女優、歌詞家などとして広く活躍しているビビアン・スーがこのほど、中国映画週間の舞台挨拶(あいさつ)などを行うために来日した。ビビアンは同映画祭の目玉作品のひとつ「星の音(原題:星海)」の主役として、貧しいながらも中国近代音楽史に偉大な足跡を残した作曲家、シェン星海を育て上げた母親を演じた。
今回はインタビューの第1回掲載。映画に対する情熱や女性としての理想の愛を語った。なお、インタビュー記事第2回は、明日(10月29日)午前10時台に掲載いたします。(「シェン」はにすいに「先」)

■女性として、愛する人と添い遂げたい

……「星の音」は中国(大陸)映画界の重鎮である李前寛、肖桂雲のご夫妻が監督を務められました。

ビビアン:両監督に出会って、自分の演技も成長したと思います。おふたりを本当に尊敬しています。
仕事の面だけでなく、両親のように感じています。

 「星の音」は、いわゆる芸術作品です。これまでに出演してきた娯楽作品とは、やっぱり違うところがあります。監督にも認めていただき、演じ終わり作品が完成して、本当に達成感を感じました。

 監督のことは昔から存じ上げていました。美術のセンスがあり、美しい映像を撮る方だと思っていました。


 お仕事のことはもちろんですけど、何よりも50年間も「おしどり夫婦」でいることがすばらしいと思います。私もひとりの女性として、愛する人と添い遂げたいと思います。

 撮影の合間に、なぜ50年間も愛し合っていられるのかと尋ねてみたんです。そして李監督に、「簡単なことだよ。たった8文字。これを守りぬけばよい」と教えていただきました。
「相互理解、相互信頼」です。心にしみる教えでした。日本の若い人にも、監督夫婦を見習ってほしいと思います。

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【解説】
「星の音(原題:星海)」は、李前寛、肖桂雲夫妻が監督を務めた。「開国大典」、「重慶談判」など、夫妻が共同で監督を務めた作品も数多い。両監督は、中国映画界の重鎮であり仕事でも生活でも苦楽を共にする“おしどり夫婦”として知られている。

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■「私が本当に好きなのは映画の仕事」と分かった

……デビュー当時のビビアンさんは、とても鮮烈な印象を与えた。でもあえて言えば、受動的に「人に見られている女の子」でした。それが今は、自分の力で観客に働きかけ、「どうしても見たくさせる女優」と、強く感じます。

ビビアン:私が成長したということですか。そうだとしたら、とてもうれしいですね。

 14歳でデビューしてから、歌ったり、歌詞を書いたり、いろいろ表現したり、とにかくさまざまなお仕事をしました。
仕事があれば、何でもやる。仕事のお話があれば、すぐに駆けつけていくという感じでした。

 若いころは家庭環境があまりよくなかったこともあり、とにかくどんなお仕事もしました。

 自分が本当に好きなのは何なのだろう、と考えることもありましたが、ゆっくりと自分の心と対話する時間がありませんでした。

 4年前になって突然、「私は演技することが好き、映画が好き」と、しみじみと思ったんです。

 もちろん、それまでのエンタメ全般の仕事も、私にとって大切なことでした。
やっていた時間も長かったし、エンタメの仕事は私の恩人と言えると思います。

 でも、「自分が本当に好きなのは、映画のお仕事」と、分かったんです。そうですね、昔は仕事が私を選んでいた。今は、私が仕事を選ぶゆとりも出てきたということかもしれない。

■ドラッグストアで何を売っているかも知らなかった

 周潤発(チョウ・ユンファ)さんの取材番組を見たんですよ。バスに乗ったりして普通の生活をしてみる様子が紹介されていました。それで、自分も普通の生活を楽しもうと思いました。それまでは、何が流行(はや)っているのか、ワトソンズ(※)で何を売っているかも知らなかった。

 4年前から映画以外は普通の生活をするようにしています。そういった経験の積み重ねで今の自分があるんです。

 先ほど、昔とは違うとお褒めいただきましたね。もし自分が成長したとすれば、生き方を変えたからかもしれません。

 人って経験で作られていくものでしょう。人は経験によって成長していく。今はそんなことも実感できるようになり、落ち着いた心ですごしています。

※:香港に拠点を置き、中華圏を中心に展開するアジア最大のドラッグストア・チェーン

(取材・構成:如月隼人)

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