その2万人にはそれぞれの生活があり、あの震災が起こる直前まで普段と同じように生活をしていたはずです。ビートたけしさんは週刊誌の紙面上で「そこには「1人が死んだ事件が2万件あった」ってことなんだよ」(『週刊ポスト』2011年4月1日号「21世紀毒談特別編」より引用)と述べていますが、まさに、そこには一人ひとりの生活があったのです。
そんな被災地で一人ひとりの死と向き合う一人の女性がいます。
復元納棺師の笹原留似子さんです。
復元納棺師は事故や災害などで傷ついた遺体を、生前の姿に重ね合わせて復元し、亡くなった人と遺族の最期の別れの場に立ち会い、棺に納めるまでのおごそかな儀式を執りおこないます。
笹原さんは震災後、被災した岩手県において遺族のグリーフ・ケアのボランティア活動を続けました。『心のおくりびと 東日本大震災 復元納棺師』(今西乃子/著、浜田一男/写真、金の星社/刊)には、そんな笹原さんの活動の様子がつづられています。
◇ ◇ ◇
「おつかれさまでした…」
笹原さんは、少女の頬に手を当てて、静かに、そしてはっきりとした声で言います。
彼女の前には、一人の女子高生の遺体。
口は開いたままで、目はかんぼつしており、波でもまれてぶつかったためか頬に傷があります。漆黒でまっすぐであっただろう髪の毛の間には砂がびっしりこびついており、その上から貝がらの破片や藻などがべったりとついています。
少女は、陸前高田市で避難所まで逃げたあと、その避難所が津波で流され亡くなりました。
その人の生きてきた証は肉体が消えても、思い出となり、遺族の心の中で生き続けます。だから、笹原さんは彼女と遺族のお別れの時を、思い出を継承する「始まる日」としています。
今生の別れの時だからこそ、きれいにしてあげたい。じまんのロングヘアをきれいに整えてあげたい。笹原さんはていねいに復元していきます。頬、目、まつ毛、鼻、口。遺族は、その少女と対面したとき「ああ……眠っているみたいだ」と涙をいっぱいにためています。
「手をにぎってあげてくれませんか……」
笹原さんは遺族に呼びかけます。その手にはぬくもりがあります。笹原さんの体温です。
復元納棺師は遺族と亡くなられた人の思い出をつなぎ、心の絆をとりもどすための仕事です。遺体の顔を「創る」のではなく、あくまでも生前の眠ったような顔に「もどす」のです。
『心のおくりびと 東日本大震災 復元納棺師』はそんな笹原さんの活動を追いかけたノンフィクション。
被災地は人々の様々な想いが通いながら、復興に向かって一歩一歩進んでいきます。その中で私たちは、一人ひとりの「死」を忘れずに、前に進んでいかなければいけないのではないでしょうか。
(新刊JP編集部)
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