スマートフォン(スマホ)やPC販売の低迷、新興国の成長鈍化などのマイナス要因に加えて、ここにきて大きな収益圧迫要因となっているのが円高の進行である。2015年に1ドル120円前後で推移していた為替レートは、ついに再び1ドル100円を切る水準にまで円高傾向が進んだ。

円高は自動車、電機業界の業績を直撃している。

●相次ぐ大手電子部品メーカー誤算

 クリアリーフ総研の集計では、2017年3月期第1四半期(4~6月)において、国内電子部品製造の上場会社約40社は、全体合算集計で減収減益にとどまった。また、全体のほぼ9割のメーカーが前年同期比で減収減益だった。その理由はそれぞれだが、円高により売り上げが目減りし、利益を圧迫したことはいうまでもない。

 第1四半期に最終欠損だった主な電子部品上場メーカーとしては、イビデン、サンケン電気、ミツミ電機、ホシデン、メイコー、FDK、双葉電子工業、SMK、北陸電気工業、大真空、富士通コンポーネント、日本電波工業、田淵電機、三社電機製作所、帝国通信工業、NKKスイッチズ、双信電機、東京コスモス電機、松尾電機などがある。さらにこのうちイビデン、ミツミ電機、双信電機、松尾電機などは年間通期も赤字にとどまることを予想している。


●為替の影響と大手の社内想定レート

「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)の試算では、円高が仮に5%進んだ場合、トヨタ自動車はほぼ1兆円、本田技研工業(ホンダ)や日産自動車は5,000億円の売り上げの目減り(減収)につながるほか、電機業界でもソニーが2,600億円、日立製作所が2,000億円、パナソニックが1,900億円のそれぞれ減収要因になるとみている。さらに利益面では、これに外貨建て資産の減損などが加わることになる。

 実際に日本電産は、1円の円高によって売上高で70億円の目減りとなり、営業利益を11億円圧迫するとしているほか、三菱電機は17年3月期第1四半期(16年4~6月)に売上高で590億円の円高による影響があった。各社とも四半期ごと、月ごとに社内為替レートは見直しを行っているが、実勢は必ずしも追いついていない。

 17年第1四半期平均でみると、電機大手はパナソニックが1ドル108円、NECが110円、日立製作所が108円(通期では110円)、ソニーが108円、東芝が103円、三菱電機は111円(第2四半期以降は105円)となっている。ちなみに、各社は前期末時点ではパナソニック、NECが115円、ソニー、東芝が113円、富士通が110円だった。
各社とも3カ月で大きく見直している。

 前期末時点では、上場大手は過半の企業が1ドル110円という想定レートだった。電機業界でも富士電機、任天堂、オムロン、富士通、アルプス電気、フォスター電機、アルパイン、デンソー、村田製作所、キヤノン、リコーなどが110円で予算を組んでいた。足元レートの差異は誤算となっている。

●業績予想の下方修正企業

 クリアリーフ総研では、電機業界の業績予想下方修正企業一覧をまとめており、そのなかから本稿では数社をピックアップした。

 17年3月期も通期予想を下方修正している企業が少なくないが、まだ半年あるということもあり、同年中間期業績予想のみを下方修正しているところもある。
一方、12月が決算月のところは、年内に為替水準が急転するとは考えにくいと判断しており、大きく下方修正しているところが目立つ。

 12月期決算の企業で16年度業績予想を下方修正したところとしては、エルナー、タムロン、倉元製作所などがある。エルナーは、2本柱の事業のうち、プリント基板が低迷、コンデンサは堅調だが円高の影響を受け、さらに課徴金の特損で最終欠損となる。16年12月期は従来予想では5,000万円の最終黒字確保を見込んでいたが、5億円の最終欠損に見直した。また、倉元製作所も11億円の最終黒字見通しだったのを、10億円の最終欠損に見直し、タムロンは黒字こそ確保するものの当期純利益を33億円から17億8,000万円に下方修正している。

 また通期予想はまだ修正していないが、中間期業績予想を大きく下方修正した企業としては、日本電子、ミツミ電機などがある。
日本電子は、急激な円高進行に加え、上期の理化学計測機器および医療機器の販売低迷などがあり、9月中間の当期純利益を5億円の赤字から27億円の赤字に、ミツミ電機は円高による為替差損24億6,400万円を営業外費用として計上することなどから、当期純利益を40億円の赤字から60億円の赤字にそれぞれ見直した。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)