調査対象:飲食店を利用している20歳以上の女性300名
調査場所:ワイン居酒屋「カーヴ隠れや」首都圏店舗
質問項目:
問1 飲食店のトイレの用を足す以外の利用法はなんですか?
問2 その中で特に複数回したことはどれですか?
問3 飲食店のトイレに求めることはなんですか?
日本人が求めるサービスのトップ要素は清潔感。特に女性はその傾向が強くみられる。店舗のクリンリネス【編註:輝くような清潔さ】を徹底するのは当然で、ホコリや指紋の目立つガラス・鏡は拭き上げ、だらしないイメージを与えないよう、レジ周りは整理整頓する。だが「清潔感」は、ただクリンリネスを徹底するだけでなく、お店全体の空間の雰囲気まで考えて完成させるものだ。
そういう意味で、特に清潔感にプラスして、その雰囲気や機能まで考えなければならない場所は化粧室、すなわちトイレだ。従来とはトイレのあり方も機能も変わってきたといえる。
別に行ったアンケート調査では、女性客が飲食店を選ぶ基準のトップ3は「お店の雰囲気」「トイレ」「禁煙」であった。
禁煙は、最近急上昇してきたキーワードである。一時期は喫煙できないと飲食店は儲からないといわれたこともあるが、今は禁煙でなければ多くのお店は苦戦することになる。
だが、やはりお店を選ぶ基準の定番はトイレだ。だからこそ、飲食店やホテルなどのサービス業はトイレに対して、ことのほか気を配ってきた。飲食店やホテルのトイレは進化と深化をしてきている。清潔さを求められるのは当たり前だが、このトイレの変化はお客の求める清潔感が変わったのではなく、「トイレの使い方」が変わったことによるといえる。
では、女性客はトイレをどのように使っているのだろうか?
●女性客のトイレ利用法トップ101位:化粧・化粧直し(533P)
2位:メール(192P)
3位:ストッキング替え(189P)
4位:着替え(182P)
5位:考え事(124P)
6位:休憩(121P)
7位:トイレ内広告を読む(94P)
8位:電話(89P)
9位:スマートフォンでインターネット(88P)
10位:薬を飲む(67P)
「休憩」がランクインした理由には、「俺のイタリアン」などの立ち食い飲食店が増え、トイレで休むというパターンが増えたことが考えられる。また、最近のトイレは広くなり清潔感も増したので、休みやすくなったのもその一因。
また、2位に「メール」、8位に「電話」とあるあたり、客席で同席者の前での携帯電話の使用を遠慮して、トイレでメールをゆっくり打つなど、「携帯電話で話す、メールを打つ、ネットを見る」場所としても使用されることが多くなっていることがわかる。
そのほか、上位には「着替え」や「ストッキングを替える」が入っている。男性からすると、「そんなことしていたの?」と少々驚くところだ。ベスト10には入らなかったが「運動」という回答も多かった。
飲食店においてはQ(Quality/品質)、S(Service/サービス)、C(Cleanliness/清潔さ)が大事といわれ、この3つの質が高い店が繁盛するとされてきた。しかし今は、これらに加えてA(Atmosphere/空間)が要求されている。以前は「Cを確認するにはトイレを見ろ」と言われていたが、今はそれだけではない。トイレを見るのはAを確認するためでもある。清掃が行き届いているかどうかはもちろん、快適性をも提供しているかの判断基準となっているのである。
最近では、大手グルメサイトの検索条件に「女性用パウダールームあり」という項目を新たに加えたところもあり、利用客のトイレに対する関心は高まっていることがうかがえる。冒頭のアンケートの「トイレに求めること」として、「化粧ポーチを置く場所が欲しい」「油とり紙、綿棒などの化粧補助備品が欲しい」「鏡が大きいこと」など、化粧直しの利便性を求める声が多かった。
日本を訪れた外国人観光客が驚くこととして、「トイレがきれい、オシャレ、機能がすごい」という意見が多いが、日本人はトイレに対する意識が極めて高いといえる。
ちなみに、ほかにも、「ある程度の広さがほしい」「混まないこと」など、トイレ内でくつろげることを求める人も多く、リラックススペースとなっていることがうかがえる。
(文=氏家秀太/空間プロデューサー・ビジネスコンサルタント)