星野源主演による長編アニメーション映画、森見登美彦原作による『夜は短し歩けよ乙女』が公開となる。古都・京都を思わせる街で繰り広げられるのは、一癖も二癖もある、個性溢れるキャラクターたちによる群像劇。
独特な世界観もみどころの本作であるが、重要人物の一人・学園祭事務局長を演じる声優神谷浩史に作品の印象や自身の役どころ、さらに、キャラクターたちについての思いなどを伺った。

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 同作は、主人公・先輩(星野)と黒髪の乙女(花澤香菜)をめぐる恋模様を中心に描かれる大学を舞台にした青春群像劇。神谷演じる学園祭事務局長は美形で女装癖があり、幾多の男性を無謀な恋路へと翻弄してきた癖もある変わり者な人物。作中では、先輩の数少ない友人の一人であり、乙女への気持ちを知る一人として登場する。

 過去に映像化された『四畳半神話大系』などを手がける、森見登美彦の作品は「タイトルからみても想像が付かないものが多い」と印象を語る神谷。本作では「原作のエピソードを上手に活かしながら、小説では描ききれなかった様子がよりハッキリと見えるようになりました」と作品全体の感想を話す。


 作品へ携わるにあたり「自分が出演することが、作品内できちんと機能しているかどうか」を常に意識していると話す神谷だが、本作の役どころ・学園祭事務局長は「初めのイメージではその語感から『常識的な人』だと思っていた」と告白。しかし、実際のアフレコが進むにつれて「優雅で落ち着いていて、威厳のある人気者」だと分かり、「韋駄天炬燵を追うシーンで『酔っている自分』や『悔しがっている自分』を表現してほしい」と指示をもらうなどして、よりキャラクターの個性に気づけたという。 学園祭事務局長として、その“恋路”を見守る先輩と黒髪の乙女の印象については「二人とも局長に負けずとも劣らぬ変わり者」と伝える。ただ、どの登場人物も「みんな『一生懸命に生きること』に前向きな印象です」と話し、どのキャラクターも「誰が主役になってもおかしくない」と独特な世界観への思いを述べる。

 そんな中でも、特にお気に入りなのは山路和弘演じる、錦鯉センターを営んでいる“スケベ親父”の藤堂さん。作中ではバーでふと知り合った赤の他人に「俺の愚痴を聞け!」とくだを巻く厄介者のようにも描かれているが、神谷自身は「憧れもある」と明かす。
「夜にフラッと飲み屋へおもむき、愚痴を肴にして『じゃあ、明日も頑張ろう』と思えるのは人間臭くて好きですね。僕自身、年齢を重ねてきたからこそ共感できる部分も多く、ふだんダンディーな役柄の多い山路さんが演じているというのも味わいがあってそれもまたいい」とお気に入りのキャラクターなようだ。

 また、本作の舞台を思わせる京都については「なじみがなく修学旅行で行った記憶がある程度」と話す神谷だが、「碁盤目状になっていて、中心部には鴨川が流れていて寺社仏閣があるという、不思議な魅力のある街だからこそ奇妙奇天烈な話にも説得力が生まれる」と印象を吐露。自身は高校卒業後、都内の声優養成所へ通っていた当時に「お金はないけど、志だけはみなぎっていた」と振り返るが、作中の主人公・先輩の学生時代と本作を通して「重なる部分もある」と思いを巡らせていた。(取材・文・写真:カネコシュウヘイ)

 映画『夜は短し歩けよ乙女』は、4月7日から全国ロードショー。