
■木村カエラ/【KAELA presents 『CHRISTMAS ~Say ho-ho-ho!!~』LIVE】
2015.12.25(FRI) at 東京・昭和女子大学 人見記念講堂
(※画像8点)
ハッピーな空気に包まれ笑顔が連鎖したクリスマスライブ
春から夏にかけてライブハウスを巡る全国ツアーを、9月に新曲「EGG」のリリースに合わせて改修直前の渋谷公会堂でフリーライブを行うなど、精力的に2015年を駆け抜けた木村カエラ。彼女のキャリアで初となるクリスマスワンマンライブが昭和女子大学 人見記念講堂で開催された。
私立女子大の中にあるホールということもあり、どこかアカデミックで落ち着いた雰囲気の会場には、小さな子供連れのファンが目立つ。そんなところにも、ライブハウスには足を運びにくいファミリーへの、カエラの密かな気配りを感じた。
ホールの舞台にはつきものの2枚の緞帳がうやうやしく垂れ下がり、ステージ上をうかがい知ることはできない。一体どんなセットや布陣でライブを見せてくれるのか、ますます期待は膨らむばかりだ。

おもむろに会場が暗くなったかと思いきや、赤い緞帳のちょうど真ん中から、カエラがちょこんと顔だけのぞかせた。その意外な登場の仕方に、ファンは大興奮。「特別な夜」を予感させるスタートとなった。
にわかに幕がパッと開き、「メリークリスマス!」と叫ぶと、驚きの声は大歓声へと変わった。この日は、カエラの音楽制作ブレインでもあるヒイズミマサユ機によるキーボードを始め、DJ、ベースというギターとドラムレスのユニークな編成に加え、総勢7名のストリングス(ホーリーナイトストリングス、とカエラが命名していた)が彼女の仲間たちだ。
ポップでキュートなウィンターソング「A winter fairy is melting a snowman」で幕を開け、続く、美バラード「Snowdome」のイントロが流れると多くの女性ファンが歓喜の声をあげた。切なくも温かなバラードは、いつ聴いても胸にしみじみとくるが、流麗なストリングスの音色がさらに叙情的なムードを盛り上げるのに大いに役立っていた。

「みなさん、こんばんは!クリスマスの大事な日に来てくれてとても嬉しいです。
冒頭は季節感いっぱいの冬ソングを歌いつつ、安易にそれで始終するような木村カエラではない。走るビートに心がはやるアップチューン「HERO」や、アウトロでカエラがキーボードを連弾する場面も見られた「Phone」ではドラムンベースのビートが轟くなど、どんどんと踊れる夜へと誘っていく。ベースとキーボード、DJのプレイならではのサウンドで、ホールは瞬く間にクラブのフロアと化した。
そうやって、クールにカッコよく決めたかと思えば、MCでは、ファンからの「可愛い!」の声に、「え?! 知ってる(笑)」とおどけたりして実に和やかなムード。

「懐かしい歌をやりました。(歌詞の)<こんがらがって>っていうのは、黒電話の(コードの)こと。そんな風に(コードが絡まったり)することもなくなるなぁって思って、なくなってしまうことをあえて歌詞に書きました。……だけど、私、電話かけるの苦手なんだよね(笑)」。
一見、他愛のない言葉に聞こえるが、木村カエラというアーティストの繊細さや視点の鋭さが垣間見えたような気がした。
寓話や不思議な世界に誘われるような独特の世界観の漂う「WONDER Volt」は、カエラはあたかも歌詞の世界の住人となりパントマイムのようにシアトリカルに踊り、楽曲を体全体で表現。
赤や青、緑など色とりどりのレイザー光線がホールを縦横無尽に貫く「8eightEIGHT8」では、黒づくめの総勢8名のダンサー、ブラックスターズを引き連れて、体をくねらすように怪しげに踊って観客を魅了。ビートの高揚感や抑揚あるストリングスのドラマ性、カエラの伸びやかな歌声と人心を惹きつけるパフォーマンスに呼応するように、サビでは大合唱になるなど一体感もどんどんと加速していった。

「すごく楽しかったね! でも、『8EIGHT8』とか歌ってると悪の道に引きずり込まれそうになるよ(笑)」。直前まで艶かしい表情をしていた同一人物とは思えない親しみやすさで話し始めたカエラ。バンドメンバーがもらったクリスマスプレゼントの話題に花を咲かせつつ、「みなさん、私、アコギはじめました!」と突如、報告。話の流れから察するに、きっとこれがカエラ流のクリスマスプレゼントということなのだろう。シャイな人だから、そんなことはおくびにも出さないが。
「いつになっても挑戦を忘れちゃいけないなって思って、少し前から練習しました。でもさ、これをやっちゃうと“癒し系”とかって言われるんじゃないか心配で(笑)」と言いながら照れ笑い。「みんなも歌ったり、手拍子してくれ!」と男気溢れるトークとともに、人気曲「リルラ リルハ」の弾き語りを始めた。
どんなことも“初めて”はとても緊張するものだ。

