玩具メーカー大手タカラトミーが苦闘している。昨年12月には出資していた米投資ファンドTPGが出資分を損切りして資本提携を終了した。

トミーとタカラが経営統合したのが2006年で、13年3月期には初の最終赤字71億円を計上し、今期(14年3月期)も赤字が予測されている。

 トミカやプラレールなどで知られるタカラトミーの認知度は高いが、玩具メーカーというのは大きな業容ではない。トミー、タカラ、バンダイが業界大手だったが、前2社が統合し、バンダイはナムコと統合して現在に至っている。戦後日本の輸出振興に貢献したこれらの会社はすべて、同族企業として出発していた。

 筆者は1970年代の終わりにトミーに勤務したことがある。当時はトミー工業という社名で、入社面接で上原宗吉常務(当時)は「当社は、バンダイのようにテレビキャラクターのビジネスに走らないことを誇りにしています」と話してくれた。これが実は玩具メーカーとしてのトミーの経営下手を如実に物語っていた。

 バンダイは『機動戦士ガンダム』などのテレビ番組のスポンサーとなり、それらのキャラクター玩具を大量に販売し成長してきた。一方のトミーはタカラトミーとなって「リカちゃん人形」という「ハローキティ」に匹敵するような認知度のキャラクターを手にしたのだが、ライセンスビジネスを展開しきれていない。実際に動くメカニック的に優れた玩具をつくるのだけれど、いかんせん少子化の今、そのカテゴリーでビジネスを展開する限り、じり貧となってしまう。実際に業績は低迷し、13年3月期には138人の希望退職募集を行っている。

●期待の外国人社長登用

 このような状況で3代目オーナー社長である富山幹太郎氏が取った施策が、外国人社長の採用という大胆なものだ。
14年6月にオランダ人のハロルド・メイ氏を副社長に迎えたのだ。富山氏がCEO(最高経営責任者)、メイ氏がCOO(最高執行責任者)としてタカラトミーの経営に当たるとしている。メイ氏はオランダ人ではあるが在日期間が長く、幼少時代から主に日本で過ごしている。蘭英日のほかに数カ国語を駆使するという。

 ここ数年、LIXILの藤森義明社長やベネッセホールディングスの原田泳幸社長など、外資系もしくは外資系色の強い企業から日本のオーナー企業への転籍・活躍が目立ち、「プロ経営者の時代」などと囃されている。メイ氏もヘッドハンターを通じた「オープン・マーケット」での経営者調達の例だ。

 しかし、メイ氏がそうした「プロ経営者」なのかというと、現時点では不分明だ。藤森氏や原田氏のように前職での華やかな経歴やトラック・レコードをひっさげての登場ではない。ユニリーバでマーケティング・マネジャーを務め、日本コカ・コーラではマーケティング担当の副社長だったとはいえ、活躍が業界外にまで聞こえてその名が知られていたというわけではない。

 昨年10月には組織再編を行い、「幹部の平均年齢が5歳若返った」(メイ氏)という。工場や物流の無駄を削っているとも報じられているが、それは当然の施策ともいえる。1026種類あるトミカも「90%の利益は365種類から生まれている」とメイ氏は指摘し、本社の管理部門も企画・開発部門にシフトを考えているという。
打とうとしている手が小粒の感は否めず、そもそもまだ実行されていない。

「再生経営者は最初の6カ月が勝負」というのが筆者の経験則であり、黄金律だ。ファンドが損切りをした昨年12月がメイ氏の6カ月目に当たる。明けた新年、この再生経営者は、どんな大胆な改革の一手を打つのだろうか。真価が問われる。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)

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