田中ウルヴェ京×山本隆三対談 世界からみる日本のエネルギーミックス<前編>PR

2017年9月26日 10時55分 (2017年9月29日 10時16分 更新)
2020年の東京五輪を前に、世界から見た日本を意識する機会も増えてきた。各国で異なる電力事情、日本は世界からどのように見られているのか。ソウル五輪・シンクロ銅メダリストで、IOC(国際オリンピック委員会)マーケティング委員の田中ウルヴェ京氏と、常葉大学経営学部教授の山本隆三氏が対談。世界から見た「日本のエネルギーミックス」とは。

世界的にも安定した日本の電気



田中ウルヴェ京氏(以下 田中) 海外の電力事情でまず思い出されるのは、80年代の選手時代。ヨーロッパに行くと、とにかく電気が不安定でした。特にスイスのツークという田舎町に行ったときは、シンクロナイズドスイミングの練習中に音楽がちょくちょく切れてしまうんです。電気がとまることなんて、日本ではほとんど経験がないので驚きました。

山本隆三氏(以下 山本) 僕がアメリカのペンシルベニア州にいた頃によく経験したのは、電灯、蛍光灯がちらつくこと。アメリカ人はそういう状態を「ブラウンアウト」と呼んでいます。「ブラックアウト」が停電で、ブラック(真っ暗)まではいかないアウト、電圧低下によって電気機器が正常に動作しなくなるんです。アメリカではそんなことがよくあるし、州によって電気料金も相当違います。



田中 日本はその点、海外に比べて安定していますよね。長野五輪の招致活動で90年代前半にパキスタンに行かせていただいたときは、一流ホテルをとってもらったのに、シャワーが止まるわ、停電するわで、驚いたこともあります。海外に行くと、日本の当たり前のサービスがいかにすごいかわかりますよね。

山本 夜間に衛星から撮った写真をつなぎ合わせた世界地図を見ると、日本列島は北海道から沖縄までくっきりわかるんですよね。逆に、アフリカのサブサハラ(サハラ砂漠より南に位置する地域)は真っ暗なんです。サブサハラには10億人が住んでいますが、電気のある人は3分の1しかいません。しかも、働いている人の大半が農業に従事しているんですが、そういう人たちがいま温暖化で大変な状況になっています。

田中 温暖化がどのように影響しているんですか。

山本 温暖化の影響で、雨が降る地域はさらに降るようになり、逆に降らない地域は全く降らなくなると言われているんですが、アフリカはもともと雨の降らない地域が多いので、水がほとんどなくなってしまいます。すると、農業ができなくなる。

田中 日本人は「不便」というだけで、凄くストレスを感じてしまいますが、温暖化の影響も深刻ですね。停電がなく、安定した日本の電気事情ですが、料金はどうなのでしょうか。

山本 全国平均で見た場合、日本の電気料金は震災前に比べて高くなっており、家庭向けの電気料金の単価は最大時には約25%上昇しています。

原子力の停止に伴う燃料費増加額は15.5兆円に。


田中 なぜ上昇しているのですか。

山本 東日本大震災後、原子力発電所の停止が続いたことで、原油、石炭、天然ガスといった化石燃料の購入量が増加しています。累積での燃料費の増加額は2015年度末までに14.2兆円に達し、2016年度の推計値も含めると15.5兆円に達すると試算されています。さらに、2012年7月に導入された、再生可能エネルギー導入のための「固定価格買取制度(FIT)」による消費者負担分(賦課金)の上昇も大きくなっています。賦課金は年々増加し、現在では標準的な家庭で年間8,232円を支払っています。



田中 負担する金額がかなり増えているんですね。

山本 震災で原子力が止まり、化石燃料の輸入量が増加するようになってから、2014年度の最大時には製造業だけで1年間の電気代が一兆二千億円くらい増えています。この金額は月例給の人件費にしたら3%以上。電気代の支払いが増えたために人件費にお金が回せない、給料が上がらない状態になっている面もあります(2017年度 経済産業省調べ)。

田中 影響の大きさに驚きます。

山本 15.5兆円というと金額が大き過ぎて実感が湧きにくいと思いますが、これは2014年度消費税の一般会計税収(約16兆円)とほぼ同じ規模になります。今の日本の電気は約8割を火力発電に頼っており、原子力、水力・太陽光・風力などの再生可能エネルギーも含め、もっとバランスを考えることが必要です。


電気事業連合会

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