日本人の暮らしぶりが、データから読み取れる国勢調査。今回は、男性が多い街ランキングと、その背景を解説してみよう。
共通するのは「工場」
前回の記事「圧倒的に女性が多い街ランキング・ベスト30!男女比が偏る意外な理由」に続いて国勢調査の男女比率、今回は男が多い市区町村である(集計対象は人口5万人以上、764市区町村、以下同)。前回紹介した女性が多い市区町村の場合、就職で大量に流入するか、高齢化で女性が必然的に多くなるという、大きく2つの要因があった。
男性の場合はどうか。
男性比率が高くなるもっとも大きな要因としては、工場労働者がある。生産施設が巨大になる自動車関連産業などが立地する市区町村だ。
上位30位まででは愛知県の各市がそれにあたる。愛知県以外でも横浜市鶴見区、茨城県鹿嶋市、神奈川県厚木市にもそれぞれ巨大製造業が立地している。滋賀県湖南市のように、人口5万人規模の小さな市に滋賀県の中核となる湖南工業団地が存在するような場合も男性の比率が高くなる。
これらの都市では、工場で働く若い独身者や期間工と呼ばれる非正規労働者、外国からの出稼ぎなど、様々な形で男が集まってくるのは必然といえる。
「男が多い街トップ10」は、以下の通りだ。
自衛隊駐屯地や刑務所も男性比率を押し上げる
生産拠点の立地以外の要因もいくつかある。それを見るポイントは、「施設等の世帯割合」に関するデータだ。
国勢調査においては、世帯を「一般」と「施設等」とに分ける。この施設等とは、学校の寮・寄宿舎、病院・療養所、社会施設、自衛隊、矯正施設などで生活している世帯を指す。全国平均は2.2%で、これを大きく上回っている市区町村には、特殊な要素があり、それが男女比にも大きな影響を与えている場合がある。
まずは自衛隊。自衛隊員は法律で指定された場所に居住する義務があり、特に階級の低い単身者は基地、駐屯地内の宿舎に住むために、その地域の男性比は高くなる。海上自衛官のうち艦艇勤務者(いわゆる船乗り)は住所も船になる(そして統計上は基地の所在地として集計される)などの特殊要因がある。
典型的なのは陸上自衛隊の駐屯地が4つも集中する静岡県御殿場市で、施設等の世帯比率が全国平均比率の倍以上の4.7%に上る。
愛知県みよし市は豊田市に隣接する自動車産業の都市でもあるのだが、他の近隣都市との大きな違いが「施設等の世帯」の人数の割合である。愛知県の他の都市は1%台で全国平均を大きく下回るのだが、みよし市だけは4.2%と倍近い高率になる。
それが男性の多い愛知県各都市のなかで男性比率がトップになる要因だが、この市にあるのは名古屋刑務所である。この刑務所の収容定員は2426人で日本最大級。すべて男性受刑者で、これが男性住民数の上積みになっているのだ。