
小池知事、築地市場の移転延期を正式発表 理由は安全性への懸念など、問題点まとめ
8月31日、東京都の小池百合子知事は築地市場の豊洲市場への移転延期を正式に発表した。理由として「安全性への懸念」「巨額かつ不透明な費用」「情報公開の不足」の3点を挙げている。そこで、現在移転の壁となっている問題の数々を整理した。
築地市場の移転延期は「都民ファースト」を考えた結果
小池百合子都知事は8月16日、築地市場と移転先の豊洲市場を視察し、移転について「リオ五輪出張から帰国後、総合的に考えて結論を出す」と述べていた。そして31日、都庁で記者会見を開き、正式に豊洲市場への移転延期を発表した。会見で小池都知事は以下のように説明したという。
「かねてより都民ファーストと述べさせていただいた。都民・市場で働く人にとって納得いくものか?と考え、納得いくものであるべきだと思った」として、「小池路線では『既定路線でしょ』『一度作ってしまったのだから何も考えなくてよい』という考え方はとりません。情報公開をして都民の利益を第一に、特には政策の変更もして都政運営をする」とも話した。
小池百合子知事、築地市場の移転延期を表明 「『既定路線でしょ』とはならない」
築地市場の移転 そもそもなぜ豊洲なのか?
築地市場が開場してから75年以上が経過した。そして施設の老朽化や建物の破損が進んだため移転が検討された豊洲。移転先に選ばれたのは理由がある。
移転先の条件としては、
1.敷地が狭隘で、抜本的な施設改善が困難な築地市場に対し、高度な品質管理・衛生管理ができる卸・仲卸売場に加え、物流の効率化を図るための広い駐車場や荷さばきスペースを配置できる約40ヘクタールのまとまった敷地が確保できること
2.大消費地である都心部の周辺で、輸送時間やコストの観点から高速道路や幹線道路にアクセスしやすい交通条件の良好な位置にあること
3.築地がこれまで築き上げた商圏に近く、機能・経営面で継続性が保てる位置にあること
などが挙げられ、これらの条件をもとに検討を行った結果、すべての条件を満たす豊洲地区が移転先として選ばれました。
豊洲市場について - 東京都中央卸売市場
豊洲市場の土壌汚染が問題に…脅かされる「食の安全」
移転が延期に決まった原因として、大きく取り上げられているのが移転予定地の土壌汚染問題だ。
豊洲新市場の予定地は、昭和29年から海面の埋立てが始まり、ガスの製造工場が建設され、昭和31年から昭和63年まで、都市ガスの製造・供給が行われていました。こういった土壌汚染の問題があるにも関わらず、十分な調査を完了させずに本来の開場日(11月7日)は設定されていたようだ。
予定地の土壌汚染は、7つの物質(ベンゼン、シアン化合物、ヒ素、鉛、水銀、六価クロム、カドミウム)による、土壌及び地下水(六価クロムを除く)の汚染が確認されています。
豊洲市場について - 東京都中央卸売市場
小池氏は地下水汚染の有無を調べるモニタリング調査の終了前に開場日が設定されていることを問題視。今月26日の定例会見では「安全を確認し、きっちりとした形で進めるべきだ。日程的にお構いなしに決めてしまうという、これまあでの都の対応はいかがなものか」と延期に含みを持たせていた。
小池百合子知事、築地市場の移転延期固める 近く会見で表明- 産経ニュース
「狭すぎ!」 豊洲市場の設計の悪さ発覚、マグロが切れない!?
問題は土壌汚染だけではない。豊洲新市場の設計の悪さも延期の原因の一つとして取り上げられている。
マグロなどの「大物」を扱う仲卸業者「洸峰(こうほう)」の渡部峰夫社長がこう語る。その狭さが一目で分かる投稿がある。
「豊洲の店舗では、狭くて包丁が引けないんですよ。マグロの包丁は刃渡り70~80センチ、長さ1メートルほどもあるが、店の横幅は1.5メートルで、壁もあるから実際はもっと狭い。包丁を引くと、背後の壁に肘が当たる。これではケガ人が出ます。築地が狭いから広いところに移転するという話だったのに、こんなバカな話がありますか」
「新店舗は狭すぎ」築地市場移転に仲卸業者が悲痛な叫び - 週刊朝日
【築地移転豊洲欠陥問題】衝撃の写真を公開する。キチガイが設計したとしか思えない。 pic.twitter.com/87fy7ymqo4
— 建築エコノミスト森山 (@mori_arch_econo) 2016年8月10日
大幅な延期か?工期の長期化と膨らみ続ける設計費用
延期の原因は工期の長期化と財政面にもある。
豊洲市場の整備費について当初4300億円と見込んでいたものが資材や人件費の高騰などにより去年3月の段階で5800億円余りに膨らんだことについて、「都民の理解が得られるか疑問だ」として調査することにしています。また、工期が長期化は土壌の調査によるものとされている。それに伴い、費用もさらに膨らむだろうという意見が浮上した。
小池都知事 築地市場の移転延期の方針固める - NHK NEWS WEB
「都のモニタリング終了直後に、豊洲で『地下水管理システム』が稼働し、改めて地下水の調査を行う必要があり、完了するのは年明けになる。正式なモニタリング結果の公表は来年1~2月になるだろう。それを考えれば、延期するとしても、開場時期は約3カ月後の2月が濃厚。」
「延期すれば、既に移転を決めた業者に対する営業補償などが必要になる。3カ月以上延期するならば、それだけ金額も膨らむ。自公が多数を握る議会で予算案を通すのは、そう簡単ではない」(都政事情通)
漂う手詰まり感…小池都知事「豊洲移転延期」躊躇の理由 - 日刊ゲンダイDIGITAL
前大阪市長の橋下徹は築地移転延期を「政治戦略・戦術としては失敗する」とツイート
橋本氏は「改革知事をアピールするためだろうが、政治戦略・戦術としては失敗するだろう。延期したことによる混乱を上回るだけの落としどころになならない」とTwitterに投稿。
まずは移転を進める。市場内業者による会議体を作って建物の使い勝手をよくするための協議を行い修正するところは修正する。これまでの建設を巡る違法・不適切さの原因究明をする。環境問題はほぼクリアー
市場内業者から建物の使い勝手と金銭の要望をどれだけ聞くかが問題であり、移転延期するほどの話ではないという。今回のケースは既存施設から新施設に移す時に必ず出てくる問題の典型だとして、まずは移転すべきだと自論を展開している。