみていかがですか?

若月:グループで活動していた期間が約7年で、今年で卒業してから8年になるので、アイドルだった頃を超えてしまって。卒業後の方が長くなったことにもびっくりしています。もう怒涛の日々だったのですが、いい思い出もたくさんありますし、だからこそ一瞬で過ぎてしまった感覚です。学生時代の部活動があっという間だったように、アイドル時代も、今ここに立っている自分もあっという間に時が過ぎたなって。

――では、その一瞬だった時間の足跡が、この作品集に収められているんですね?

若月:そうですね。今までの自分を振り返るとともに、じゃあ、これからどうしていこうかという何かを提示できたらいいなと思っていました。
写真集とか、小説とか、エッセイとかではなく、作品集というジャンルを選んだのも、今までの人生を振り返ったときに、幼稚園の頃から絵を描いていたりとか、あと、漫画が好きだったりとか、芸術に触れる機会も多くて、「自分の好きって何だろう?」って考えていたときに自分の中でしっくりきたんです。

――幼稚園の頃から絵を描いていたということですが、幼少期の頃から何かを描くことが好きだったんですか?

若月:おじいちゃんが絵を描く先生をやっていたんです。でも、私は習ったことは一度も無かったんですけど、自主的に絵を描くことに対して、喜んでもらえる人がすぐ近くにいたことが大きかったと思います。上手下手関係なく、隣で一緒に絵を描くことで「嬉しい」と言ってくれる人がいることが私も嬉しくて、たくさん描いてました。今見るととても下手な絵なんですけど、でも、絵画を描くことの楽しみは小さい頃から感じていました。

――おじい様の描かれた絵を近くで見ていた?

若月:見てましたね。おじいちゃんが絵を描くのをもうやめてるときに私が始めたので、より喜んでくれたのかもしれないです。

――一番古い記憶でどんな絵を描いたか覚えていますか?

若月:なんだろう? あいまいなんですけど、幼稚園のときに水族館で魚たちを描いた記憶がありますね。確か遠足で行ったような気がするんですけど、そのとき賞をいただいたんです。それで親に絵を薦められて始めたんだと思います。

――ではその頃から自分の世界観というのは持っていたんですか?

若月:どうなんでしょう? 幼少期って好き勝手に何かをするじゃないですか? 周りの大人たちもすごくそれを尊重してくれたというか、自分が好きにやるのが一番いいって言ってくれたので、専門的な指導とかも全くなく、伸び伸びやらせてもらいました。その分、いろんな概念とかが入ってきて、今の自分に繋がったのかなって思います。


■物語を描く表現者でありたい

若月佑美、創作の意欲は日常の違和感から 15周年記念作品集で表現
若月佑美、創作の意欲は日常の違和感から 15周年記念作品集で表現
――現在の作品作りで、若月さんはどういったところからインスパイアを受けているんですか?

若月:今回の作品集もそうなのですが、私は言葉や文章を大事にしていて、収録した写真にキャッチコピーのようなタイトルを入れています。どちらかというと、今までも言葉を決めてから絵を描くことが多かったんです。日常を生きていて疑問に思ったこととか、誰かに伝えたいことを絵や写真で表現することが多いですね。すれ違う人の行動を見て、その先を描きたいと思ったこともありますし、世の中の情勢を見て、こういうことを誰かと共有できたらいいな、と思って作品として形にしようとしていることが多いです。

――写真と絵では制作するプロセスがまるで違うじゃないですか? ご自身の中で作品の棲み分けみたいなものはあるのでしょうか?

若月:そのときにやりたい表現が何かっていうところも大きいですね。小さい頃はクレヨンで画用紙に描くことで、誰かに伝えようとしていたんですけど、それが徐々にパソコン上で絵画を描くようになり、それがタブレットになって、最終的に自分自身が作品になりたいと思うようになり、自分の身体を使って表現していくことにたどり着きました。これまでいろんな経験をさせていただいて、お芝居の仕事もですが、自分自身の表現で伝えたかった思いがまっすぐ伝わることもあるんだなって。作品集ではその考えにも挑戦してみました。

――それが、この写真での表現なんですね。自分が撮るではなく、撮られる側として表現者になるという。

若月:そうです。モデル業もやらせていただいていると、いろんなカメラマンさんとお話しする機会があるのですが、被写体の強さについてみなさん語られるんです。風景とか、自然とかいろんなものを撮っていても、何かメッセージを伝えたかったり、強い意思を伝えたいときに、写真に写る被写体という存在がいることで、途端に写真から作品に昇華すると。
じゃぁ、私はそのピースになりたいと思ったんです。私をメインに撮ってもらうというよりも、表現したいものの一部でありたいなと。

――写真を拝見していると、さまざまな若月さんの姿が収められていますね。

若月:「物語性のある写真集を出したい」と芸能活動を始めてすぐの頃に言っていました。ストーリー性とかはカメラマンのみなさんに委ねることが多かったのですが、今回は自分が思い描く物語を作品にしてみようと思いました。

