Mr.Children 感謝の想いを届けたデビュー25周年ツアー/レポート
(c)osami yabuta

■Mr.Children/【Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25】ライブレポート
2017.08.06(SUN)at 日産スタジアム
(※画像13点)

今年メジャーデビュー25周年を迎え、例年以上に活発な活動をしているMr.Children。3月から5月までは『Mr.Children Hall Tour 2017 ヒカリノアトリエ』と題した、昨年から続く全国各地を巡るホールツアーを実施。
そして休む間もなく6月からは『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』を敢行。6月10日のナゴヤドームを皮切りに、9月9日の熊本県民総合運動公園陸上競技場まで、全国9カ所15公演に及ぶ大規模なツアーを行った。ここではその中から後半のスタジアム公演のスタートとなった、神奈川・日産スタジアム2日目の模様をレポートする。

日産スタジアムはその芝を守るという観点からも、年間でこういったライブに使用できる回数が限られている。しかしそれ以上にこの約7万人を収容できるスタジアムをいっぱいにできるか、という意味でも開催が難しい会場でもある。その場所が最上段の客席まで埋め尽くされると、まだ夏の強い日差しが残る17時、ライブはその幕を開けた。

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ステージの背面はもちろん、その左右に渡って広がる超大型ビジョンに映像が流れ、バンドメンバーが次々にステージに集まると、最後にMr.Childrenの4人がその姿を現す。JEN(Dr)のドラムから始まったのは「CENTER OF UNIVERSE」。<今僕を取り巻いてる 世界はこれでいて素晴らしい>と、この瞬間を待ちわびていた観客に最初の言葉をかける桜井(Vo)。「行くぞ、横浜!」と叫び、間奏になると、アリーナ席の中央を通る花道を走りぬけ、メインステージからセンターステージへ。沸き起こる観客の大きな手拍子に合わせて、笑顔を見せながら歌う。

「さあ始まったぞ! ぶっ飛ばして行くぞ、ついてきて!」(桜井)

2曲目「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」の時点で、すでに会場の一体感はできあがっていた。
観客は手拍子はもちろんコーラスも担当し、この日、この場所でしか聴くことのできない歌を作り出す。田原(Gt)、中川(Ba)もステージの左右に伸びる花道を歩いて観客の側まで行って笑顔を見せ、さらに花火とともに赤青白のテープが飛び出す演出もあり、まだ序盤の序盤なのにクライマックスを迎えたかのよう。その流れで200万枚を超える売上を記録した大ヒット曲「名もなき詩」へ。桜井が「横浜、聴かせて!」と呼びかけると、<あるがまま~>と7万人の大合唱が起こる。ステージに向かって差し出される観客の手の動きが、押し寄せる波のように会場を覆い、こんな光景をいとも簡単に作り出してしまうMr.Childrenの歌の力に身震いしてしまう。

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「“Thanksgiving 25”というツアータイトルで、25周年を記念したすごい何かを期待していると思いますけど、その期待のはるか上を行くライブになる」と、桜井は宣言。「出し惜しみも一切しない」とも言い、その後、この言葉に相違ないライブが繰り広げられる。そしてそんな中でも「この曲だけは絶対に今日、やらなきゃいけない、みんなに聴いてもらいたい」と話すと、「僕らの宝物でもある皆さんに次の曲を贈ります」と「GIFT」を奏でる。<君が喜んだ姿を イメージしながら>――そんな景色を目の前に、その歌に耳を傾けるひとり一人に語りかけるような桜井の歌声が、そこに込めた想いとともに観客へと届いていく。歌い終えると桜井は深く、長く頭を下げ、「僕らに、Mr.Childrenに向けられている、この大きく温かな拍手を、声を、笑顔を見落とさないように」と言って「Sign」を、ステージをゆっくりと歩きながら、観客の笑顔をその目に焼き付けるように歌っていた。

「まだ始まって5曲しかやってないですけど、せっかちな僕らはもっとみんなの内側に、深いところまで入り込んで、近付きたいんです」(桜井)

そう言うと、サポートメンバーも含めてセンターステージに移動。25周年を目前にして、やり残したことはないか?という想いで行ったという昨年からのホールツアーに触れ、そのときのバンドメンバーで作った「ヒカリノアトリエ」を披露する。
ポケットやカバンに入れて持ち歩ける、手のひらサイズの希望の歌にしたかったというこの曲を、沸き起こった手拍子に乗せて歌う。続いて、サポートメンバーをメインステージに戻すと、Mr.Childrenの4人だけがその場に残って「君がいた夏」を演奏する。「僕らのデビュー曲です」(桜井)というように、この4人から、この曲から始まったことが、今、こうやって7万人の心を一つにし、その歌を聴く何千、何万、何億という人の心を動かしている。ただ、会場を吹き抜ける風を気持ちよさそうに受けながら音を奏でる4人の姿は、そんなことは関係なく、あの頃も今もただ楽しいから音を奏でているように見えた。

