露出の多いこの時期、街なかですれ違ったり、電車で隣になった女性を見て、ついついあらぬ妄想を抱いてしまったという経験は、男性なら一度や二度ではないはず。
 しかし、そんな“エッチな妄想”が相手にバレていないと思ったら大間違い。
実は、相手からはお見通しかもしれません。
 『脳には妙なクセがある』(池谷裕二/著、扶桑社/刊)は、「信頼」や「知ったかぶり」、「ブランド信仰」など、私たちを人間たらしめている行動や考え方が脳のどのような働きによって起こっているのかを解説した一冊。
 その中に、こんな面白い実験が紹介されています。

■性的妄想は、相手にバレている?
 アメリカ、ライス大学のチェン博士らは、「性的メッセージ」の化学感知についての研究を行っています。その一環として、彼らは20代の男性20人に「教育番組」と「アダルトビデオ」の2種類の映像を見せ、それぞれを見ている時に出た汗を集めて、19名の女性に嗅いでもらうという実験をしました。
 その結果、この2種類の汗が女性にとってどちらが好ましいということはなく、意識の上ではこれらは特別な違いはないことがわかりました。

 しかし、それぞれの汗を嗅いだ時の脳の働きを調べると、そこには大きな違いが。
 アダルトビデオを見ながら出した汗を嗅いだ時の方が、脳の「眼窩前頭野」や「紡錘状回」、「視床下部」といった部位が強く活動していたのです。
 「視床下部」はもともと性行為に関与する脳部位なのですが、「眼窩前頭野」は嗅覚、「紡錘状回」はどちらにも関係しません。この結果から、チェン博士らは「セクシャルな汗は“性”を超越した全般的な神経作用がある」と解釈し、これを「社会性化学知覚」と呼んでいます。
 無意識でのこととはいえ、女性の脳は“性的な汗”をしっかり知覚しているようです。そう考えるとおちおち妄想もできませんね。


 本書にはこの他にも、「“一番酔いやすいお酒”は何か?」「“ひらめき”と“直感”の違い」「恋愛と脳の関係」など、日常生活における身近なトピックを脳科学の見地から解説しています。
 私たちの行動や考えをつかさどる脳。
 その働きを知ることで役立つ場面は、案外たくさんあるのかもしれません。
(新刊JP編集部)