大手回転寿司チェーンのファミリーレストラン化が加速している。

 ゼンショーホールディングス傘下の「はま寿司」は8月6日、「旨だし鶏塩ラーメン」を発売した。



 業界3位のくらコーポレーションが展開する「無添くら寿司」は、すしシャリを使ったカレーライスを7月31日に発売し、テレビCMで大々的に広告するなど、力を注いでいる。くら寿司は昨年も「イベリコ豚丼」や「イベリコとんこつラーメン」がヒットし、新たな客層開拓に成功している。

 業界最大手のあきんどスシローが展開する「スシロー」も、昨年4月に「出汁入り鶏がら醤油ラーメン」を発売したところ、1カ月で100万食を売り上げた。ほかにも複数のうどんメニューや、「苺ミルフィーユパフェ」などスイーツのラインナップも増えている。

 回転寿司業界の市場規模は、2012年度までしばらく横ばいだったが、ここ数年アベノミクス効果もあってか、わずかに拡大傾向にある。なかでも、あきんどスシロー、くらコーポレーション、「アトムボーイ」などを展開するアトムは高い伸び率を示している。
各社は、この上昇基調に乗って顧客層の拡大と客単価増を狙ってサイドメニュー開発に力を入れている。

●注目を集める、かっぱ寿司

 そんな勢力争いが繰り広げられるなか、業界2位のカッパ・クリエイトホールディングス(HD)が注目を集めている。昨年12月、居酒屋「甘太郎」などを展開するコロワイドに買収された。2期連続で赤字となり、展開する「かっぱ寿司」の不採算店を続々と閉鎖していた最中での買収劇だった。

 かっぱ寿司は業界内でも特に食材の輸入率が高かったが、アベノミクスの円安政策で海外から調達する食材が高騰し、コスト高に悩まされたのが最も大きな要因といわれている。

 なんとか売り上げを伸ばそうと、ファミリーマートで弁当を販売するなど手を広げたが、思うように効果は出ず、一方で店舗閉鎖に伴う損失や営業損失、減損損失などマイナスは膨らみ続けた。


 業界全体が好調にもかかわらず、かっぱ寿司は消費者に定着した「安くてまずい」という悪評を払拭できず低迷している。状況はマクドナルドとよく似ている。一時期、かっぱ寿司の原価率は30%台だった。

 競合のスシローやくら寿司の原価率は約50%で、かっぱ寿司に比べて高品質な食材を使い続けたことで、かっぱ寿司は品質の低さが鮮明になり決定的な客離れを招いた。その後、食材の品質向上などに取り組んだが、消費者に受け入れられず、買収されるに至った。

 そんなかっぱクリエイトHDを買収したコロワイドは、飲食店運営に定評がある。
主力の居酒屋事業が伸び悩み始めたため、マルチ化戦略の一環として回転寿司にも参入したという狙いもある。営業黒字を続けており、市場での評価も高い。

 外食産業のアナリストは、次のように分析する。

「飲食店で一度『まずい』とのレッテルを貼られたら、回復させるのは並大抵のことではありません。今は黒字のコロワイドですが、自己資金比率は低いため、赤字事業のかっぱ寿司を無策のまま放置することはあり得ません。そろそろ大胆な施策を打つはずです。
ライバルが新メニューを続々発表するなか、かっぱ寿司がおとなしいのは不気味です。コロワイドは、かっぱ寿司の看板を下ろして別のチェーン店として展開させるのではないかとの見方も広まっています」

 どのような施策を取るにしても、業界2位の店舗数を誇るかっぱ寿司には、まだ大きな影響力がある。業界を揺るがすような起死回生の策はあるのか。しばらく目が離せない。
(文=編集部)