1990年代後半に社会問題となった「援助交際」。女子高生などの未成年や若い女性による売春行為を示す言葉だが、「格差社会」が進み、貧困に陥った若い女性の中には、いまだ援助交際を続ける者が絶えない。

ただし、彼女らの間では「援助交際」「援交」という言葉自体がもはや“死語”となりつつあり、“援助”に対する意識や状況も大きく変わっている。(フリーライター 有山千春)

“募金”と呼ぶ
現在の“援助交際”

 1月20日発売の写真週刊誌『FRIDAY』で、17歳の女子高生との交際疑惑を報じられたお笑い芸人の狩野英孝が、翌日には会見、無期限の謹慎を発表したことは記憶に新しい。

 この一件に際し、一時、狩野のウィキペディアの名前が「狩野援交」に書き換えられたほか、SNS上でも「狩野援交に改名しろよ」などといったつぶやきが散見された。1996年前後、当時の“コギャル”という名の女子高生たちが、売春をライトな言葉に言い換えた“援助交際”から着想を得ているのは一目瞭然だ。

 狩野の相手である女子高生と同世代の、関東近郊在住の女子高生、瑠々愛(るるあ・仮名・16歳)は言う。

「えんじょこうさい? ってなに? 知らない」

 彼女とは、10~20代の金銭事情を取材する過程で知り合い、援助交際をしていることを匂わせたにもかかわらず、この発言である。

しかし、シラを切っている訳ではなかった。その言葉を本当に知らなかったようで、筆者は説明した。

 当時は普通の女子高生たちが、街で“おっさん”から声をかけられ、もしくは出会い系サイトやテレクラなどで相手を見つけ、金銭交渉をもちかけ、性行為をし、大金を得ていたこと。相場は4万円ほどだったこと。金はブランド品のバッグなどに変わっていたこと。

 すると瑠々愛は、ようやく納得したようだった。

「あー、“募金”のことか。“えんこー”って今は言わないと思う。てか、4万ってマジで? それにウチ、別に“援助交際”しているつもりないんだけど」

「しているつもりはない」と言う通り、確かに瑠々愛は積極的に「金稼ぎ」をしているわけではなかった。きっかけは1年前、「彼氏が連絡くれなくて寂しかった時期」に、SNS上で絡んできた男と会い、ゆきずりに体の関係を結んだことが始まりだった。

「終わったあと、タバコ買ってきてって頼んだんだけど、ウチ金なくて。そしたら、『じゃあ5000円ね』って金くれて」

かつてのように
大金を求めない

 以来、性が金に代わることを知った瑠々愛は、「金欠になったら、そのときちょうどSNSで絡んで来きた地元住み男に返事して」、会い、性行為をしたという。

ただし、あらかじめ金銭交渉はしなかった。

「終わったあとに『金ないんだよね』と言うと、『いくら?』って聞かれるから。5000円とか、煙草ワンカートンとかもらった」

 援助交際が社会問題化した当時の“相場”とは比べ物にならないほど安価だが、彼女は大金を求めない。

「こういうことやる人って、一人暮らしの人が多いと思うんで、毎回1万円とかもらってたら可哀想だし。それに、安い方がリピーターになってくれるし……」

 そうして細々と稼いだ金は、年間30万円ほどになり、服などに変わった。とはいっても、決して高価なブランド品ではない。

購入するのは主に、地元のショッピングモールで販売されている量産品の安価な服だ。

「あんま金使わない。その度にちょこちょこ、服以外だと、タバコ代に使っちゃうくらい」

 現在は時給720円のアルバイトをしているため、“募金活動”は休止中だが、「募金の方が楽」だと言う。

「ヤルだけだもん。ただ、妊娠とかが怖いから、それが面倒くさいからやめてる。別にお金持ちになりたいとは思わないし。

財布見て金入ってなかったら、『今日、募金するか』って思うだけだから」

 多くを求めず、慎ましく、謙虚に行う様は、彼女たちにとってまさしく“募金”なのかもしれない。

ファンから“援助”を受ける
地下アイドル

 地下アイドルのほなみ(仮名・20歳)は、地方にある実家が「貧乏だったから、上京するまでファミレスにも行ったことがなかった」と言う。しかし、そこに悲惨さはなく、アイドルらしく弾ける笑顔でこう話す。

「実家では野菜炒めが豪華なご飯です。親の給料日前になると、小麦粉を練ったお団子をよく食べていましたね。上京して、アイドル仲間がコンビニでお菓子を買っているのを見て、すごいなあ! と思いました。

だって、コンビニってめっちゃセレブの場所ですよね?」

「アイドル活動」と言っても、実態はほとんど趣味のようなものである。定収入などないに等しい彼女だが、日々レッスンやライブがあるため、アルバイトはできない。そこで重宝しているのが、ファンからの“援助”だという。

「先輩たちがアドバイスしてくれたんですよ、『スタバカードが欲しいって言っとけ』って。だからライブとかでアピールすると、5000円分~1万円分、本当に送ってくれるんです。○○さん(元国民的アイドル、現女優)クラスになると、10万円分もらえるみたい。メンバーみんなに配ってたって。でも私は、そこまではいらないです。だって、なんか怖いですもん。贅沢に慣れていないし、身の丈で十分です」

 そんな中、事務所の方針により、ファンからの物品を一切受け付けていないアイドルもいるという。

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