――特攻服を着た写真は異彩を放っていますね。

若月:そうですね。この人には好きな人がいるんです。告白をする前にその人を守れるだけの強さを求めて、ケンカも強くなって力を手に入れるんです。途中から白い薔薇を持っているのですが、これは好きな人へのプレゼント。11本のバラにしたのにも、プロポーズの意味を持たせているんですけど、相手に突き返されてしまうんです。断られた理由は単純に見た目。
彼にとってはその人を守るための力として繕った姿だけど、彼女にとっては暴走族の総長みたいな人に告白されたことになるじゃないですか。いくら自分のためでも知ったことではないじゃないですか? ドラマだと後々、裏側が補完されて、本当の真意を知って結ばれるみたいな展開がありますが、現実はドラマのように甘くない。綺麗ごとばかりじゃないということを作品に込めてみました。なので、あえてハッピーエンドにはしてない感じですね。

――突きつけられる現実に痺れますね。

若月:見ていただくみなさんそれぞれに、たくさんの捉え方をしていただきたいなと思います。ちなみに、タトゥー姿でタバコを咥えている写真もありますが、タトゥーはシールですし、私はタバコ吸えないので、火をつけたまま持っているだけなので安心してください(笑)。

――意外な形で体張ってますね(笑)。

若月:タバコを吸えるスタイリストさんに渡してもらって撮る、みたいなことを繰り返してました。この写真だけ見ると「タバコを吸う人なのかな?」って疑っちゃうと思うんです。世間はそう思うけど、あなたの結論も本当にそれでいいのかという問いかけにもなっています。特攻服みたいにみなさんで考えてもらえると嬉しいです。


■作品のタネはそこにないはずの“違和感”

――見る側に考えを委ねるのも作品鑑賞の醍醐味ですが、写真での表現となると性質がまた変わってきそうですね。

若月:SNSで情報が錯綜する世の中で、何でもかんでも“タイパ”と言われてスピードが優先される。テレビのニュースも見ずに、個人が発信する記事を読んで起きた出来事を知ることが多いと思います。自分で前後とか、背景を知る意思を持たないと、切り取ったある部分だけを見て知った気になる。たとえ間違ったことでも真実として取り入れてしまう。その怖さも表現として取り入れています。

――どれもこだわりはあると思うのですが、他にも思い入れのある写真はありますか?

若月:ゴスロリファッションの写真もあるのですが、これはウイッグも被って、メイクも普段の私がやらない姿に扮しているんですけど、この作品からは違和感を感じてほしくて制作しました。撮影は中華街だったんですけど、被写体はフランス人形を模したゴスロリの少女で、背景は文化も違う中華街。普通だったら被写体にはチャイナ服を着せて世界観を合わせると思うのですが、そうじゃない“チグハグ感”を出したいと思って作りました。あたりまえに捉えてしまう光景に「なぜ?」と疑問を持ってもらいたいことが理由です。例えば、道端にネギが落ちていたら「何でネギが落ちているんだろう?」って考えますよね。写真を撮って友人に話したりすると思うんです。
スーパーにネギが落ちていても気にならないじゃないですか。そこで売っているものですから。芸術って違和感から生まれてくる可能性もあると思っていて、じっくり見ながら違和感の世界観に浸っていただけると嬉しいです。

――ちなみに、若月さんは作品関係なく写真を撮ったりされていますか?

若月:そうですね。こんなにたくさん話しているのに、私自身あんまり家から出なくて(笑)。でも、出かけたときに気になった光景を写真で記録するようにはしています。例えば、食パンが一斤道に落ちていたことがあって、とりあえず写真を撮った後に理由を考え込んじゃって。きっと親子でパンを買いに出て、途中で子供がぐずってしまって、そのときに気を取られて落としてしまったのか、親の方が両手いっぱいに抱えていて、ふとした瞬間に一斤落としてしまったのか。いろいろ物語が膨らみますよね。

――作品化するための資料集めのような感じですね。

若月:そうですね。忘れたくない、面白いと思った自分がいることを覚えておきたいという発想ですね。

若月佑美、創作の意欲は日常の違和感から 15周年記念作品集で表現
若月佑美、創作の意欲は日常の違和感から 15周年記念作品集で表現
――ありがとうございます。それでは最後に本作を楽しみにされているみなさんへ、メッセージをお願いします。

若月:もともと「変わっているね」とか、「そこまで考えるの?」と言われることがすごく多い人生を送ってきました。でも、その考えを共有したら救われる誰かがいるかもしれない。誰かの背中を押せるかもしれない、というポジティブな考え方で世の中に作品を残したいと思って制作した一冊になります。もし、あなたの人生の中でちょっとでも救いになれると嬉しいですし、一度目は写真を見ていただいて、二度目は言葉を読んで楽しんで、また次の機会に自分の好きな作品をどれか1つでも見つけていただいて、毎日頑張る糧になってもらえたらいいなと思っております。

取材・文・撮影/安藤龍之介
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