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ドラマティックにアレンジされたピアノのイントロから始まった「innocent world」。桜井だけがセンターステージに残り、歌とピアノだけで<いつの日も この胸に~>と、観客の頭上を抜け、会場の外までも届くような伸びやかな歌声を響かせる。その声をさらに遠くへ押し出すようにバンドの演奏が重なり、そこへ観客のリズミカルな手拍子が重なる。もちろんこの曲を歌わない人などここにはいない。桜井も「任せたよ」と、7万人のコーラス隊にすでに絶大の信頼を置いている。「最高! 最高!」とほめると、続いてそのイントロが鳴った瞬間に、観客から「お~」という声が上がった「Tomorrow never knows」へ。ここでは単なる手拍子ではなく、リズムに合わせた手拍子を刻み、リズム隊の役割も果たす観客たち。Mr.Childrenのライブは観客がいてこそ、完成するんだと改めて実感する。


「まだまだ長いからどうぞ座って」と観客に促す桜井。すると「少しまわりくどくてややこしい話をしますよ」前置きをし、次の曲はもし自分が作詞作曲した曲が、自分と違う人格を持っていたとして、その曲がMr.Childrenに向けて歌いたい歌、と「Simple」を紹介する。まわりくどく説明した曲名が「Simple」というのもクスっと笑えるが、それをアコギと歌が際立つ“シンプル”なアレンジで歌う。笑っていた観客たちも“Mr.Childrenにかけたい言葉”である歌詞を、一つひとつ受け取るように真剣に聴き入り、その歌が終わると、“曲の代理人”である桜井に大きな拍手を送った。

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ここで海外の通販番組風にリーゼントのかつらを売る映像や、海外アニメ風に“思春期”を語るキッズたちの映像が流れる。そして、最後に牛の映像と泣き声とともに、そのリーゼントのかつらをかぶったJENが登場。自らが作曲、歌唱をつとめる、幻の名曲(!?)「思春期の夏~君との恋が今も牧場に~」を歌い出す。JENのその振り切れた歌いっぷりにファンも、ステージ上のメンバーも笑ってしまうが、意外にも(笑)大合唱が起こり、JENは「キュンキュンしてるか~い?」と何度も観客に向かって叫んでいた。ライブ前半は、これでもかというヒットナンバーのオンパレードに“Thanksgiving”を感じていたが、この古参ファンの心をくすぐる選曲にも“Thanksgiving”を感じずにはいられなかった(笑)。

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そして、ここを折り返し地点に、さらにライブのボルテージが加速する。「365日」、現在、ドラマ主題歌に起用され、再びヒットを記録している「HANABI」と、壮大なイメージが広がる楽曲が、徐々に夕闇に包まれ始めた会場の雰囲気と相まって、忘れられない景色を作り出す。

「僕らにとっては大事な曲」(桜井)。
ここまでシングル曲を中心にした選曲だったが、ここで演奏されたのは「1999年、夏、沖縄」。シングル「NOT FOUND」のカップリングとして2000年に発表された楽曲で、桜井が歌う前に「初めての(ライブに来た)人は『何だろう?』って思うかもしれない」と話したが、それでも今、このタイミングでやりたかった“大事な曲”だ。さらっと聞いてしまうと、実際に起こった出来事をただとつとつとしゃべるように歌っているようにも聴こえるが、その真理は深い。桜井はこの楽曲の中で、<99年夏の沖縄で>という歌詞を、「2017年8月6日、日産スタジアム」と変えて、現在の心境を語った。

デビュー10周年を迎えたときは、多くのリスナーを既に得ながらも、その人たちはすぐに消えてしまうと、信じることができていなかったこと。ゆえに当時は「ただ1日1日を必死に生きるだけ」と答えていたこと。だが25周年を迎えた今、目の前にまだこんなにたくさんの人がいてくれて、そのことに大きな感謝をしていること。そして一方で、今度は周りで同世代の友人や知人が病気になったり、亡くなったりして、いつまで歌い続けられるのだろう?という不安を抱えるようになったこと。だからこそ、10周年のときとは違った想いで「1日1日を、1曲1曲を、1フレーズ、1フレーズを大事に大事にしたい」と。