格調高いストリングスの音色によって不屈のメッセージがよりスケール大きく響き渡った「TODAY IS A NEW DAY」から、いよいよ後半戦へ。<そばにいるよ>と寄り添うように歌いかける「EGG」で、シンプルなサウンドで愛の深さを十分に伝えたかと思えば、グリーンのレイザー光線が描く円の中で歌う「Circle」は、ダークなビートによって静かな高揚感を帯び、いつしかオーディエンスはタオルをくるくると振り回して、不思議なパワーを持つ楽曲に共振していた。
「今日のタイトルに“Say ho-ho-ho!!”って入れたんだけど、サンタさんの言葉ってことでいいかなと持ってたんです。でも、マネージャーさんから『一体ライブのどこでsay ho〜をやるんですか』って言われて(笑)。だからここでやってもいいですか? でも、やったことないから失敗するかもしれない……」
そういえば、様々なジャンルの音楽を吸収してアウトプットしているカエラだが、意外にもヒップホップ系に振り切ることは多くない。勇気を振り絞ってカエラが、「セイ、ホー!」と叫ぶと、後に続いて2000人の「Ho Ho」がこだまのように返り、とたちまち笑顔に。何度もそのやりとりが続き、「楽しいねー! よし、満足じゃ(笑)。今度はラジカセ担いでやるね」とご満悦の様子だった。

「さて、ここからが最後のブロックです!」と怒涛の終盤になだれ込んだ。
通常のバンド編成ではないアレンジによって特別感を存分に魅せながらも、辛口のデジタルビートに振り切ったサウンドが実に痛快だった。一見、対極にあるようなストリングスのダイナミズムと無機質なビートが相まって、ややもすると甘ったるくなりがちな聖夜に新鮮で聞き応えのある音色を届けてくれたのだった。大上段に構えてすごいことをするのではなく、さらっと大胆なチャレンジをやり遂げてしまう木村カエラというアーティストの本領が見えたと同時に、2016年にはどんな挑戦をして私たちを驚かせ、楽しませてくれるか今から待ち遠しい。
アンコールでは、バンドメンバー3人がトナカイのカチューシャをして、雪山で子供が使うような赤いソリに乗ったカエラ・サンタを引っぱって再登場。

「さっきはみんながサンタって言ったけど、トナカイになっちゃったね」と嬉しそうに笑うカエラ。サンタ帽を脱ごうとすると、観客から残念がる声が多数上がり、「え? じゃあ、つけとこうかな」と、そのままサンタ姿で「Magic Music」へ。ハイキックや投げキッスなど、ファンが喜ぶパフォーマンスもてんこ盛り。サビでは「みんなの笑顔が見たい!!」と大合唱になったのは言うまでもない。
「今日は来てくださって、一緒の時間を過ごしてくれて本当にありがとうございました。大人バージョンのアレンジに、すぐに(慣れて)ついてきてくれたのがすごいなって思いました。
ウォークテンポのウォームなナンバー「happiness!!」を、誰よりも満面の笑顔を浮かべて歌った木村カエラ。笑顔が連鎖した会場はハッピーな空気に包まれ、誰もが心に温かな忘れがたい大切なものをもらった夜だった。
(取材・文/橘川有子)
≪セットリスト≫
1. A winter fairy is melting a snowman
2. Snowdome
3. Whatever are you looking for?
4. HERO
5. Phone
6. WONDER Volt
7. 8EIGHT8
8. Yellow(remix version)
9. マスタッシュ
10. リルラ リルハ
11. TODAY IS A NEW DAY
12. EGG
13. Circle
14. Jasper
15. TREE CLIMBERS
16. sonic manic
17. BEAT
<アンコール>
1. Magic Music
2. happiness!!!
≪リリース情報≫
木村カエラ バーチャルリアリティ・ライブムービー
『KAELA LIVE VR』
2015.12.24リリース
【『KAELA LIVE VR』アプリ】
¥1,000(税抜)
[収録曲]
1. one more
2. c'mon
3. TODAY IS A NEW DAY
【VRゴーグル(KAELA ver.)】
¥3,000(税抜)
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