そういえば、今年の夏は異常な暑さでした。公園の噴水で水浴びする子どもたちを見ては、羨ましい気持ちになったりして。だって、あまりに混じりた過ぎて。噴水には、リラックス効果もあると言うし。あの感慨、いまだ記憶に新しいです。

そんな「噴水」を持ち運べるとしたら、喜びじゃないですか? 実は、持ち運べちゃうんです。「株式会社 ATELIER OPA(アトリエオーピーエー)」(東京都千代田区)が製作した指輪『ファウンテンリング』を身に着けると、お好みのタイミングで噴水を出現させてしまえるという。

水に当てると蝶やクモの形の噴水に!


じゃあ、まずは現物の画像をご覧いただきましょう。
現代の枯山水! 水に当てると蝶とクモの形をした噴水が出現する指輪

う~ん、何の変哲もないですよね? ちょっとゴツめですが、噴水とは何の関係もない。しかし、蛇口から出る水に当てるとこうなります。
現代の枯山水! 水に当てると蝶とクモの形をした噴水が出現する指輪

この水の形に注目してください。……ちょうちょだ! そうです、蝶の羽根の形の噴水へと早変わりするんです。

上の画像は、『ファウンテンリング』の「Butterfly」で作った噴水。もう1種類、「Spider」で噴水を作るとこうなります。
現代の枯山水! 水に当てると蝶とクモの形をした噴水が出現する指輪

クモじゃないですか! 噴水がクモの8本足を表現しています。まさに、個人が噴水を所有してしまっている。

噴水にのめり込んで20年以上の開発者


この指輪を開発した同社代表取締役のアーティスト・杉原有紀氏は、「私のライフワーク」と断言するほど噴水にのめり込んでいるそう。そもそも、なぜそこまで取り憑かれちゃったのか? 話を伺ってみました。

「最初、スプーンでできたハート型の水膜を見て『綺麗だな』と思い、美大3年の時に水膜がくらげ状になる噴水作品を製作したのが始まりでした。それから、もう20年経ちます」(杉原氏)
とは言え、噴水には設備と電気とお金が必要。大掛かりな仕掛けが不可欠です。杉原氏の作品も、のめり込むほどに大規模なものへとなっていきました。
しかし、その方向性にフラストレーションを感じ、次第に「小さくても美しいものを作ろう」とモチベーションのベクトルは変化。結果、蝶とクモの噴水パーツを指輪として昇華させることを決意。完成品が、上記のそれです。

でもコレ、画像だけじゃなくて動画で見た方が間違いなく魅力が伝わります。……安心してください、撮ってますよ。
まずは、「Butterfly」の方から。

どうですか、触覚も表現してて美しくないですか!? では、続けざまに「Spider」の方の動画も。

お~わっ、生々しい8本足! 跳ねる水に躍動感があるから、本当にクモが歩いてるみたいに見えます。

この噴水を楽しむコツは、蛇口と指輪の距離をある程度離し、水をちゃんと指輪の真ん中に当ててあげること。「Butterfly」の場合、指輪を上下に揺らすと羽根が動いているかのように水の形も揺れます。

ちなみに水道だけじゃなく、じょうろでもイケちゃいます。
現代の枯山水! 水に当てると蝶とクモの形をした噴水が出現する指輪


「部屋を真っ暗にしてライトアップしていただくと、また楽しいですよね」(杉原氏)
たしかに! 黄色いライトを当てると、黄色いちょうちょみたいに見えますもん。

意図をなかなか理解してもらえず職人探しに苦労


……とまさに指輪の新境地とも言えるアイテムなのですが、完成までは苦労の連続だったそう。
「3Dプリンターを使い何度も試作した後、シルバーで量産する工房を探したんです。でも、『噴水ができる指輪』と伝えてもなかなか意図が理解してもらえなくて……」(杉原氏)

この噴水が出現する仕組みを簡単に説明すると、ジュエリーのデザインの突起が跳ね返る水膜の邪魔をし、その部分の膜がくびれ、結果的に意図する「蝶」や「クモ」の形になるというぐあいです。でもその概念が、ジュエリー職人さんにとっては難しい。良かれと思い必要以上にエッジの角度を鋭くしてしまったり、磨きをかけて細くしてしまったり……。ありがたいけど、それじゃダメなんです!
「現在はコンセプトを理解していただける職人さんが見つかったので、50個、100個と量産することができます」(杉原氏)

では、ここで私の感想を。この指輪、すっごい楽しいです。病みつきになってしまいます。ただ、欲を言えばもっとレパートリーがあるといいのになぁ……。
「そうですよね。最初は2種類だけですが、徐々に種類を増やしていきたいなぁと思っています」(杉原氏)
実は現在、「トンボ」、「桜」、「アラベスク」の製作も視野に入っているそうなんです。
「指輪が5種類できたら『親指には蝶』『中指にはトンボ』とはめていき、それぞれの指でそれぞれ違う噴水を作れたら面白いですよね」(杉原氏)

それにパッと見はただの指輪でしかないのに、水に当てて初めて正体がわかるってのもオシャレですよねぇ。
「私は、この指輪を“現代の枯山水”と呼んでいます。枯山水って小石に川の跡がついていて、私たち日本人が見たら川だと理解できますよね。水が無いのに庭園になっている。この指輪も、一度遊ぶと蝶の形に見えてきます。水を当てずとも、噴水が想像できるという」(杉原氏)

そんなこの『ファウンテンリング』は、クラウドファンディングサイトにて10月16日まで購入することができます。価格は、12,500~20,500円(税抜)。購入前に噴水の出来上がりを体感したい方は、同社に伺って実体験することも可能です。

最後に。この指輪、どういう人に着けてもらいたいですか?
「そうですね。噴水を愛する、全ての人に」(杉原氏)

噴水って、本来は持ち帰れないものでした。せいぜい、写真に収めるくらい。しかし、これからは着の身着のまま持ち歩ける。そんな時代が、到来です。
(寺西ジャジューカ)