テレビ向けの液晶パネル製造で世界トップクラスの技術を持つシャープ。その技術の粋をつぎ込んだ「虎の子」の堺工場(大阪府堺市)のノウハウや技術を使い、2013年までに中国・南京に世界最新鋭(第10世代)の液晶パネル工場を新設する方針を固めたことが、本誌の取材でわかった。
その現場を追いかけた。(『週刊ダイヤモンド』編集部 後藤直義、藤田章夫)

 1月17日午前。大阪府堺市の臨海エリアに広がるシャープの世界最新鋭の工場群「グリーンフロント堺」(敷地127万平方メートル)の正門ゲートに、中国政府関係者らを乗せた1台のリムジンバスが吸い込まれていった。

 目的は水面下で進む新設工場のモデルとなる堺工場の視察だ。最新鋭の液晶パネル工場に加え、材料を提供するガラスメーカーや大手印刷会社も訪問。メンバーには中国の経済政策を担い、国家プロジェクトの許認可に大きな力を持つ「中国国家発展改革委員会(NDRC)」の幹部の姿もあった。

 その中国政府関係者を出迎えたシャープ側は、急きょ海外出張をキャンセルした片山幹雄社長が応対。そうとうな力の入れようであることが見て取れる。

「中国にとって堺工場は、どうしても欲しい工場だ。これまでと違い、一気にシャープの立場が優位になった」。あるシャープ幹部は、この視察ツアーを前に、中国・南京でのプロジェクトに強い自信をのぞかせた。液晶パネル事業を一大産業に育て上げる考えの中国にとって世界最先端の液晶パネル工場は、喉から手が出るほど欲しい技術が満載だからだ。


 中国でふくらみ続けるテレビ市場を狙って、これまで日本、韓国、台湾の有力メーカーが液晶パネル工場の新設計画をこぞって申請してきた(上の図参照)。

 現地生産ができれば部品調達や運送費、人件費などコスト面で優位になるためだ。だが、限られた認可枠をめぐり、シャープは苦戦を強いられてきた。

 シャープが中国進出のパートナーに選んだのは、中国政府系の大手電機・電子メーカーである中国電子信息産業集団(CEC)と、傘下の南京中電熊猫信息産業集団(CECパンダ)。3社を中心に南京政府の後押しも受け、同市で液晶パネルの一大生産拠点の構築を進めてきた。

 亀山第1工場(三重県亀山市)の第6世代(G6)の液晶パネル製造ラインを、CECパンダに売却し、今年3月には技術協力して稼働が始まる。しかし主力の第8世代(G8)の工場認可では劣勢とされ、「手詰まりになっている」とささやかれていた。

 そこでシャープが、一発逆転を狙い担ぎ出したのが、巨大なマザーガラス(2880ミリメートル×3130ミリメートル)を採用する最新鋭の第10 世代(G10)工場だ。

 液晶パネルを切り出す母体のマザーガラスが大きければ大きいほど、効率的に液晶パネルを生産できるため、競争力は向上する。G10は世界で唯一、シャープの堺工場が実現している大きさで、この最先端設備と技術が、中国政府への強いアピールになったというわけだ。

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