植村花菜さんの同名の曲のヒットで、金沢にある『松崎神堂店』が1945年の創業当時からつくっている本物の『トイレの神様』が注目を集めているらしい。歌詞では、「トイレ~にはそれはそれはキレイな女神様がいるんやでぇ~」となっていたが、こちらは女神様ではなく、おひなさまのような男女一対の神様である。


二代目店主の松崎啓二さんにお話を伺ってみたところ、江戸時代から金沢では家の新築や改築の際に、家族の健康や良縁、安産などを願って、この人形を便器の下にお供えと一緒に埋める風習があったのだとか。
しかし、近ごろはマンション住まいの人が増えたため、最初からあるトイレにも飾ってもらえれば……ということで20年ほど前から現在のようなかたちになったという。それまでは『厠(かわや)の神様』と呼ばれていたのだが、この時にもっとわかりやすい名前に……ということで『トイレの神様』にしたらしい。

人形が入っているお堂などもすべて手づくりで、神社などと同じように釘を一切使わない製法でつくるため、1週間に10個くらいしかできないらしい。以前はひと月に30個くらいしか売れなかったそうだが、現在は月300個売れることもあるそうで、まさに破竹の勢い!! 購入者は北海道から鹿児島まで、性別や年齢もさまざまだそうで「娘の結婚祝いに」「両親へのプレゼントに」などなど、贈り物需要が多いのだとか。1人で10個とか買う人もいるのだそうでビックリです~。

「聴いているうちに涙が流れるような歌は昔からあったけれど、この反響の大きさは尋常じゃない感じがします。この人形だって、昔からあったものだけど、別に人間国宝みたいな職人が作るわけじゃないし、値段だって高いものじゃない。でも今の日本、モノはあり余っているけれど、暗いニュースばかりで殺伐としていますよね。そんな中で、単に素朴でかわいい、というだけじゃない、日本の昔ながらの風習を思い出させてくれるようなものが求められているのかもしれないね」とのことだった。

確かに昨今の「癒しグッズ」「パワースポット」ブームなどを鑑みても、精神的な依りどころを無意識に必要としている人が多いのかも……。洋風の住宅が増えたので、仏壇や神棚などもインテリアにそぐわないという理由で置いていないという家庭も多いだろう。
さらに、祖父母と孫が同居する家庭も減っており、世代を超えた家族の繋がりを、こういったモノを通して伝えたい、あるいは受け継ぎたいと考える人もいるのかなぁ……なんて考えてしまった。

というわけで、金沢に古来より伝わる、かわいくてユーモラスでちょっと不思議な神様。あなたも大切な人への贈りものにいかがでしょう?
(まめこ)
編集部おすすめ