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いつの間にか会場は完全な暗闇となり、照明がライブ全体に彩りを与える時間帯に。「足音 ~Be Strong」、桜井がステージを走り回りながら歌った「ランニングハイ」とさらにギアを上げ、「ニシエヒガシエ」へとなだれ込む。レーザーの光が会場の空気を切り裂くように縦横無尽に放たれ、ステージからは火花が上がり、桜井は己の本能が赴くままといったように叫びまくる。
観客のテンションも明らかにハイになっているのが見て取れ、前半はコーラスや手拍子で一体感を感じていたが、もはや役割などなくてもその気持ちが一体となっているようだ。続く、「ポケット カスタネット」では、センターステージに立った桜井の裏側から照明が当たることで、そのシルエットが浮かびあがり、神々しく見えてくる。空に手を伸ばして何かを掴もうとする動きに、なぜか胸が締め付けられるような思いがし、曲のテンポが変わる後半には身も心も曲に巻き込まれていくような感覚さえした。

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「この曲でみんなを今日はこてんぱんにやっつけたい」(桜井)と言って演奏されたのは、「今、一番聴いてもらいたい曲。一番新しい曲」という、このツアー中に発表された新曲「himawari」。始まりは穏やかに、でも徐々にその想いの昂ぶりを表すように、力強さを増して行くこの曲を、桜井はこれまで披露された楽曲とは違う表情で――笑顔ではなく、何かに挑むような眼差しで歌う。これまで、何度もMr.Childrenのツアーを観てきたけれども、ここまで全面的に来てくれる人のことだけを思って考えられたであろうセットリストは初めてのような印象がある。いつも必ず、“最新のMr.Children”、今の自分たちのモードを強く打ち出すブロックがあり、誰でも知っている曲がどんなに増えてきても、その姿勢は貫かれていたように思う。ただ今回は、ここまでのMCでも伝えられてきた“感謝”の思いが何よりも大きかったから=それが最新の自分たちのモードでもあるから、聴いてくれる人の思い出に寄り添うような、いわゆるヒット曲満載の選曲になったのではないか、と。けれどもやっぱりみんなに見せたい今、がある。それがこの「himawari」に集約されていたのではないか。すべては印象に過ぎないのだけれど、とにかくこの曲から伝わってきたエネルギーは他のどの曲よりも大きかった。


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いよいよライブも終盤へ。観客がその掌をステージに向かって上げた「掌」、まるで会場が巨大クラブになったような様相を呈した「Dance Dance Dance」、煌びやかな照明も伴ってさらに高揚感を書き立てられた「fanfare」と、怒涛のクライマックス。ラストは虹色の光に会場全体が照らされ、観客全員が手拍子をしながら大声で歌い叫んだ「エソラ」で締めくくられた。

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迎えたアンコール。「overture ~蘇生」という、なんだかここからライブの第二章が始まりそうな雰囲気もありつつ、映画のエンドロールのようにこの数時間をダイジェストで思い返すような感覚もありながら、<何度でも何度でも>と、この日、何度目かわからない、会場一体となっての大合唱を聴く。

「すっごい幸せ」

そう言葉として発した桜井にも、ステージ上のメンバーにも、そしてもちろん観客たちにも、その言葉を表情で表すとこんな顔になるだろうという笑顔が溢れていた。

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そして、「最後の最後、この曲だけは過去じゃなくて、僕らにとっても、みんなにとっても、ただただ未来だけを見つめて」(桜井)と、「終わりなき旅」が演奏された。イントロから「わーーー」と声を上げる桜井。ここまで大型ビジョンや色とりどりの照明で彩られていたステージが、この曲の前半では白の明かりのみとなり、視覚的な要素が少ないからこそ、その音から伝わってくるものが大きくなっていく。さらに後半、一気にステージが明るくなり、4人の姿がビジョンに大きく映しだされることで、Mr.Childrenが、今ここに居ることを強く感じ、自分もまたここに居られることの幸せを感じた。歌い終えると、再び桜井は残っている声をすべて吐き出すかのように「わーーー」と叫び声をあげ、4人はステージ中央に集まってアウトロを奏でる。音に取りつかれたように一心不乱に演奏する4人の姿に、これからもMr.Childrenが“終わりなき旅”を続けて行くと確信したのは私だけではないだろう。

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25周年を“感謝”という想いで駆け抜けたMr.Children。Mr.Childrenはこの先も続いて行くし、その歌と生きるリスナーも、これからもずっと一緒に歩み続けて行くと信じられたライブだった。
(取材・文/瀧本幸恵)

≪セットリスト≫
1. CENTER OF UNIVERSE
2. シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~
3. 名もなき詩
4. GIFT
5. Sign
6. ヒカリノアトリエ
7. 君がいた夏
8. innocent world
9. Tomorrow never knows
10. Simple
11.思春期の夏~君との恋が今も牧場に~
12. 365日
13. HANABI
14. 1999年、夏、沖縄
15. 足音 ~Be Strong
16. ランニングハイ
17. ニシエヒガシエ
18. ポケット カスタネット
19. himawari
20. 掌
21. Dance Dance Dance
22. fanfare
23. エソラ
<ENCORE>
1. overture~蘇生
2. 終わりなき旅

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