高橋秀樹[放送作家]

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テレビの、特にバラエティショウ形式のものにおいて、笑いが必須であることは言を俟たない。しかし、この笑いについて、基礎的な知識が欠けているものが実に多い。


・基本はボケとツッコミなのか?
・振りと落ちなのか?
・振り落ちフォローなのか?

ここまで読んで、なんのことかわからない人はこの先は読んでも無駄である。

「ボケとツッコミ」この場合、ツッコミが何たるかを理解しておく必要がある。ツッコミはその先に「ボケがどうしたら良いか?」の指針を出すことである。たとえば「もっと役に立つ物にしなさい」というセリフは、ツッコミである。ボケに指示を出している。こんな直接的な指示はダメであるが、ふるさとを思って一言、「あ母さん!」と叫ぶのもツッコミである。


ところが芸人やディレクターでこれを勘違いしているものがいる。

“「やめろよ」「なんだそれ」”

これらはツッコミのセリフではなく「落とし」のセリフである。これで終わり、トークでもVTRでも、そのあと話しは続かない、舞台で言えば幕を閉めるようなものだ。もちろん「やめろよ」が「やめるな」という指示としてウラのセリフとして理解できるならば、これはツッコミである。

つまり、「ボケ落とし、ボケ落とし、ボケ落とし・・・」と続く話は素人でもできることである。この場合は、ネタ数がものすごく多く必要になる。
サンドウィッチマンナイツの漫才、古くはB&Bや、ツービートも相方の事情でこの型であった。

振りと落ちは若干進化したカタチ。ただし、この場合も落ちを落としと勘違いしてはいけない。「落ち」は「終わりの記号」ではない。落語の下げのような用途ではない。落ちは、小説でいう開かれた結末にする必要がある。
「落ちた」この後はどうなるんだろう。それを余韻と呼んでもいいが、笑いではフォローと呼ぶことが多い。

ということで、話は「振り落ちフォロー」に移る。

散々いじっておいて可哀想にになったところで「でも、こいついい奴なんです」それが、直接的に言えばフォローである。ただし、フォローには様々なパターンがあることが容易に想像がつくだろう。繰り返し、リアクション、沈黙、暗転、皆フォローである。


「ボケとツッコミ」「振りと落ち」「振り落ちフォロー」とあって、わけがわからなくなる人にはこの用語がいいかもしれない。

“「振り、こなし、受け」”

である。「振り」は決して、一般の人やバカな芸人が思っているツッコミではないことをくり返し述べておく。「振り」は指示である。しかも、直接的な指示であってはならない。できるだけ「的確であいまいな指示」である。


「こなし」は、ただのボケではない。「ひとつ足す」つまり、「ひとつ余計なことをする」のである。振りの指示を見事に受け止めて「こなして」から、「振り」役に返してやるのである。

受けはその後の展開のことである。その後の展開を予感させることが必要だ。

こういうことを書くと「これ以外のものもある!」というバカが必ずいるが、これは原則であって、知って初めて、そこから変形が、もしくは発明が生まれることは言うまでもない。


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